第34話 英雄達の祝勝会
アイリとの戦いから3日、ルクスたちは国王に呼ばれ、魔王軍に勝った祝勝会に参加していた。
アイリはまだ記憶を失ったままだが、国王の城で診療を受けているが、一向に戻る気配がないそうだ。
その言葉に表面上は心配と落胆をしていたが、内心はヒヤヒヤしていた。deleteの能力は魔導書に書かれていただけなので、本当に効果があるのか、あったとして、本当にそれが続くのか分からないからだ。
ルクス(まさか、これはこれで大変だな)
アカギ(でも、1ヶ月もすれば流石に安心できるかな?)
そう思いながら今日まで生活していた。
因みに、無視されていた聖女と賢者は王国の魔道士に頼んで解除してもらい、なぜこうなったかは魔力が完全に戻っておらず、ちょっとした拍子で自身にかけてしまったと誤魔化したらしい
。
(流石に魔法使いにかけられたなんて言ってしまえば、魔法使いもそうだが、自分たちも巻き込まれてしまうので、そのためでもある。)
そして今回、魔王討伐に行った者たちが全員揃い、また、魔王軍と戦った英雄たちの者も療養も大分済んだので、この機会を狙って祝勝会が開かれた。
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~祝勝会 会場~
そこには、後方、中央、前線で戦った者たちが揃っていた。
中には、此処に相応しくない者たちもいるが、その者たちも因果応報なのか悲惨な目に遭っている。
婚約者より金を選んだ女
「……ねえ?そこの女、誰よ?」
金を選んだ女の元婚約者
「は?お前には関係ないだろ?」
共に前線で戦い、恋人になった女
「貴女のような塵がなんでこんなところにいるのかしらねぇ?」
どうやら、魔王軍との戦いで金持ち屑男は死んだため、寄りを戻そうとしているらしい。
まだ自分に未練があると思っているのか?意地汚い女なんか、冷めるに決まってるだろ?
しかも、新しい恋人は元婚約者よりも美人だ。もはやどこも勝ち目はない。
それでも、近寄ろうとしているので、男はそれを弾き飛ばし、新しい恋人は塵を見る目で去って行った。
アカギ「……ほんと……よく……これた……ね」
それを眺めながらケーキを食べるアカギ
ルクス「他の奴らは、絶対に白い目で見られると分かっているから来ていないのに。」
此度の戦いは生き残ってきた者たちが酒のつまみで話しており、特に裏で汚いことをやっていた者達は、それがバレ、ギルド剥奪、クビ、追放など、悲惨な目に遭っている。
此処にいるのは、王国のいや、愛する者達のために命をかけて、そして散っていった仲間の友の想いを背負い、この場に来ている。
ある意味で魔王軍は人間の汚い所を掃除してくれたのかもしれない。
ルクス(それにしても)
兵士「いやー、あの時は本当に死ぬかと思いましたよ」
戦士「ああ、俺達だけじゃ無理だったな」
兵士長「今回の戦いは皆の協力があったからこそ生き残れたんだ」
魔術師「うん、ギルド、冒険者、王国、その垣根を超えたからこそ、僕達は勝てたんだ!」
皆「「「ああ!!」」」
魔道士「さあ!今日はとことん楽しむぜ!」
兵士2「どんちゃん行くぜ!!」
わいわい、ガヤガヤ、アハハ
あちこちで賑わっている、あの時の命をかけた戦いの時と同じで、所属関係なく皆んなで盛り上がっている。
アマギ「ま、辛気臭い雰囲気は嫌だからね、こっちの方がいいさ」
その姿を見ていると、アマギがルクス達に話しかけて来た。
ルクス「師匠!」
アカギ「義姉.....さん.....!」
アマギ「相変わらず、ケーキを食べてるわね」
アマギはルクス達の隣に座り、カップケーキを食べる。
アマギ「あら、美味しい」
思った以上に気に入ったのか、もう一つを手に取る。
ルクス「ああ、流石は王国のスイーツ職人、中々の腕前」
