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居眠り卿と木漏れ日の姫  作者: 中里勇史
新たな任務
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大公と大公女 その1

 帝国歴221年10月、ナルファスト公国から帝都に帰還した帝国監察使ヘルル・セレイス・ウィンは、皇帝に復命するため皇帝宮殿を訪れていた。

 復命をつつがなく終え、ウィンは宮殿の内廷から外廷に向かって歩いていた。内廷は皇帝とその家族が生活を営む区画で、皇帝や妃、大公たちの私室や執務室、寝室、その他の私的な設備で構成されている。外廷は帝国を運営する多くの官僚たちが働く場であり、ここが帝国の行政を担っている。

 内廷と外廷を結ぶ通路は複数あるが、ウィンは最も大回りの通路をもっぱら使っている。この通路はあまり使われないので人に遭遇する確率が低いのだ。


 ところが、この日は違った。向こうから人が歩いてくる気配がある。よりによって、皇帝の子である大公たちだった。

 「やや、何で大公がこの通路を使ってるんだ」

 「知りませんよ。もう引き返すのも不自然です。擦れ違うしかありません」

 アデンとこそこそ話している間にも彼我の距離は詰まってしまった。もうどうにもならない。

 ウィンは通路の端に寄って、右手を左胸に当てて頭を垂れた。後は大公たちが通り過ぎるのをひたすら待つ。

 やって来たのは、皇帝の長子ロレンフス、長女アトラミエ、次子ムルラウ、三男トールティスの4人だった。4人とも、ティーレントゥム家の子女として見事な金髪を受け継いでいる。ティーレントゥム家は美男美女の家系でもあり、大公と大公女は天使と見まごうばかりの美しさだった。

 4人はそのまま通り過ぎるかに見えたが、ロレンフスがウィンに近づくと立ち止まった。

 「セレイス卿、こたびは大活躍だったそうだな」

 「恐れ入ります」

 「陛下にお借りした兵力を使って、カーンロンド系の長子にナルファスト公位を与えてやったというわけか。随分と気前が良いことだな」

 「返す言葉もございません」

 それを見ていたムルラウが眉をひそめた。ナルファスト問題については、大公たちも報告を受けていた。監察使がナルファストに到着した時点でサインフェック副伯スハロートは死亡しており、ティルメイン副伯リルフェットの消息も不明だったという。継承権を持つ者はロンセークレーネットしか残っていなかったのだ。監察使に落ち度があったとはムルラウには思えない。

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