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1.ヒーロー(予定)と言われました…だが断る!

 ◆アエトース公爵邸 リオン(15歳)視点1


『あ~やっと話せるぜ~』


 従魔契約の術が終わったあと、目の前で白黒ブチ模様の魔犬が後ろ足で喉元を掻きながらそう言った。


 いや、正確には喋ったわけでは無い。頭の中に聞こえた感じだ。

 その証拠に、周りの使用人達はいっさい驚いたりしていないのだ。


「えっと……カゲ丸?」

『あ、変に話しかけないほうがいいぜ!あぶないヤツ認定されるからな。頭の中で語りかけてくれれば術が作用してオレに聞こえるからさ』

 なるほど……あぶないヤツ認定は避けたい。


『オレずっとリオンに言わなきゃいけない事があってさ。お前ってば実はこの世界の【ヒーロー(主人公)】なんだよね~』

 ……人はみな自分の物語の主人公である…ってやつじゃなくて??


 2歳の時から一緒に育った魔犬のカゲ丸は、母エステルの実家のパルセノス家で飼っているリコスとカゲローという魔犬夫婦から産まれた犬で、5匹生まれたうちの1匹を貰ってきたのだ。

 パルセノス家のリカルド伯父上とミリア伯母上は【異世界転生者】だそうで、遊びに行く度に二人から不思議な話をたくさん聞かされて、多少の免疫はあるつもりだったんだけど……まさかの【犬が転生者】案件だった。さすがのリカルド伯父上も驚くだろうな…。


 俺の名はリオン。アエトース公爵家の嫡男で、もうすぐ聖バルゴ学園に入学する予定の15歳だ。

 父はレオンハルト・アエトース公爵。母はエステル公爵夫人で元パルセノス侯爵令嬢だった。


 で、その母の兄が【自称モブ兄】ことリカルド・パルセノス侯爵。鉄道の発案者であり、寝物語に聞かされたお話の…モブどころか【世界を救った聖人】なんだそうだ。

 でもこの件は、ステファン陛下曰く【ひ・み・つ】らしいんだけどね。


『リカルドとミリアはオレと同じ世界からの転生者で、二人は乙女ゲームだと思ってたみたいだけど、実はココはif小説のスピンオフ作品の中なんだよね~』

 アハハハと、頭の中で笑い声が響く。ずっと可愛い弟分だと思ってたのに…ちょっと俺より年上くさいのだが。


『で、その小説の【ヒーロー(主人公)】はリオン君なわけ!これから忙しくなるよ~。精霊を助けたりとか、古代竜と戦ったりとか、あと』


『まって!まって!俺そんなのいらない!出来れば波風立てず平穏に暮らしたいんだからなっ!断固拒否だ‼』


 頭の中で『え~~~~』と不服そうな声が聞こえたが、無視だ!無視!





 ◆アエトース公爵邸 カゲ丸視点1


 オレの名はカゲ丸。一応魔犬の一種だが、異世界転生者で前世の記憶を持っている。


 前世では出版関係の仕事に携わっていて、乙女ゲーム【聖女の祈り天まで届け】略して【セイテン】のif小説の多岐にわたるスピンオフ作品を担当していた。


 まさか自分がその世界に転生するとは思いもしなかったし、転生先がまさかの仔犬!?

 中身32歳で仔犬をやる羽目になるとは……これぞまさに【セイテンの霹靂】ってヤツだったぜ。ハハ…


 リオン・アエトースは【セイテン】の悪役令嬢が主役になった【エステルルート】をモチーフにしたif小説の完結後の世界を書いたスピンオフ作品【セイテン外伝 『精霊と天命の神子』】のヒーロー役、そう主人公なのだ。


 母エステルに似て黒髪でこげ茶色の瞳。それ以外の風貌は父レオンハルトに似て、ヒーロー役に申し分ないイケメンだ。

 魔法属性は父由来の【水・氷】と母由来の【風・闇】と持つ。2属性持ちが羨望される世界で、4属性持ちはチートだ。さすがはヒーローといったところだな。


 故に女性にもモテモテなのだが、パルセノス家由来の『ニブさ』で気付いていないから女の影もないし、巷では仲の良いアレクセイ王太子とのBLな噂が囁かれている。どこの世界でも腐女子は存在するのだな……勉強になったぜ。


 とはいえ、高位貴族なので婚約者候補が居ない訳ではない。パルセノス家の長女で2歳年下のミスティだ。

 従妹にあたるのだが、お互い仲は良いし大好きっぽい……ただそれが恋愛的なモノなのか、兄妹愛的なモノなのか判断つかなくて婚約には至っていない。


 そして、実は小説の中の【ヒーロー】には【ヒロイン】がいる。このヒロインはミスティではなく別の人物だ。

 その人物については後回しにするが、ミスティはヒロインに嫉妬して虐めを行いリオンに断罪されるのだ。

 


 だが……リオンの気質は、良く言えば思慮深い、悪く言えば事なかれ主義。そんな男が果たして血縁者を【断罪】なんて出来るのだろうか?とも思う。

 そもそも、小説のリオンには【闇属性】は無かった。【闇】と【光】は気質にも多少影響がでてくる。


 『ガンガンいこうぜ!』タイプの筈だったのに、どちらかと言うと『いのちだいじに』タイプに成長してしまった……これ絶対属性が絡んでいると思うんだよなぁ。


 ストーリー展開に影響が出てきそうで波乱の幕開けだけど、何とか頑張って立派なヒーローに育て上げないとだ!さぁ、忙しくなるぞ~。

 





 [おまけ] ~おじ様ず~ (リカルド伯父上に報連相)


 リカルド「ほほう!中身32歳…って事は、君がうちで産まれた時すでに当時24の俺より年上だったか~」


 カゲ丸 「ワンワン!『いや、あんた3歳時で+20歳だったからね!そっちも足して!』」


 リカルド「ハハ…ワンワン何言ってるかさっぱりだなぁ。リオン」


 リオン 「転生者の年齢感覚のほうが俺にはさっぱり……ですよ。伯父上」


   足せば今現在アラカン・アラフィフ世代だったりする。

   リカルド(20+37) カゲ丸(32+13)

 




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