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仮想胃袋∞系ようじょはリアル底なし胃袋系女子  作者: 猫猫全猫
波乱続きでもデザートは欠かさない3章
71/72

70品目:そこになければ無いですね

小説を閲覧いただきありがとうございます。

評価、ブクマ等いただけましたら、嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

「ここ青果コーナーであってる?」

「案内板にはそう書いてあるわ」

「何もないよ?」

「ほんと綺麗なほど何もないわね……どうなってるの?」

「私が聞きたいよ……」


デパートになら何でもある。果物ぐらいすぐ手に入るだろう。

そんな私の安直な考えを見透かしたのか、マキナリウムの青果コーナーはからっぽの棚で待ち構えていた。


「今日が果物の安売りの日で皆に買われちゃったあととか!」

「果物全部が? そんなことあるかしら」


果物全部が空っぽ。全滅の状態。

野菜は少なからず陳列されているが、ちらほらと欠品が見える。

これは一体何があったというのか。


「品出しを忘れた……作業するマキナが不足してて追いついてないとか……」


別コーナーでテキパキと品出しするマキナの店員を観察する。


客が棚から商品を取って買い物かごに入れた。

棚から商品が1つ分減ったのを確認。

そこで私は瞬きを1回する。

瞼が開くと同時に、棚の商品は元通りに商品が陳列していた。


「んえ?」


思わず間抜けな声が出てしまう。

客が商品を取ったと思ったら、次の瞬間には商品が並んでいて……?


「アリア……」

「なによ」


顔面を蒼白にして口をパクパクさせる私を見て、アリアは何事かとこちらを見る。


「……ありのまま。今起こった事を話すよ!」

「聞きたくなくなるような前振りだけど、一応聞いてあげるわ」

「ありがとう、アリア。

あのね『客が商品を取って、棚から1つ分商品が無くなった。と思ったら1つ分商品は埋まっていた』。もうね。超スピード。早業。マキナ業なの。

頭がどうにかなりそうだった……。

一般的な超スピードだなんて、そんなチャチなもんじゃあ断じて、ない。

私は、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ」

「そりゃマキナの作業スピードだもの。ヒューマンとは違うでしょ」


アリアは目を虚ろにさせて、大きくため息を吐いた。

そして、私の渾身の説明を無慈悲にもバッサリ切り捨てる。


「アリアが冷たい……」

「ここでふざけてても、果物は手に入らないのよ」

「まぁ、そうだねぇ」


どういう理由かわからないけど、このデパートでは果物は品切れになっている。

で、あれば別の場所にいくまでだ。


「他の店に行こっか。さすがにマキナリウム中の店から果物が消えたってことはないでしょ」


流石にねぇ。と思ったところで、なんだか嫌な予感が……。

いやいや、まさかそんなね? だって果物だよ?

レアアイテムとか、期間限定品とかじゃないもの。

何の変哲もない。いたって普通の果物。料理に使う隠し味。

たったそれだけのものだ。ノーマルな食材アイテムだ。

大丈夫。きっとどこかにある!


