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五章プロローグ

大変お久しぶりです。


色々とありまして更新が滞っていましたが、書籍版の発売もあるため投稿を再開しました。


実はバタバタしており投稿するのを忘れていただけで、随分前に五章は完成していたんですよね……ついに投稿するのも忘れるようになってしまいましたよ(涙)


年末年始にかけて暇潰しとして楽しんでいただきたいので、今回は30日から1日2度の更新を考えております。


29日はプロローグのみとなっております。

 ヘルメットの中ではパイロットの乱れた呼吸で、バイザーの内側が僅かに曇っていた。


 パイロットスーツやヘルメットを独自に改造して着用しているパイロットは、その刺々しい見た目に反して怯えていた。


 視線を動かすと、バイザー内部のセンサーがそれを感知して搭乗している機動騎士の頭部を動かしていた。


 緑系統のカラーリングでまとめられた機動騎士の名前はゾークだ。


 宇宙海賊たちを中心に出回っている機動騎士で、性能はモーヘイブと似たり寄ったりだ。


 安価で安定して手に入るという意味で大人気の機動騎士であり、宇宙海賊たちにとってはなじみ深い機体だ。


 そんな機動騎士に乗るパイロットは、落ち着きがなかった。


「こんな場所にどうしてバンフィールド家の軍隊がいやがる!? 奴らの領地でも一番辺鄙な場所だろうがよ!」


 バンフィールド家が管理している宙域の中でも、一番遠くて無価値な宙域だった。


 ここならばバンフィールド家の軍隊も来ないだろうし、下手な場所にアジトを建造するよりも安全であると宇宙海賊たちが住み着いたのだ。


 他の宇宙海賊たちはバンフィールド家を恐れて近付かないため、縄張り争いにも巻き込まれない。


 まさに灯台下暗し……これを聞いた時は宇宙海賊に所属しているパイロットも名案だと思ったが、バンフィールド家の軍隊はこれを見つけ出した。


 機関銃を両手で構えたゾークが、岩石を背にして自分だけは見つからないように祈っていた。


「来るな……来るな……来るな……」


 しかし、無慈悲にも敵の接近を知らせるアラートがコックピットに鳴り響く。


 宇宙海賊は取り乱しながらゾークを加速させると、機関銃で周囲を攻撃した。


「うわぁぁぁ!!」


 バンフィールド家は宇宙海賊を捕えない。これは宇宙海賊に優しいという意味ではなく、見つけたら投降も許さず殺してしまうからだ。


 他の貴族たちであれば交渉も受け付けてくれるが、バンフィールド家だけは受け付けない。


 宇宙海賊たちにとっては憎い敵であると同時に、恐ろしくて遭遇したくない連中だった。


 そんな連中に追われている恐怖から、パイロットが取り乱した行動に出ていた。


 パイロットの視界の隅に、数多の岩石が漂う宙域でスピードを上げて近付いてくる機動騎士が見えた。


 障害物ばかりで、激突すれば機動騎士とて無事では済まない環境だ。


 それをものともしない操縦技術に、パイトットは目を丸くした。


 何より、その機体はネームドだった。


「新型のネヴァンタイプ!? バンフィールド家の稲妻がどうしてこんな辺鄙な場所に!!」


 パイロットが発砲したまま機関銃の銃口を向けた。


 発射された弾丸を避けながら近付いてくるのは、バンフィールド家でも有名な機動騎士――アタランテだ。


 ネヴァンタイプの特徴である翼のようなバインダーを持たず、代わりに二基のロケットブースターを持っている。


 両手にはそれぞれブレード付きの拳銃を持ち、二丁拳銃のスタイルも独特だった。


 アタランテがゾークに接近すると、拳銃の銃口を向けて……モニターが光に包まれた。


 そこでパイロットの意識は途切れてしまう。



 技術試験艦に生まれ変わったメレアの格納庫には、続々と機動騎士たちが帰還してくる。


 帰還してきた機動騎士たちを捕まえるのは、壁や天井、そして床に用意されたアームだ。


 アームは機動騎士たちを所定の位置に移動させ、ハンガーに固定させる。


 そして、一番奥に用意されたスペースには、アタランテが固定された。


 コックピットハッチが開いて、パイロットである【エマ・ロッドマン】少佐が出て来る。


 格納庫のハッチは開いたままであり、エマはヘルメットを装着していた。


 エマが飛び出てくると、同じ小隊の部下である【ダグ・ウォルッシュ】と【ラリー・クレイマー】の二人が近付いてくる。


 ダグは今回の戦果が嬉しかったのか、豪快に笑っていた。


「まさかテストの予定地に海賊たちが住み着いているとは思わなかったな、隊長殿」


 笑っているダグに対して、エマは小さくため息を吐く。


「笑い事じゃありませんよ。今回の一件は報告を上げないといけませんし、下手をすれば周辺宙域で宇宙海賊たちの大捜索が始まりますからね」


 エマたち技術試験隊の本当の目的は、実験機のテストをするためだった。


 あまり利用価値のない宙域ならば邪魔も入らないだろう、とやって来たら宇宙海賊たちがアジトを建造中だったのだ。


 発見した時は、エマは頭を抱えた。


 増援を要請するか、それとも自分たちで対処するか、引き返すか……少佐にまで昇進したエマには、判断を下す必要が出てきていた。


 技術試験隊の指揮官自体は、艦長と司令官を兼任している【ティム・ベイカー】大佐だ。


 しかし、機動騎士部隊を任されているエマの判断も求められる。


 責任ある立場になったエマは、頭を抱える仕事が増えていた。


「はぁ……報告書の方はどうしようかな? 宇宙海賊絡みだと、チェックが厳しくなるから苦手なのに」


 書類仕事に苦手意識を持っているエマに、ラリーが苦笑していた。


「隊長殿の心配は、宇宙海賊そのものより報告書の方ですか?」


「……それは言い過ぎですよ、ラリー准尉」


(あながち、間違いでもないから反応しにくいなぁ。はぁ、誰か書類仕事の上手な人が副官なり部下にいてくれればいいのに)


