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きみと、まるはだかの恋  作者: 葉方萌生
第六章 霧が晴れたあとで

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6-3

***


 お店の内装、メニュー、プラネタリウムの投影方法など、考えることはたくさんあった。あれから一週間、お店のコンセプトに沿って細かい部分を昴と話し合った。もちろんその間も、農作業や土日の夜の星空ツアーガイドに勤しむ。昴について何度も星空ツアーを聴くうちに、自分でも解説をしているような気分になっていったのだからとても不思議だ。


「やあやあ、城北くん」


 いつものように日曜日の星空ツアーが終わったあと、ツアーに参加していた村長の木川さんが昴に声をかけてきた。私は、村長が参加しているとは知らず、声をかけられた時は驚いたけれど、昴は知っていたのか「お疲れ様です」と自然と頭を下げた。


「ハナさんも、こんばんは」


「こんばんは」


 村長とは星見里に滞在を始めてから数度、顔を合わせている。というのも、私が頻繁にWi-Fiを求めて役場に行くので、そこで役場にいる村長と顔を合わせるのだ。


「やっぱり城北くんの解説は一級品だね」


 ストレートで最高級の褒め言葉を伝えてくれる尊重に、昴は「いや、そんなことないです!」と首を横に振りながらもどこか嬉しそうに頬を赤らめる。


「城北くんの解説を聞いていると、夢を見ているような心地になるよ。だからこの間の地域おこし協力隊の件も、もちろん採用ですよ」


「え、本当ですか!?」


 突然の採用通知に、昴の目が大きく見開かれる。先週『喫茶きこり』で三上さんから協力隊の話を聞いた翌日に、昴は村長の元へ、協力隊に入りたいと申し出ていた。その採用通知を今もらえるとは思っておらず、純粋に驚いたようだ。


「こんなに素敵な解説をしてくれる城北くんを採用しないわけないよ。それに、星見里に来てから、いろいろと頑張ってくれているしね。一緒にこの場所を盛り上げていけたら僕としても嬉しい限りだよ」


「ありがとうございます。頑張ります!」


「おめでとう、昴」


 昴の顔に安堵が広がっていく。これから地域おこし協力隊の一人として、星見里の魅力を伝えていこうという決意も滲んでいた。そんな昴の顔を見ていると、私自身、励まされたような気分になれた。


「そうだ、ハナさんもぜひ、星見里の魅力発信に協力してくれるかい? ハナさんのような若くて綺麗な女性がいるだけで、星見里にも華が生まれるから」


「は、はい! もちろん協力できることがあれば全力でします」


 村長に“若くて綺麗”なんて言われて、正直照れ臭かった。それに、少し離れたところから星田さんが「村長! 若くて綺麗な女性ならここにもいますよ〜?」と顔を覗かせたのもおかしくて、「ぷっ」と吹き出してしまう。

 そういえば、星田さんには昴と恋人になったことを伝えてないな。

 というか、誰にもまだ伝えてはいないのだけれど……。

 伝えたら嫌な気分にさせてしまうかもしれないと思うと、自分からは言い出せなかった。が、星田さんが「ひょっとして」と私たちの前に立ち、私と昴の顔を交互に見ながらこう言った。


「二人、付き合ってますか?」


「え!?」

 

 図星だ。あまりにも直球なその一言に、誤魔化す余裕もなく、私は昴と顔を見合わせる。


「あ〜やっぱり! なんかいつもより距離が近いというか、二人から滲み出るオーラが違うから気になってたんですよねぇ。そっか、そっかぁ」


 残念がっているのか、私たちを冷やかしているのか、どちらとも言える態度でわけ知り顔をする星田さん。昴は「なんだよ」とつっけんどんに返事をする。村長は「おやおや」と温かい目で私たちのやりとりを聞いているようだった。


「まあ、お似合いだからやっぱりという感じですけど。ちょっと妬いちゃいます」


「は? 妬くってどういう」


 昴が天然発言を繰り出す。私はヒヤヒヤしながら星田さんをちらりと見た。


「そのままの意味です。城北さん、鈍感ですね〜。でも、そういう城北さんが好きだったから、仕方ないです」


「は……? す、好き……?」


「今の、過去形ですから! いちいち考えないでください! それより城北さん、地域おこし協力隊に採用されてようですね。おめでとうございます」


 星田さんは淡々と「好き」と伝えたあと、話を逸らすようにして昴からの言葉を遮る。


「あ、ありがとう。てかさっきのって」


「ほら、考えないでって言ったでしょう? これから忙しくなりますね。頑張ってくださーい」


 手をひらひらと振ってその場から去っていこうとする星田さんに、私は咄嗟に声を上げる。


「星田さん! あの、私たち二人でカフェをつくろうと思ってるんです。完成したら、星田さんもぜひ来てください……その、嫌でなければ」


 嫌な気分にさせてしまわないか不安だったけれど、やっぱり星田さんも星見里で出会った大切な仲間の一人だ。私は、精一杯の誠意をこめて彼女に言葉をかけた。

 星田さんはくるりと私のほうを振り返ったあと、にっこり笑って、


「そうなんですね! ぜひお邪魔しまーす!」


 といつもの軽いノリで答えてくれた。

 きっとそれが、彼女なりの誠意なのだろう。私は昴とほっと顔を見合わせると、星田さんはくるりと踵を返した。


「あの、村長」


 星田さんが去っていくのを確認したあと、昴が村長に声をかける。


「何かね?」


 昴を覗き込むようにして問いかける村長は、孫の話を聞こうとしている優しいおじいちゃんのようだ。


「実はちょっと、お願いがあるんです」


 昴はそう前置きをすると、村長にとある「お願い」を話し出した。


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