『>フラグだおん?』


ちょっと、おんちゃん。やめてよ。

そんなことないから! 立ってません。そんなのへし折ってやる。


「とりあえず、お母さんから頼まれたものは買っていこう」


買い物リストを確認。よしよし。頼まれたものはデパートで全部買える。

頼まれたものが果物じゃなくてよかった。


「おんちゃん、とりあえず近場のお店を教えて!」


『>わかったおん! 該当の店にマークするおん!』


私とアリアはマップを開いて、おんちゃんにマークしてもらった店に向かった。

お父さんの課題。その料理のための果物を求めて。


***


2時間後。私はアリアカーの中で倒れ伏していた。


折ったはずのフラグがヒラヒラと揺らめき、待ってましたと出迎えられてしまったのだ。


泣く泣くフラグ回収をした私は頭を抱えて床をごろごろ転がる。


「なんで!? どこにも果物が、売ってないよぉ!」

「綺麗さっぱり……どこにも置いてなかったわ」


アリアもあちこち歩いて疲れたのか、同じく私の横でぐったりしている。


「八百屋さんにも行ったけど、果物はなかった。自販機もぜーんぶ売り切れ。

果物がないからしばらく閉店するって店もあったし、どうなってるの」

「……もしかしたら、マキナリウム全体で果物が売り切れかもしれないわよ」


アリアの言葉に私はぎょっとして、目を見開く。


「マキナリウム全体で? いや、そんなまさか……」


小さな国とか村ならわかる。不作やモンスターの襲撃、災害。

そんなアクシデントが続いて、農作物が市場に出せなくなるのはありえる話だ。

だけど、マキナリウムはかなり大きい国家。

流通はしっかりしてるだろうし、非常時の備蓄だってあるだろうに。


「でも行けるところは全部だめだったじゃない。

考えてみたら今までマキナリウムに来てから、果物を見てない気がするの」

「えぇ? そうだっけ……」


大食いチャレンジと大型レイドがあったせいで、長くマキナリウム滞在してる気がしたけど。

実際はまだ2日。それだけで国中から果物が消えたって判断するのは早すぎな気がする。


「仮に国中から果物がなくなったとしてだよ? そんなの一大事件だよ。もっと国中が騒がしいはず。だけど、街中ではそれらしい騒ぎは起こってなかったでしょ」

「そうね。普通なら一部の食料が枯渇するなんて、とんでもない騒ぎになる」

「そうそう」


本日の天気は快晴。

街中は活気があって、住人やプレイヤーたちが行きかっていた。

公園には小さいマキナたちや他種族の子が仲良く遊んでいた。

旧型マキナの夫妻がギコギコと錆びた身体をゆっくり動かし、のんびりと散歩を楽しんでいて。

ほら、思い返しても騒ぎは一切起こっていない。

絵に描いたような平和で穏やかな風景。


何かが起こってるなんて信じられない。


「種族の違いって怖いわね、くぅーねる」


なんだか雲行きがあやしくなってきたな……。


「例えば、オイルとか電気だったら、今頃大騒ぎ間違いない。

でもマキナにとって果物は生命活動において重要じゃない。どちらかと言うと嗜好品よ」

「……」


だから大きな騒ぎになってないんじゃないかしら。

そんなアリアの呟きに、私は目の前が真っ白になったのだった。


***


「へい、らっしゃい。悪いね、今はまだ準備中って、くぅーねるか!」

「どうも、エイジスさん」


果物ショックから復帰した私は激闘を繰り広げた大食いチャレンジの店にやってきた。

準備中の札がかかっていて、申し訳ないなと思いつつ中に入る。

すぐ板前──エイジスさんが出迎えてくれた。


「おや。呪いまで食いつく、食い意地の権化のイーターマンじゃないですか。

準備中に押し入るほどいやしくなったんですか?」

「キリミもこんにちは。えー、キリミを食べた仲なのにひどくないですか?」


続いてキリミも奥の調理場から出てくる。

昨日の敵は今日も敵。そんなとげとげした態度だ。初対面とずいぶん態度が違う。

あの戦いでの性格を考えると、こっちが素か。


「おい、キリミ。お客様に失礼だろ!」

「皇子。お言葉ですがまだ開店前です。開店前にやってくる不届きものはお客様じゃなくて、食い意地のはったイータマンで十分でしょう」


キリミの言い分はごもっともだ。準備中の札がかかってて入ったのは私の方。


「準備中にごめんなさい。食事じゃなくてちょっと聞きたいことがあってきました」


無礼な客と言われても仕方がないよね。

もし、帰れと言われれば大人しく回れ右をするしかない。


「ほう? 何か事情がありそうだな。よし、どうせあの大食いチャレンジ騒ぎの後だ。

特別忙しいってわけでもねぇ。話を聞こうじゃないか。そこら辺に座んな」


私の困った顔で何かを察したのか、エイジスさんは中に入れてくれた。

いやはや、義理人情に厚いマキナで助かる。


「キリミ、くぅーねるは客だからな。失礼のないように。あと茶も用意するんだ」


エイジスさんにそう言われて、キリミは渋々かしこまりましたと一礼する。


「……皇子のお客様だから丁重に扱うだけですよ。勘違いしないように、お客様」


去り際にぼそっと私にだけ聞こえる独り言を残して、お茶を入れに厨房に戻っていった。

胃袋を共感した仲だけど、キリミもツンデレンコン族か。

割合にするとツンツンツンツンデレ? ぐらい。アリアの方がデレ成分が多い気がする。


「どうしたの、くぅーねる。突っ立ってないで座りましょ」

「おじゃまします」


いつの間にかアリアが先に椅子へ座りくつろいでいた。私もその隣に座る。


「おっと。そっちの精霊のお嬢さんはお水の方がいいな……ほらよ」

「あら。ありがとう」


エイジスさんから冷たい水をもらうと、アリアは嬉しそうに受け取った。

アリアがここの水を美味しいと言ってたのを覚えたらしい。

ほどなくして、厨房からキリミがお茶をもってきた。


「熱いのでお気をつけて」

「うん、ありがとう、キリミ」


なんのお茶かな。キリミから湯のみを受け取ると中を覗く。

色は真っ黒で湯のみの底が見えなかった。黒茶とか?


