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猫獣人の元聖女、辺境で孤児を鍛えます。  作者: べちてん


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第35話 レネット、魔力たくさん

「まだ眠くならないニャか?」

「はい。全然です」

「んにゃぁ……、これはウチより魔力総量が多いかもニャね」


 疲れた、といって家に引っ込んでしまったフィルマに対し、レネットは依然として魔法を発動し続けていた。


 すでに時刻は午後3時を回っており、目を覚ましたエルビアと共に、フィルマとミレアさんは宅内で三時のおやつをたしなんでいる。


 魔力総量がかなりあるということがわかっているレネットは、すでに魔法の発動をやめても今後しばらくの教育に影響が出ることはない。そのためテストを終了しみんなでおやつを食べようと提案したが、最後までやりたいとの回答であった。


「はい、口開けて」

「あ~」


 ミレアさんに2人分のスコーンをもらったリーリャは、器用にフォークで一口大に切り分けると、少しずつレネットの口元へとそれを運ぶ。


 おいしいです、と言いながらも途切れることなく現れ続けるその炎は、慣れの影響もあってかさらに威力を増しているように見える。


「ウチ夕方には帰るニャから、もし後2時間くらい経っても魔力が切れなかったら、さすがにおしまいにしてほしいニャ」

「わかりました。もうすでに十分多いっていうのはわかってるんですよね?」

「そうニャ。それだけ多いなら、ウチがするような教育程度で魔力が切れることはほとんどないと思うニャ。ただ、それじゃあ訓練にならないから、ちょっと意地悪して今度無理矢理魔力を使い切らせてみるニャけど」

「……お手柔らかにお願いしますね」


 魔力を増やす方法、まあいろいろと研究されているわけだけれど、その中で最も効果が高いとされているのが成長期の間に何度も魔力を使い果たすこと。使い果たした魔力は、その魔力が回復すると同時に本人の魔力限界を少しずつ広げていくということがわかっている。


 いくら魔力量が多いとは言え、成長期の間に無理矢理にでも魔力を使い果たさせなければならない。でないと、魔力を使い果たした際のあの特有の脱力に慣れず、戦場で命が危うくなる、ということもある。


 魔力切れの時に感じるあの特有の立ちくらみと脱力感は、もし戦場で初めて体験するときに、意識を保っていられるかどうかは怪しい。


 リーリャが直接教えられる間に、その感覚に慣れておいてほしい。それがリーリャの意見だ。ただ、別にそれは今でなくてもいいと思っている。


「それにしても、天気がいいニャね~」

「そうですね。王都に比べてこっちはどうですか?」

「えっとね、すこし涼しいかニャあ……、まだこっちに来てから時間が経ってないからわからニャいけど、暑苦しさがないニャね」

「海から離れてますし、からっとしてますか?」

「からっと、そうニャそれニャ。運動しても、潮風でベタベタ、っていうことはないニャね」


 手を後ろについて重心を後ろに傾ける。空にわずかに浮かぶ雲は緩やかに流れていて、耳を澄ませば鳥のさえずりが聞こえてきて。


 ついた手を動かすと、きれいな芝生の感覚が手に伝わって妙に心地いい気分になる。


「のどかでいいところニャね、本当に」

「はい。私は王都に行ったことがないのでわかりませんが、騒がしいところより、こういうところの方が好きです」







「結局使い果たせなかったニャね」

「すみません……」

「謝ることじゃないニャ。いいことだからね。また今度使い果たす方法を持ってくるから、そのときに魔力切れを体験して見るニャ」


 あれから数時間魔法を発動し続けたレネットは、結局魔力切れを起こすことはなく、平然とその炎を維持して見せた。


 この年齢でこの魔力量だとすれば、かなり才能があると言えるだろう。それに対してエルビアはお世辞にも魔力量が多いとは言えなかった。これでは修道院に入ったところで立派な聖女見習いになれるかすらもわからないだろう。


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