:一閃の真実・序
商店街を手順通りに行かなければたどり着く事の出来ない扉。
それこそ『改水』の本部の入口に麗香は来ていた。
「ここならわかるわね・・・まぁ彼女もある意味反則的な人だしね」
「嫌な予感がしたから来てみれば、いきなり反則的とは・・・ちょっと傷付くわ」
麗香の背後に『改水』のボス一ノ宮 京が立っていた、とてもダルそうに。
「今日は用事があるの、入れてくれるかしら?」
「いい気がしないけどね~・・・まぁいいですよ、一応認めたボスだしね、入って」
京が何かを呟くと、扉は重い音をたてながら開く。
その中に二人は入っていき、京の招待でその中を進んでいく。
「誰もいないね」
「フフ・・・みんな寝てるんでしょうね、さ、こっちです」
京は最深部の部屋に麗香を招待する。
麗香がその部屋に入ると強い血の臭いがして、暗い内でもはっきりとわかるくらいに血で水玉模様になっていた。
「ここは・・・?」
「気にしないで、ささ、こっちです」
京は麗香に椅子を勧めて、自分はベッドの端にトスンと座る。
「っで、聞きたい事って何なのかしらね?」
「それは・・・・」
「あ、ちょっと待って、一つ確認しておきたいの・・・それは私にしか聞けない事なの?」
「多分・・・」
「そう・・・まぁいいわ、なら言って頂戴、力になれるかどうかわからないけどね」
「一閃の事なんだけど・・・・・!」
「ごめんなさい、一閃のことなら嫌な予感があたってる気がするの、今から聞かないってのはアリかな?」
「・・・・駄目、これは元帥命令、です」
京は深い溜息をついて、無意識に顎で先を促す。
「天使って聞いて何か感じる?」
「・・・・・ヤッパリ当たってる、絶対当たってる・・・・いいわ、聞きましょう」
「一閃は天使なのかしら?」
「答えはどちらとも言えないですね、『存在』って、使っていいのかしら?まぁいいや、『存在』的にはイエス、でも、彼は違う」
京は冷蔵庫から赤いものが入ったペットボトルを取って、コップに注ぐ。
麗香にも勧めるが、麗香は要らないと首を振る。
「言いにくいわね・・・てか口止めされてるし、言っちゃうと彼を嫌いになるかもしれない」
「それはありません!!私が一閃を嫌いになるなんて、彼が例えどんな悪者でも私は彼を受け止められる!絶対に!」
突然の大声に、京はビックリするが、その顔は和らぐ。
「まいったね、そこまで言われた後に命令なんかされたら、絶対に吐いちゃうな」
「一ノ宮 京、一角 麗香が命じる、そのすべてを吐きなさい」
京はベッドから下り、麗香の前に跪き、正座で座り、胸に手をあて頭を下げる。
「わかりました、あなたの命を全うしましょう」
「早く話して頂戴」
「でわ、まず初めにもうしますと、一閃は神に仕えるものを天使とみるなら『天使』です、だけど、一閃そのものを表すなら『悪魔』のほうがいい」
注がれた真っ赤な飲み物を一気に飲み干す。
「『天使』と『悪魔』、ふたつの『存在』は酷似している、その違いはただ一つ、自我があるかどうか」
「自覚?」
「そう、『悪魔』は神から見放された集団、その見放された原因は自我があったから、彼等はとても完成に近づいた『天使』の一部だよ」
もう一度真っ赤な飲み物をグラスに注ぐ京。
「そして『天使』、神の使い?違う!神の言いなり人形だ、自我がなく神の言う事しか聞けないくずだ」
「それで?一閃はどうなの?」
じれったくなったのか麗香が身を乗り出す。
京は焦るな、っとでも言いたげに麗香を抑える。
「一閃はね、とても不安定な『存在』なんだ、良いかい、最も神の領域に近づいた男であり、堕天されて悪魔を統べる王と互角に戦い」
ぐびぐびと真っ赤な飲み物を飲み干す。
「黄泉の国を制覇して、『悪魔』という身で死神に仕える『天使』となった・・・さて彼、一閃は『天使』?それとも『悪魔』?」
「それは・・・・私は『天使』であって欲しい・・・かな?」
「・・・ここまで言ったけど、一番肝心な部分は省かせてもらうね、そして最後、彼のその行動の全てはただ一人のために成されたことなの」
「ただ、一人のため?誰ですか?その一人は?」
「ごめんなさい、それだけは言えないわ、権限で言わそうとするなら、私はこの命を自ら葬ります・・・命じますか?」
「いや・・・・いいのよ、聞いて良いかしら?その人はまだ生きているのかしら?」
「それは・・・・秘密です、こう見えて私は秘密主義者なんですよ」
京は笑って麗香の前に立つ、その目には光が無くなっているような感じだった。
麗香がその姿に少し驚いていると、京は容赦なく麗香を椅子に縫いつけるように抑えつけた。
「ごめんなさい、麗香、ちょっと我慢できなかった・・・許してね」
麗香の首筋にめがけて、京はその鋭い牙を突き立てた。
そしてそのまま、突き刺し、血を吸う。
麗香の悲鳴が地下に木霊した。
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