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無敵の三姫  作者: 猫化猫
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19.持久戦

しばらく平穏な日々が過ぎ、勲章騒動から約一ヶ月がたった頃。

久々に実習棟に集められ、チームごとに固まるように指示をされる。前回はここで試験を行ったが、どうやら今回は試験ではないらしい。


「気を張ってるとこ悪いけど、そんなに緊張しなくてもいいわよ。今回は順位はつかないし、やる事も明白。ただこの向こうでただ生き残るだけ。ほら、難しくないでしょう?」


先生は簡単に言ったが、僕たちからしたら、何が起こるかもどれだけ耐えればいいかも、何も分からない。そのうえ追加説明もなく、質問も受け付けず、いってらっしゃい。と扉へ突き出される。


仕方なく扉をくぐると、1ヶ月前に見た景色がそのまま、寸分の狂いなく目の前に広がっていた。前回と違うのは、あの1人きりにされる部屋は通らず、いきなりチームごとに分けられたことと、ここにマイがいる事。

…そして、とてつもない数の魔物の気配がすることだ。


「うわ、えぇ~?空気の淀み方が尋常じゃ無いね~。」

「ああ。とんでもない数の魔物がいるからな。」

「ん。360度全方位にいる。…数は、分からない。」


各々に前回との違いを共有しながら慎重に歩を進める。シロナの見解では、あの魔物の大群が動き出したらスタート。魔物が撤退していくか、全て殲滅すれば終了。終了時まで生きていられたら成功だろうと言う推測だ。途中、壊れ方がマシな建物をいくつか確認しておく。念のための隠れ家、避難場所のイメージだ。


そして、いよいよその時がくる。


「…来るぞ。」


魔物の軍勢がこちらに向かってくる気配を感じ、警告をする。まだ動いていない魔物もいるが、それでもかなりの数がこちらへ一直線に向かって来ているようだ。剣を抜き、いつでも斬りかかれるように構える。マイも杖を持ち、魔法の準備を。シロナは弓を取り出して構えている。今更だが、どうやら前衛は自分だけらしい。臨機応変に動かないとダメだろうな。

などど考えていたその時——


「ユウリ、後ろっ」


シュッ

警告を聞き、反射的に背後に振り向きながら剣を振ると、不意打ちを狙っていたのだろう「それ」にあたる。そのまま倒し切ると、それを皮切りに、他の魔物たちが堰を切ったように雪崩れ込んできた。シロナに感謝をする暇もなく、どんどんと群がってくる奴等を倒していく。シロナとマイも順調に捌いてはいるが、どれだけ倒しても数が減っている気がしない。むしろ増えているようにさえ感じる。


「ねぇ!これさ!いつまで続くと思う?!」

「知らん!」

「多分、6限目終わりまで。」

「え、無理無理無理!これ多分無限増殖のやつ!ずっとフルでやってたらいつか死ぬって!」


妙に切った感触が薄いとは思ったが、早くも全ての敵を倒し切る作戦は無かったことになった。

どうやって無限増殖だと分かったのかとか、どうして6限目までと思ったのかとか。言いたいことは山ほどあったが、何せ2人とも後衛タイプなため、360度どこからでも攻めてくる攻撃を、後ろに行かせないように立ち回るのが大変で、上手く考えがまとまらない。1限から6限までなら5、6時間耐えればいいのか?僕は問題ないが、2人が持たないみたいだ。


「ならどうする?」

「…ローテーションにする。1人休憩、2人戦闘。1時間ごとに交代。」


戦いの合間に質問し、ほんの少しの間の後、シロナが案を出す。悪く無いなと思い、そのまま採用することにした。


「それでいこう。最初は誰からだ?」

「なら私でいい?ついでにセーフティの環境整備もしてくるから。」

「「了解」」


そのまま合図と共にマイが1番近くのセーフティに向かって駆け抜けて行く。そうして、2人で周囲の獲物を危なげなく蹴散らし続ける。守る対象が2人から1人に減ってかなりやりやすくなった。

その後、大体1時間後にマイが空から帰ってくる。陸路より空路の方が敵が少なくて楽なんだろう。


「南側のセーフティに魔除けの結界、最高レベルで張ってきたから。そこに着けば休憩できるよ!」

「今から全員でそこに立て籠ることはできない?」


マイが帰ってきたと同時に報告してきた内容に、シロナが消耗を抑えたいと言い、マイに籠城できないかと質問するが、首を横に振られる。


「ごめんそれは無理。結界系って人数増えると危険度、というか脆さ?が倍々に上がっていくんだよね。陣なら別だけど、あれは時間がかかるし。」


つまり予定通り、ここで迎え撃ちながら交代で休憩を入れるしかないようだ。次はシロナに休憩を取らせ、その次は僕が休憩を取る。途中、マイとシロナだけにしたときに少々危ない場面があったらしいが、僕が合流したときには、魔物と一定の距離を保ち、安定して倒せているように見えた。

