第十七章:彰がここにいる理由
「ただ、その力に気が付いてないだけなんだ、もしその力を見つけられたなら、誰も適わないな、って一閃が言っていた」
その言葉に冥と瞑は黙り込んでしまい、しばらくは沈黙が続く、その沈黙を破ったのは、
「そんなに評価されてたんだな、俺は・・・・・彰ぁ~そういうことは俺にも言え、そのほうが力が出るんだぞ?」
いきなり話に割り込んできたのは、全身が輝いている水鏡だった。
瞑はとてつもなく不機嫌な顔をして水鏡のことを睨み付けていた。
【力が上がっている!?しかもこの跳ね上がり具合は可笑しい!しかもステータスが全て異常値だと!?】
すると、彰の後ろいた水鏡が瞬きの間に瞑の後ろからコーヒーを差し出した。
「冥さんのお姉さんですよね、ならもてなさない訳にはいきませんから、どうぞ」
「え、あ、ありがとう・・・・・」
【一瞬!?それも大きな『才気』の発動は感じなかった!・・・・一体何なんだよこいつは!?】
次に声が聞こえたのは階段付近の扉の前だった。
「じゃあ、俺は行くとこあるから、用事が済み次第、すぐにいくけど、ゆっくりしていけよ」
そう言って、またも一瞬で消えてしまった。
三人はしばらくその階段を見ていた。
パリッと、ほんの一瞬瞑の肌を静電気らしきものが奔ったが誰もそれには気付かなかった。
「あぁ・・・・・・そうだ彰」
また、今度は服を着替えた状態で瞑の横に堂々と座る水鏡に、三人共さきほどから驚きっぱなしだ。
「一つ頼まれてくれないか?」
「ものによる、俺は自分の信念の元に動いているからな、嫌な事はしない主義なんだ」
「そうか、でもボスの命令は聞いてくれ・・・・・・・新しい隊長を決めてほしい、俺は退くからな」
「俺が水鏡以外の下につくなんて考えられない、お前がやめるなら俺も止めるがいいか?」
「俺は構わないが・・・・・」
「「だめ!!!」」
瞑と冥の声が重なり、水鏡は一瞬で部屋の端に完備してあるはずの長椅子に移動し、彰は仰け反るように驚く。
「私・・・・・・彰がいないといやだよ・・・・・お願い彰、やめないで?」
「そんなことで辞めるなんて馬鹿なこと妹の彼氏にさせると思うかしら?」
「う・・・しかしだな、俺がこの内部組織にいるのは水鏡が俺よりつよいと一閃が太鼓判を押したからだ、それがいないとなると・・・」
「む・・・・・そんな理由だったのか、まぁいいが、俺はもう行くぞ、残されている時間は限りなく少ないんでな」
そういって水鏡はまた消える。
「彰・・・・・ホントにそんな理由だったの?」
「あぁ・・・最初はな、でもあいつと一緒にいる内にドンドン彼奴の事が分かって、今は自分の意志で付いていってたんだ」
彰はさっきまでの水鏡に姿を脳裏に描いた。
自分が保有している全ての『才気』の情報と照らし合わせるが、水鏡のように体中輝くような事例はない。
「でもあいつがいなくなるんだったらそのどちらでも居残る意味がなくなる、俺は隊長はもうしないと決めたんだ」
「前にどこかで隊長をしていたことがあるのかしら?」
「あぁ、これは秘密の話だが、俺は世界一の情報組織『迷い子』のボスをつとめてたんだ」
「『迷い子』の!?」
瞑が驚いて身を乗り出してくる。
「じゃあ今の『迷い子』を彰くんはどっちが情報量ある!?」
「多分俺、でも引退して個人の情報屋なので、情報料は法外ですよ?」
「それでもいい!・・・・・・冥ちゃん、少し外に行っててくれないかしら?ちょっと聞かれたくない用事だから」
「うん・・・・・・・彰、お姉ちゃんに変な事したら駄目だよ?お姉ちゃんの彼氏強いんだから・・・・・」
「しないよ!!俺がお前以外に手をだすなんて考えてるのか!?」
彰が真剣な顔で冥をみつめると、冥は安心したかのように笑顔で部屋を立ち去った。
「それで、そこまでして手に入れたい情報はなんだ?」
「現『七皇』・・・・・いや前『八皇』のことについて教えて欲しいの」
空気が凍り付いたように静まる。
「それは第一級特秘事項に当てはまっている・・・・・情報料は最高ランクだ、いいか?」
「・・・・・・・・・・どれくらい?」
「世界の金の半分以上、もしくはそれと同等の価値があるものを用意すること、どちらでも構わないが、期限は一週間だ」
「・・・・いいわ、それほどしてでも手に入れたいものだから」
彰はしずかに喋り始めた。