第33話 魔力切れについて
2人が待つ庭へ向かうため階段を下りる。一段一段足を進めるリーリャの脳内では、エルビアの今後の教育方針が固まりつつあった。そして、それがリーリャでは教えることができないものであるということも、理解している。
「帰ったらフィリーに相談ニャね……」
リーリャの心は晴れやかだ。エルビアはきっといい秘書になるだろう。そんな予感がしている。
「お待たせニャ」
「エルは大丈夫なのか?!」
「大丈夫ニャ」
玄関から出ると、フィルマが焦ったようにリーリャの元へ走ってきた。魔力切れ、何も知らない人からすると、突然具合が悪くなって倒れてしまった。そう見えるかもしれない。
事実と言えば事実だが、そんな病的なものではない。まず魔力が底を尽きること、それ自体は全く問題がない。ただ魔法が使えなくなるだけ。
普通に考えればわかることだ。魔力が全くない人は、常に気を失っているのだろうか。それは違うだろう。今こうしてフィルマが元気に動いているのが証拠だ。
ではなぜ気を失うか。それは、魔力を持っている人が、無意識的にその魔力を利用して身体活動をサポートしているからだ。
身体強化というようなたいそうなものではない。血液に乗せられた魔力は緩やかに体内を循環して、細胞の活性をあげたり、体の調子を整えたりする。だからこそ、魔力が多い人は身体の劣化が遅く、若く見えたり、いくら動いても疲れにくかったりする。
そんな体をサポートしていた魔力が消えると、一時的に身体機能が弱まって、睡眠のような状態になる。だから、それ自体が体に悪影響というわけではないのだ。
……ということを説明しても、子供達は理解してくれないだろう。
「なれると魔力を使い果たしてもかなり眠いなぁ、程度でとどめられるようになるニャ。ニャから、夜寝付けないときに思いっきり魔力を放出するとよく眠れるニャ~」
「それはすごいな! でも、俺は夜はいつも快眠だ」
「いいことニャ。ウチはよくそれで魔力を出し過ぎだって、教会の人に怒られてたニャ」
ポリポリと頭をかきながら苦笑いを浮かべるリーリャ。その様子が面白かったのか、リーリャの話が面白かったのか、2人は先ほどまでの心配そうな表情とは打って変わって、面白そうに笑顔を見せている。
「レネットも、少し眠くなってきたら教えてニャ」
「わかりました。でも、まだ全然大丈夫そうです」
「疲れもないかニャ?」
「はい。全く」
話している最中でも安定して炎を出し続けていたレネット。最初に比べその火力は増しているように思える。おそらく慣れてきたのだろう。
全く疲れがない。魔法の威力が強くなっている。これはかなり才能があるかもしれない。
「レネット、レネットは魔術師に興味はないかニャ?」
「あります!」
「うんうん、じゃあレネットは魔術師を目指してみるニャ」
レネットはその言葉を聞くと、うれしそうに目を輝かせ、なんとなくだが魔法の威力が強くなったような気がした。
「なら俺は騎士を目指すぞ。レネットが後衛、俺が前衛だ」
「いいねっ、一緒に頑張ろう!」
「じゃあ戦いの連携について、お勉強しないといけないニャね」
「はいっ」
そううれしそうに返事をするレネットに対して、フィルマは嫌そうな表情を浮かべていた。
「よしフィルマ、ちょっと勝負をして見るニャ」
「勝負っ!」
そう鞘から剣を抜き取ったリーリャを見て、フィルマはあっという間に機嫌を回復させたのだった。