「いただきます」


湯のみから立ち上る湯気。

ふーふーと息を吹きかけて、ゆっくりと口をつける。

キリミは熱いと言っていたが、ちょうどいい温度だった。

香ばしい茶葉の匂い。身体がぽかぽかして心地いい。


「美味しいです」

「イーターマンの口には合ったようでなにより」


ツンデレのツンを研ぎ澄まして、憎まれ口を叩いていたキリミ。

一体、どんなお茶が出されるのだろうと少し不安だったが、杞憂だった。

もう一口飲む。んー。少しとろみがあるな。ゼリーじゃないけど。

あとこの独特な香ばしさ。クセになりそう。

カミウタⅡコラボカフェがあったら、ぜひメニューにしてほしい。


「皇子が愛飲されるオイルに近いお茶ですよ。光栄でしょう?」

「ふぶっ!?」

「お。あれを出したのか。奮発したな、キリミ」


前言撤回! オイル!? 謀ったなキリミ!!


「オイルそのものではありません。限りなくオイルに近いお茶です。

大抵の種族は飲むと微妙な顔をされるので、お出しできませんでした。

皇子と同じ味が楽しめるなんて、最高のおもてなしだというのに……」


イーターマンの口には合ったってそういうことか……。

オイル……いや、オイル味のお茶か。オイルじゃなくてちゃんと飲んでも大丈夫なお茶。


「『美味しい』ですよね?」

「……」


今更まずいとか言わないですよね? というようなキリミのドヤ顔が憎たらしい。

でも、オイル味と聞くまでは香ばしい匂いの不思議なお茶としか感じなかったし。

恐る恐る、もう一口飲む。


「おいしい、ですね」


イーターマンって胃袋が特化してる種族で味覚は普通だと思ったんだけど。

私自身、リアルな話で味覚音痴だとかそんなことなかったと思うんだけど。

……不思議な味のお茶だ。まずくはない。

逆に考えると、オイルが美味しいのかも。

いやいや、冷静になれ。オイルが美味しいわけない。

ちょっと飲んでみたいとか思ってないよ!


「あぁ。本当にお客様のお口にあって安心しました。本場のオイルの味を提供できてよかったです」

「ふん。ミスリルや拳銀を食べるイーターマンにオイル味のお茶なんて、子どもだましもいいとこね。

どうせだったら、本物のオイルを出しなさいよね」

「こほん! エイジスさん。早速なんですけど聞いていいですか!?」

「お、おう。なんだ。何が聞きたいんだ?」


やめてよ、アリア。煽らないで。お口チャック。

なぜかアリアが得意げな顔で余計なことを言ったので、私はあわてて話を遮る。

エイジスさんが「確かにそうだな。くぅーねるならオイルの味がわかるか」なんて言って、オイルを出してきたらどうするの。


「今、マキナリウム中で果物がなくなってる……なんてありえますか?」

「果物……ああ、その話かい。確かに今はこの国のどこに行っても果物はいないぜ」


あっさり返ってきた回答に、もしかしたらどこかに残ってるかもという淡い希望は打ち砕かれた。

この国に、果物はない。そっか……。

ん? なんかエイジスさんの言い方引っかかるな。


果物は()()()ってどういうこと?


「いない、ですか。ないではなく? まるで果物が失踪したみたいな言い方ですね」


足が生えてとことこ店中から脱走する果物。

ぷぷっ。はははっ! いやいやないでしょ。

あまりにシュールでファンシーな光景を想像して笑ってしまう。

たぶん、私の聞き間違いだね。私が冗談ですよと訂正しようとして、エイジスさんが口を開いた。


「食の事となると鋭いじゃねぇか。

ああ、そうさ。今、マキナリウムじゃ果物の集団失踪事件が発生してるんだよ」


あれ。もしかしたら思ったより深刻な状況?

エイジスさんの真剣な顔に私は姿勢を正すと、彼の言葉に耳を傾けた。

感想、誤字報告ありがとうございます。

また厄介事の気配がしますね。果物の集団失踪事件とは一体……?

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― 新着の感想 ―
6年ぶりの更新気づかなかった! 生きてたんかワレェっ!!また読めて嬉しいぞ!!!
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