休憩中に何をするかというと、必ずポーションを飲んでおく。飲むポーションは基本的には2つ。“体力回復ポーション”と“魔力回復ポーション”。ポーションは飲んでからじわじわと体力や魔力を回復させるもので、別名:回復促進薬とも言われている。なのでシロナはそれぞれの休憩時間を1時間と指定したのだろう。ただ、僕は魔法を使わないことの方が多いので、ほとんどの場合は体力の方だけ飲んでいる。


そうやって、ローテーションも2周目に入り、次は僕の番という時。

北側にとんでもなく大きな『亀の魔物』の姿が確認できた。実は、1周目の僕の休憩の時点で、何か大物がゆっくりと近づいていることに気付いてはいたが、あまりにもスローペースで進んでいたので、一度無視することにしていたやつだ。


その亀が、こちらに向かって大きく口を開いて、何かのエネルギーを溜めている。

それを見て、直感的にあれに当たるのはマズイと感じた。咄嗟に、2人に逃げろと指示を出す。そのまま自分も全力で横に走った。行手を阻む奴らは全て切り伏せて、1秒でも早く、その場から逃げ出す。


ゴッ!


何か鈍い音がして思わず後ろを振り返ると、目の前がホワイトアウトし、次の瞬間、大爆発が起こる。周囲には轟音と爆風が巻き起こり、目を閉じ耳を塞ぎ、飛ばされないように踏ん張る。


数秒後、爆風が収まり目を開けると、先ほどまでいた場所は跡形もなく消し飛んでいた。あと数秒、逃げ出すのが遅ければ、僕らも同様に消し炭となっていただろう。

危なかった。と息を吐く間も無く、次々と他の魔物たちが襲いかかってくる。さらに、亀の方も既に動き出しているため、次、いつ攻撃が来てもおかしくない。これのどこが簡単なんだ、と心の中で担任に悪態をつきながら、雑魚を捌きつつ、亀の攻撃を避ける。


「いた!ユウリ!()()()!!」


2回ほど避けた時に、亀の攻撃でバラバラになっていたマイと偶然合流する。マイは空から声をかけて来ているため、お互いに声を張り上げ、会話を試みる。


「シロナから指示!いっそのこと亀倒すって!今から私が速度強化かけるから、亀まで走って!」

「分かった!シロナはどこにいる!」

「亀の近くの建物の上!向こうで合図がきたら総攻撃!」

「了解!」


会話が終わるとマイの強化魔法が自分にかかり、全速力で走り出す。

幸いにも先ほど亀の攻撃が来たばかりで、そいつの足元まで無事に辿り着くことができた。着いてから周囲をみてもマイは近くにいなかったので、合図が来るまで近場の建物の影に身を潜める。時々襲ってくる敵を念のため、静かに処理しながら今か今かと合図を待つ。


バシュッ―――ドン!


来た!シロナからの合図を確認し、走り出す。

ここからちょうど東の方向から、目にも止まらぬスピードで光の矢が飛び、亀の前足を貫いた。亀は叫び声こそ出さないが、バタバタと暴れ倒しているため、かなり効いているようだ。僕が亀の元に着くと同時に、ピタッと亀の動きが止まる。

それを確認した瞬間、剣を構え直して自身の“能力”を発動させる。発動と同時に、地面をこれでもかと強く蹴り、自身の出せる最大限の力を持って斬り上げる。


下から上へ。

無防備に晒された首を全力で断つ。


先ほどの大爆発に引けを取らないほどの爆音が鳴り、踏み込みに使った地面は抉れている。斬撃は、自己ベストを更新する勢いの大きさと、スピードを持ち、飛んでいき勢い余って、向こう数十メートル先の地面まで斬ってしまった。おそらくは、いつの間にかマイが他の強化魔法をかけてくれていたのだろう。あまりの強さに、斬撃を放った僕自身が一番驚いている。

地面に降り、ふう、と残心し、剣をしまい……かけて、まだまだ敵が残っていることを思い出して慌てて周囲警戒を再開する。


それから3人で合流し、危なげなく敵を倒し続ける。


――最初の魔物と接敵してからおよそ6時間後。

長い戦いは魔物たちの撤退により、ようやく終わりを迎えた。

いつもありがとうございます。



3人のメイン武器はそれぞれ

剣(両刃)、スティック状の杖、魔法弓

でございます。

前衛1後衛2のユウリの負担が大変な事になる編成ですね。…だからマイは別チームだったんだけどなぁ。

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