一章 呪われた青年
『わしはの、ユダの生まれなんじゃよ。お前さんたちからしたら過去のものになるのかもしれんが、、、お前さんの神様とわしの神様は違うんかいの?』
気づけば壁に描かれた赤と黒のコントラストが黒と紺色になっていた。喋り疲れたというわけではないがザラスの口が先ほどより重くなる。
『わしはの、今でも神を信じ、お祈りをするんじゃよ。真っ暗な世界で輝く何かを求めてな。しかしの、明るいところがやってきたりしてもな、必ず暗いところはあるんじゃ』
一息飲んで続けた
『わしはの、ある時光より暗闇を探すことにしたんじゃ。闇の中で暗闇を探すなんておかしな話なんだがの』
流石に口元が乾き、ザラスは腰にある革水筒に手を出した。眼の見えない彼には必需品なのであろう。
『あるときな、暗闇の中で子供の泣き声を聞いたんじゃよ。とても悲しい泣き方をする声じゃった。暗い中でもそこは一層暗黒に満ちておってな、わしがいままで見ていた暗闇はとても色鮮やかだったことがわかった気がしたんだよ。わしが言わずともそいつは自分の色を探すように辺りを模索していてな。時折わしの世界に入ってくるんだ。しかしわしの世界でもその者は暗く燃えていてな。生きるということが苦である、神が人間に与えた苦を全て背負って、憎しみを抱き、そして光を求め、その光さえ振り払おうとしていた。恐らく彼、いや彼女かもしれんがわしはそれを彼と確信しておる。わしの目の前に今それがおる』
突然すぎるザラスの解にセベクは何を言っているんだと、そんな顔をした。ザラスの目が優しくなり。
『先ほどそなたを見たときわしは自分の思いを疑った。いままではそんな暗闇も自分の中にある闇なのだろうと、、、しかし今このようにはっきりと見える』
ザラスは顔を撫でるように座ったままそのやせ細った手でセベクの脚を甲冑越しに触った。人は光を求め、またそれにおののきひれ伏すが、それとは対極の暗闇にどこかしら情を感じていたザラスもまた、闇の住人であることがわかる。
『子供たちがわしに光をくれたようにお前にもいずれ光がくる。しかし今のお前さんのままでは光を手にしたとき、その光を燃やし、飲み込んでしまうだろう。神が与えし全てのものはどれも類を見ない艶やかない色をしておる。少年よ、己が光を見つけし時、その光の出所を見、そして自分が何者なのかを知るのじゃ。そしてお前さんの暗黒もまた、己であると忘れてはならんぞ。そして』
終わらぬザラスの長話を打ち切ったのは子供達であった。辺りは暗く建物の隙間から見える星々が美しい。昼間陽に熱された甲冑も冷え、薄着のものからしたら若干の肌寒さを感じるくらいだ。