アカギ(でもやっぱり、いつものところの方がいいなぁ)
そう思いながら、ケーキを味わうアカギ、アマギはその姿を微笑ましく見ながらルクスに尋ねる。
アマギ「ねぇ?そういえばリムルが見当たらないけど?何処なの?」
そう言って辺りを見渡す、祝勝会と言うのであれば、主役は勇者であるリムルだろう。
ルクス「ああ、リムルなら祝典があるから国王様と一緒に来るよ」
アマギ「あらあら、勇者って大変ねえ」
そう言いながら、近くにある紅茶を飲む。
ルクス「本当なら、此処にリムルもいるはずなんだけどなぁ」
アカギ「兄さ.....ん.....可....哀想」
2人は残念そうに言う、他の人ならまだしも2人はリムルのお陰で結ばれたと言っても過言ではない、今回の祝勝会もリムルが参加するから参加を決めたわけであって、リムルが参加しないなら2人はリムルを連れて日頃の感謝も込めて何かご馳走する予定だった。
ルクス「まぁ、あいつは勇者だからなぁ、国王様も手放したくないんだろうな」
そう同情しながら、リムルたちが来るまで、暫くの間、雑談しながら待った。
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1時間後
近衛兵「まもなく国王様、そして勇者御一行が来場する。食事をやめ壇場にご注目ください。」
ざわざわ、ようやくかぁ、え?早いでしょ?
ルクス「アカギ、もう食べるのはやめときな。」
アカギ「流石に.....1....時間....も....食べ.....てな.....い!」てし!
ルクス「いたっ。」
アマギ「アカギ、ルクス、来るから静かにね。」
その一言で2人は黙り、壇上を見る。
華やかな音楽と共に国王、そして勇者、剣聖、聖女、賢者の4人が現れた。
国王は前に出て話し始める。
国王「此度は我が王国を救ってくれた英雄達に感謝の意を込めて話させてもらう。」
国王「......いや、堅苦しいのはやめよう。」
そう言うと国王は深呼吸をして再び話し始める。
国王「ありがとう、君達のお陰でこの国は救われた、そして、すまなかった。」
そう言って国王は頭を下げる。
ざわざわ、ザワザワ、嘘だろ?、国王様が?
周りからはありえないと言う言葉が出てくる、それもそのはずだ、国王はいわばこの国の代表、顔なのだ。
そのため国王は威厳を保つために様々なことをしなければならない、口調や仕草、相手との話し方など、数え始めたらキリがない、その中で「国王が頭を下げる」のはしてはいけないことだった。
それは、自分が相手より下と見られることもある為、絶対にやってはいけないものだ、それを国王は皆の前でやった。
国王「今回の戦いで多くの命が失った、皆の中にもいたであろう、愛する者が、大切な友が、最高の強敵が。」
そう言うと皆は胸に手を当てた、それもそうだ、本音を言えば苦しいのだ、あの戦いはそれ程までに熾烈な戦いだった。
目の前で死んだ者もいるだろう。
助けられず見捨てた者もいるだろう。
逆に自分を助けたせいで死んだ者だって......
国王「だからこそ、我々はその者達の意思を継ぎ、未来へと行かなければならない。」
国王「私が言えることではない、それは分かっている、しかし、それでも誰かが一歩踏み出さなければ、我々は散って行った者達に顔向けが出来ない。」
国王の言葉に皆が決意する。
国王「どうかこの先も仲間の意思を背負い生きてほしい、私からは以上だ。」
そう言って国王は後ろに下がり、皆が拍手する。
そして、いよいよ勇者たちの出番である。
ルクス(国王が良すぎる話をするせいで、リムルのプレッシャーがありえないほど高くなったな)
アカギ(……大丈夫かな?にいさん)
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続く