 部下たちの前で弱音を吐けないエマは、心の中で深いため息を吐いた。


 そんなエマたちのもとに、第三小隊専属の整備士である【モリー・バレル】上等兵がやって来る。


 整備兵用の宇宙服に身を包んだ彼女は、ヘルメットの中で笑みを浮かべていた。


「エマちゃん、凄いね!」


 凄いと言われたエマは、最初に宇宙海賊たちを倒したことを褒められているのか? と思って反応する。


「今回の規模なら以前にも相手をしたし、特別凄いとは思わないけど?」


 エマの反応に、モリーは自分の言葉が足りなかったと気付いたのかヘルメットの中で頭を振った。


「そうじゃなくて、出世だよ、出世! エマちゃん、中佐への昇進が内定したんだって!」


 これを聞いて一番に反応したのはラリーだった。


「中佐!? もう大隊規模を率いる階級だぞ!?」


 ダグの方は内定の部分が気にかかるようだ。


「何で内定なんだ? さっさと昇進させればいいだろうに」


 ラリーとダグが、昇進を決めたエマの方に顔を向けた。


 本人は出世したというのに嬉しそうな顔はしていないばかりか、頬を引きつらせていた。


 自分の端末を確認し、昇進の内定が事実か確かめていた。


 どうやら、事実らしい。


 声を僅かに震わせながら、エマが内定の事情を説明する。


「さ、佐官になると特別な教育が必要になるので、本当なら佐官教育を受けないといけないんですよ。ただ、あたしの場合は任務もあって先送りしていたので……」


 事情を聞いたダグは納得しきれないでいる。


「騎士といえばエリート中のエリートだろ? もう佐官教育まで済ませていると思ったんだが、そうじゃないのか?」


 騎士とは超人であり、軍隊ではそれだけでエリートだ。


 そんなエリートが佐官に必要な教育を受けていないというのが、ダグには信じられないらしい。


 この辺りの事情に詳しいラリーが、饒舌に説明をする。


「バンフィールド家は騎士不足だからね。短期教育で大量に騎士を用意しているのさ。だけど、短期教育だから佐官教育とか諸々が足りていないと聞くね」


「あ~、そういう事情かよ」


 バンフィールド家は規模の割に騎士が少なく、生え抜きを用意するために急いでいた。


 そのため、エマのような短期教育を受けた騎士たちは佐官に必要な知識や技術を持っていない。


 エマは悩ましい顔をしていた。


「騎士学校で佐官教育を受ければ、そのまま中佐に昇進だそうです。けど、任務もあって時間もないからしばらく昇進はお預けですね」


 しばらくは少佐のまま、これに気付いたエマは安堵した顔をした。


 これをモリーが見逃さなかった。


「あれ? エマちゃん、出世が嬉しくないの?」


 エマはモリーの問い掛けに視線をさまよわせる。


「う、嬉しいよ。嬉しいけど……出世するとね、それだけ責任と仕事が増えるからさ。今ですら大変なのに、更に仕事量が増えると思うと……ね?」


 現状でも大変なのに、中佐になってしまえばどうなってしまうのか?


 しばらくはこのままがいい、と思うエマだった。



「技術試験隊の解散!? そんな急にどうしてですか!!」


 艦長の執務室兼私室に呼び出されたエマは、机に両手をバンッ! と振り下ろして抗議した。


 椅子に座っているティム大佐は、俯いて元気がない。


