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真実②

 最初はベランダや台所を中心に捜していた栄二だったが、次第にタンスの引き出しや靴箱など人が隠れることが不可能な場所を調べ始めた。


 見ていた後藤は気分が悪くなった。


「かなめ、どこだよ。出てこいよ!」


「栄二、やめろ」


「うるさいな。ひまならお前も手伝えよ」


「いいから、やめろ。ここに来たらお前に言いたいことがあった」


「そんなのは後にしろ。今はかなめを捜すのが先だ」


「よく聞け。有坂かなめという女はいない。ましてや、三文社という出版社も存在しない!」


 その瞬間、栄二の耳の奥でプチンと糸が切れるような音がした。なんの音だろうかと思い耳に手を当てたが、何も異常は無かった。


 有坂かなめはいない。


 出版社の三文社も存在しない。


 そんな馬鹿なことがあるか。さっきまでいたはずの有坂かなめは誰なんだ。


 実際にいたではないか。それはどう説明するのだ。叫ぼうとした栄二の肩に後藤の手が素早く置かれた。


「お前と別れた後、持っていたスマートフォンで三文社を検索してみた。同名の会社はあったが業種も違うし、場所も俺たちの大学の近くどころか県外になっていた」


「小規模な会社だから、出てこなかっただけだろう」


「俺もそう思った。だから大学に戻って就職活動センターの人に尋ねたよ。すると衝撃的な返答がきたよ。この近辺にそんな出版社は無いと」


「そいつが知らないだけだ。そうだ。そうに決まっている」


 後藤が言っている就職活動センターの人物はおそらく、自分に嘘を教えて陥れたあの男だ。


 あいつなら平気で嘘を言いかねない。後藤はだまされている。


 友達が間違った方向に行ったのなら、正しき道に戻さねばならない。


 口を開こうとしたが、なぜか言葉が出て来なかった。ただ、口をぱくぱくと魚みたいに動かしていた。


 なぜだ、俺はこれから正しいことを言うはずなのに。


「栄二、認めたくない気持も分からないこともない。だけどその人は就職活動センターに十年以上も勤務している。大学の近くどころか、東京近辺の会社を全て把握している。ついでに、東京に現在ある出版社のリストをもらってきたよ」


 後藤はポケットから四つ折りにした紙を取り出すと、栄二に差し出した。リストだからなんだと思いながらも、栄二は震える手で紙を受け取った。


 三文社という社名は無かった。


 栄二は何度も、さ行の箇所を指でなぞりながら、読み続けた。あるはずだ。


 絶対にあるはずなのに、なぜ無いのだ。


 次第に歯ぎしりを始めた。


「俺はこれだけ調べたんだ。だからあることが言える」


 何が言えるというのだ。くだらない内容だったら、絶対にただでは済まさない。

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