72品目:ガンデカイワ
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『>サブクエスト:ガンデカイワの抗争を仲裁せよを受諾したおん』
まんまとフルーツに釣られて受諾してしまった。
ええい。腹を括るしかない。
お父さんの課題のために! フルーツパーティーのために!
食べ放題最高!!
「そう身構える必要もないぜ。
俺の娘たちをクリアしたくぅーねるなら、難しいことじゃない」
なんかエイジスさんから高く評価されてる。そんな過大評価しすぎだよ。
だって、クリアできたのは良い人たちとPTを組めたのが大きい。
特にクロードさんのスキル『オール・フォー・ーワン』で全部のパーティを一つにして、レベル制限を無くせたのが刺さった。やっぱり、指揮官の鉄板スキル。めちゃくちゃ便利だ。
更に、カンストプレイヤーのロジエさんが参加していたことで、全体のレベルが底上げされていた。
運よくシナジーが生まれて、皆のやる気が合わさった結果のクリアだ。
「くぅーねる。お前さんにやってほしいことはただ一つ。ガンデカイワたちの抗争を止めることだ」
「ガンデカイワたちの抗争、ですか?」
果樹園の下にいたガンデカイワたちが動き出した原因は、その抗争のせいってこと?
「ガンデカイワは抗争を起こすような好戦的なモンスターなんですね」
マキナリウムに入る前は執拗に追いかけられたし、温厚なモンスターではないか。
私の言葉にエイジスさんはうーんと煮え切らない表情だ。
「地面から出てるやつは、まぁ、そうだな。
自分のテリトリーに入ったら排除しようとする。逆に言えばテリトリーにさえ近づかなければ、
何もしない。ただの大岩だ」
私とアリアは顔を見合わせる。
(何もしないってなによ。めちゃくちゃ追ってきたじゃない)
(えっと……あの時は多分、テリトリーに入ったんじゃないの?)
(相当引き離したのに?)
(私に言われても困るよ……)
小声でひそひそとお互いの認識をすり合わせる。
テリトリーに侵入しない限り何もしない大岩。
どうにも信じられない情報だ。
「なんだ。何かあったか?」
「いいえ! 何でもないです。続きを聞かせてください!」
「おう。そもそもガンデカイワってやつは、そうそう地表に出てこないんだよ。
地中にある大岩が長い年月、魔力やら思念やらをため込んで核を作って、ようやく地表に這い出てくるんだ」
あ、そうなんだ。でもマキナリウムの周辺にゴロゴロいるけどなぁ。
「多く生息してるように見えるのは、討伐が困難だからです。
あんな大岩を粉々にするのに、どれだけの火薬と人員が必要になることか……。
テリトリーに入らなければ、大人しいのです。費用とコストを天秤にかけて、
害のない大半のガンデカイワは放置されているのですよ」
キリミの補足により私の疑問はクリアになった。
確かに、全身が珍しい金属で出来てるんだったら、メリットもあるだろうけど、ただの岩だもんね。
ひょっとしたら、核とやらは貴重なのかもしれない。
でも、キリミの口ぶりから察するに、本当に旨味がないんだろうな。
「それが抗争を起こすぐらい活発になったのは、最近新しく生まれたガンデカイワのせいなんだ」
エイジスさんの話をまとめるとこういうことだ。
長年ガンデカイワをまとめてきたリーダーのおかげで、地上、地中含めてガンデカイワたちは大人しかった。
しかし、最近この地に強力なガンデカイワが新たに生まれたそうだ。
そいつはとても好戦的で、長年リーダー務めてきたガンデカイワに宣戦布告をしたという。
そして、新人ガンデカイワはリーダーを倒すために人材(岩材?)を積極的に集めている。
果樹園の下のガンデカイワが動きだしたのは、新人ガンデカイワの一声があったせいとのことだ。
「古参のガンデカイワのリーダーはツラーデカイワ。新人はタイドーデカイワと呼ばれている」
ツラーとタイドーか。
なんだろう。どちらともお近づきになりたくない名前だ。
同士討ちにならないかな。
「今、このマキナリウム周辺はツラーとタイドーの抗争で騒がしい。
果樹の事件なんて可愛いもんさ。それより、こいつらを放置してると、いずれもっと大きな問題に発展する可能性の方を国は警戒してる。
そこでだ、くぅーねる。お前さんにはこの二体の争いを収めてほしい」
***
エイジスさんの店を後にして、マキナリウムの外へ出てきた。
おんちゃんの誘導のもと、クエストの進行場所へと馬車を走らせる。
「あーあー……そう簡単に美味しい話は転がってないってことかぁ……」
アリアカーの屋根の上で、大の字になって空を見上げた。
あー。ほんと良い天気。このままピクニックに行きたい気分だ。
店を出る前に、エイジスさんに作ってもらったアウトロ肉寿司を一口摘まむ。
うまぁ……。軽く炙られていて、上に乗ったすりおろし生姜が良いアクセントになってる。
「これに懲りたら、すぐ食べ物に釣られるクセをどうにかすることね」
アリアが馬車を走らせながら、耳の痛いことを言う。
「もぐもぐ……。
でもさー。目の前に山盛りフルーツパフェがあったら食べるしかなくない?」
「毒盛りフルーツパフェだったらどうするのよ」
「はむっ……ごくん。食べるけど(状態異常耐性があるし)」
「……ほんっと、イーターマンってどうかしてるわ」
アリアのお小言は右から左に流しておいてっと。
お茶をすすりながら、私はマップを広げてガンデカイワの生息域を確認する。
ふむ。もうちょっとで、大きな敵マークに近づくみたい。
ツラーかタイドー。
どっちかは分からないけど、偉そうなボスガンデカイワがいるはず。
「それで、どうするの?