 そればかりか、復活させたリーゼントもしなびて見える。


「……一時的な解散だ。その間にメレアはオーバーホールを受ける。それに、ここのところ技術試験機のテスト続きでまとまった休みもなかっただろ? しばらくハイドラで英気を養えとさ」


「い、一時的って期間はどれくらいですか?」


 ティムはボソリと言う。


「……一年」


「一年!?」


 エマが一年と聞いて驚いているのは、騎士学校での佐官教育に一年かかるためだ。


 しかも、時期的に今から申請を出せば入学が間に合ってしまう。


 エマはティム大佐に提案する。


「あ、あの、まだ不十分なテストとかありませんか? ほら、新兵器のテストとか、アーマードネヴァンの追加テストもあったりするかもですし」


 疲れた顔をしているティム大佐が顔を上げた。


 エマがハイドラに戻りたくない理由を察したのか、自分の話をする。


「出世したくない気持ちは理解するが、追加の予定なんて作れないぞ。それこそ、中央の決定だからな。あと、戻りたくないのはロッドマン少佐だけじゃないんだぞ」


「え? まさか、大佐も?」


「……ひ孫に言われて家に連絡を取った。あいつ、まだ俺なんかを待っているとさ。次の長期休暇で戻ると約束したから、戻らないわけにはいかないが……今から謝罪の言葉を考えて気が重い」


 ティムが気落ちしていたのは、何百年ぶりに家に戻るからだった。


 エマはティム大佐の姿を見て、ハイドラに……故郷に戻るしかないのだと察した。


「あたしも騎士学校へ再入学の手続きをしないといけませんね。あは、あははは……中佐かぁ~あたしには荷が重いなぁ~……」


 出世したくなかったエマが、乾いた笑い声を出すとティム大佐が同情してくれる。


「お互い、下手に出世なんかしたくないよな」


 こうして、エマの騎士学校への再入学が決定するのだった。


俺は星間国家の悪徳領主!【外伝 あたしの悪徳領主様!! 五章】が本日より投稿をスタートしました!!


年末年始で大変忙しい時期かと思いますが、お手すきの時間に楽しんでもらえれば幸いです。


さて、気が早いようですが来年のスケジュールというか書籍の発売日について触れておきましょう。


【あたしは星間国家の英雄騎士! 五巻】【1月25日発売予定】


【ヴァルキリー・バレット1巻 ~仲間を失った傭兵の転属先は、空を舞う少女たちの学園でした~】

【2月28日発売予定】

※旧タイトル【フェアリー・バレット】


色々と疑問もあるかと思いますが、その点につきましては活動報告に書いているので気になる読者さんはご確認くださいませ。

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Kindle版… 最近、AmazonのKindle版の予約開始が遅い… 活字は老眼で読めないNoooo Kindle版の予約を。
あばばばばばば! やった!やった!更新!更新!
なろうではクラウス以外まともな上がおらずに書籍でも、まともな上が少ないから、姫たちリアムの狂信者やマリーたち狂信者連中に関わらないまともな精神持ってる連中少ないからな。 姫やマリーというある意味馬鹿な…
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