箸休め:混沌鍋と人工生命体の日常
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「とりあえず、腕は再生した。適当に動かしてみて、違和感があったら言え」
ロジエのいう通り、ロストした右腕は元通りに再生している。
相変わらず完璧な仕事で助かるね。
とりあえず軽く力を入れてみたり、剣を抜いて振ってみたりして具合を確かめる。
「どうだ」
「良い感じだよ。普通に振る分には問題ないかな」
「ということは、何かあるのか」
「ありゃ、バレた?」
「当然だろ。大体な。お前はそういう匂わせるような、もったいぶった言い方はやめろ。
そんなんだから、いちいち周囲に余計な誤解を招くって言ってるだろ」
「ははは。ごめんね」
ついね。クセでこういう言い回しになっちゃうんだよね。
この方が僕にとって、都合のいい時が多いし。
まあ、面倒事も増えるから、匙加減は気を付けないとね。
「それで。どんな問題があるんだ」
「デバフが付いてる」
「デバフ? じゃあ、見た目だけは戻ったが、完全再生は出来なかったということか……」
ロジエが悔しそうな顔でため息を吐く。
「君ってほんと、真面目だねぇ。ロストした腕が戻っただけでも大したものなのに」
「見た目だけ戻っても意味ないだろう。デバフは永続か?」
「持続時間はリアル時間で一日ってとこかな」
「……なら、まだマシか」
ロジエはメモを取り出して、僕から聞いた内容を書き溜めていく。
あーあー。腕がだるいや。
でもさ、ほんとにだるいだけで、今のところ支障は感じないのも本当なんだ。
倦怠感の正体。
僕にかかってるデバフ『虚弱』の効果は、一部スキル封印、筋力低下、体力低下。
さらに、一部のスキル判定に麻痺が発生して失敗しやすくなる、か。
正直、面倒だと思うけど、それだけかというのが僕の感想だ。
「ルゥリヒト。悪いが、すぐに治療は無理だ」
「そっか。ま、時間経過したら治るんだし、問題ないよ」
「虚弱の治療方法は探しておく」
「あのさー。ロジエって、つくづくお人よしというか。
僕は腕が生えた時点で感謝してるんだからね。
完全に治療出来なかったぐらいで、そんな顔しないでほしいな」
「……わかってるさ。だが、今後に備えて、治療法を探しておく」
「はいはい。ギルマスのお好きにどうぞー」
別にロジエが僕の腕をロストさせたわけでもないのにね。
自分の事みたいに心配してさ。ほんと、我らがギルドマスターはお人よしの化身だ。
くぅーねるちゃんのギルド勧誘の件もそうだけど。
あれも、なるべく目立たないように行動してる彼女の事を考えて、自分とギルドを隠れ蓑にしてやろうと思っての提案だよね。
くぅーねるちゃんは関してはロジエが心配しすぎな気がする。
案外、彼女は自分で何とかしちゃういそうだから、心配いらないと思う。
それはそれとして、くぅーねるちゃんがギルド加入するのは大歓迎。
だって彼女、予測できない行動をするし、シークレットに好かれてるし。
いやー。見てて飽きないんだよね! あはは。
「ルゥリヒト、今日はどうするんだ?
その腕だと次のエリアの攻略は難しいんじゃないか」
「んー。僕は行ってもいいよ? これはこれで楽しいじゃん」
縛りプレイみたいで興奮しない?
そう言う僕の意見をロジエは「しない」とあっさり否定した。
ちぇ。なんで分かってくれないかなぁ。
ギリギリの死ぬか死なないかのスリルが楽しいのに。
「俺は安心安全の余裕をもった攻略がしたいんだ。
お前みたいにリスクがあると興奮する変態プレイヤーじゃない」
そんなんだから、腕が欠損するんだろうと厳しい言葉が飛んでくる。
確かに遊び過ぎたなぁ。
でも、流石に欠損は驚いたよ。想定外の出来事だ。
このゲームって、かなり緩いイメージがあったからさ。
硬派なゲームの中には、人体欠損は当たり前、致命的な部位を攻撃されたらHPに関係なく死亡する仕様もある。
この明るい王道ファンタジー色の強い、カミウタⅡにそんな仕様があると思わないじゃない?
腕が無くなった時の高揚と言ったら!
いやー、思い出してもゾクゾクするね。こういうサプライズは大好物だ。
まだまだ楽しめそうだね、このゲーム。
「よし。じゃあ軽いのならいいんでしょ?
リハビリに二人でレイドボス討伐に行こうよ」
「ったく。レイドボスは軽くないし、二人で行くものでもない。で、どこのレイドボスだ」
「それは行ってみてからのお楽しみ」
「お前な!」
文句を言いつつ、ロジエはレイドボス討伐のために準備を始めた。
ここで「行かない」と突き放すこともできるのに、やっぱり甘い。
せめて、どこのレイドボスを倒すのか、僕を問い詰めて確認したっていいのにねー。
本当に安心安全の攻略をしたいのかな?
実は無意識にスリルを求めてたりして。
とりあえず、ロジエが確認してこないので、うんと危険で、スリルがあって、面倒なレイドボスを脳内でいくつかピックアップしていく。
ロジエがちゃんと確認しなかったのが悪い。そう安全確認を怠ったロジエが悪いね!
「何、にやにやしてるんだ。気持ち悪い……」
ロジエが残念なものを見る目で、じとーっと僕を見つめる。
へぇ。そんな事言っていいのかな? 僕大人しくしてたのになー。
喧嘩売ってきたのはロジエだからね。
「酷いなー。僕はただ、ローザとの久々のデートだから、笑ってるだけだよ♡」
追加でわざとウィンクして、投げキッス。はい、嫌がらせ完了。
ロジエが一瞬、固まる。今のうちだ。
さっさとロジエにPT申請を送って、先に目的地へワープした。
遠くで「ローザって言うな、このくそ野郎!」とかなんか色々罵倒が聞こえてくる。
いやー。ごめんね、ローザ。ワープ中で何も聞こえないなー。
さてと。
人数制限ありのボスラッシュ縛りプレイ。
たっぷりと楽しませてもらうからね。
試験的にくぅーねる以外のプレイヤー目線の話を入れてみました。
前からあったネタの一つです。こういう別視点話、私は好きなのですが、皆様はどうなんでしょうか。
あってもいい、別視点はあんまり、などご意見ありましたら参考にさせていただきます。