いくらイーターマンでも、真正面から突入するわけじゃないでしょ」
さすがにそこまで無謀じゃない。私は慎重かつ穏便にクリアするタイプだ。
「まずはできる限り近づく。
ボスの様子と集まったガンデカイワがどれくらいの規模かの確認をしよう」
どんな規模で、どんな状態なのか。
ドンパチ激しく戦っているのか、それとも睨み合いの冷戦状態か。
とにかく情報がないと何もできない。
「見えてきたわよ。――くぅーねる! もう限界! これ以上近づくのは危険だわ」
「おっけー。えーっと、どこか身を隠すところ……。アリア、あそこの岩陰に入って!」
荒廃した地で身を隠せそうな場所は限られている。
なんとか小さな岩陰を見つけると、馬車をそこに潜り込ませた。
「気づかれてないよね?」
「……そうね。大丈夫だと思うわ。これから、どうするの」
「思ったより、厳しいなぁ……」
荒野に無数の岩が並ぶ。なんというか、圧巻だ。
その数は少なく見積もっても数百はありそう。
思わず、地平線の向こうまで続いているんじゃないかと錯覚してしまう。
中心にとてつもない大岩。大岩というか、もはや山がある。
あれが、ツラーかタイドー。どちらかのボスデカイワだろう。
一人で討伐という選択肢は早々に無くなった。
元よりその可能性は低いと思っていたからいいけどね。
エイジスさんは「争いを収めてほしい」って言ってたから、仲裁の方向に持っていきたい。
けれど。
「ボスデカイワにどうやって近づけばいいんだろう」
「言っとくけど、もう近づくのは無理よ。この場所でギリギリ逃げられる距離。
もっと近づくなら、バレた時に押しつぶされて死ぬ覚悟で行くことね」
「はぁぁぁ……だよね」
ギリギリの距離まで近づいたけれど、ボスデカイワまで遠い。
少なくとも数十のガンデカイワをやり過ごす必要がある。
だけど、この荒野は見晴らし抜群で、スニーキングにはとことん向いていない。
「マキナリウムのFパネルか、ロジエさんのスカイボードがあればなぁ」
空を飛べる道具があれば、地表のガンデカイワを無視して行けるだろう。
ま、そんな便利な道具は無いんですけどね! ははは……はぁ。
「あの板前、元皇子なんでしょ。権力でFパネルの一つや二つくらいどうにかできないの?
天丼を起動させたくらいなんだし。
それが難しいなら、錬金術師に頼むのも手よね」
「んー。もうちょっと自分で何とか出来ないか考えさせて」
エイジスさんは依頼主だし、交渉の余地はありそう。
ロジエさんはお世話になりっぱなしだからパス。
というか、本当に陸路は無理なのか。
しばらくガンデカイワたちの様子を観察する。すると。
「ん? あれ、なんかボスデカイワのうえに何かいる?」
何かがぴょんぴょん跳ねてるような、そんな影が見えた。
「どれ? 見間違いじゃなくて?」
アリアがボスデカイワの方を見て、じーっと目を細める。
『――!!』
微かに何かが跳ねてる。あと何か……声? が聞こえたような。
『>シャルルマーニュから連絡が来てるおん』
こんな時に、シャルルさんから連絡が! なんてタイミングだ!
『くぅちん! アリアリ! ここだし! 二人の目の前にいるし!』
ん? 目の前にいる? どこどこ?
私とアリアの目の前って、ボスデカイワしか……。
『そう! 向いてる方向合ってるし! ガンデカイワの上だし!!』
ええええっ!? うそ、あそこで跳ねてるのって、シャルルさん!?
というか、良くあそこから、私とアリアが分かったな。
そうと分かれば、私はメニューを開いて、シャルルさんからの連絡に応じた。
ロジエはお人よしだから、喜んで手を貸してくれると思うよ、くぅーねる。




