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ep.2-31 「トキツ シオンさんいらっしゃいますー?」

 


 パキラは魔族達から少し離れた所で立ち止まり、オリビアの方を振り向いた。

 ローブの隙間から彼の腹筋がちらりと覗くと、オリビアは呆れて城の中で話そうと提案したが、彼は首を振った。


「寒くないの?」


「ローブ着てるからそこまで寒くねぇ。……元気だったか?」


「ええ……今まで、隠しててごめん」


 続いた謝罪の言葉にパキラは鼻の頭を掻いて苦笑すると、オリビアの頭を軽くぽんぽんと叩いた。


「よーく考えてみりゃ……勇者相手に話せるわけねーよな」


「でも、話していたら――」


「過ぎた事を考えても時間が勿体ねーだけぞ。俺様はもう協力する事を決めた。怒ってもねぇし、咎めるつもりもない。……だが、これからはもっと周りに頼れよ?」


「……ありがとう」


 パキラはにっと笑った後、オリビアの言葉を思い出して少しだけ表情を曇らせた。


「……一つ聞きたい。ヴァイスに戻るつもりはないって、本当か?」


「本当よ、創造神を倒す為に魔族達と契約したから。……理由はそれだけじゃないけど」


「赤髪がそれを許さなかったら?」


 すぐに返事をする事ができなかった。


 オリビアは考えるように目を伏せると、笑顔を引き攣らせて頬を掻いた。


「説得する。納得してもらえなかったら……その時にまた考えるわ」


「……そうか」


 パキラは少し間を置いて短く返事をすると、空を見上げて息を吐き出した。


「……もしもの時は俺様も手伝ってやるよ。

 あっ、因みに俺様は喜んでついてくぞ?赤髪とダメになったらいつでも呼んでくれ」


「あんた……変わらないわね」


「安心しただろ?」


「さあね」


 “「すみませんオリビアちゃん、シオン様が今から会議を開くと……」”


 “「……まったく……今行くわ」”



「クロッカスから呼び出された」


「私の方にも今連絡があったわ。行きましょうか」


 パキラは「飯食ってからじゃダメなのか?」とぼやきながら先を歩き始めた。

 彼の大きな背中を見てオリビアは笑みを溢した。



「オリビア、私青髪の勇者の方が好みだわ」


「……起きてたの?」


 オリーは足をぶらつかせながらにっと笑った。








 ――――


 オリビアが会議室の扉を開けて中に入ると、既に人は集まっていた。


「おーお前ら早いな」

「…………」


 2人が共に現れたのを見てカクタスの表情が曇る。

 オリビア以外の全員がそれに気付き、それぞれが気まずそうな反応を見せた。


「オリビア……まだ怒っているのか……?」


 シオンは態とらしく反省の色を見せながら小声で問いかけると、オリビアは呆れ顔で緩く首を振った。


「怒ってないわよ。……皆いるのにやめてよ恥ずかしい……早く会議を始めましょう」


「ほっ…………よし、では始めよう」


 シオンは安堵に胸を撫で下ろすと、表情を引き締めた。


 机の上に地図、そしてキャットの組織やゴースト達によって集められた資料が広げられると、勇者達はその情報の多さに驚いた。


「以前話した通り、僕達の目的は創造神を倒す事。……普通の武器では創造神にダメージは与えられない。お前達には神具を持つキャットと四葉、そしてオリビアのフォローを頼みたい」


「俺様達には神具くれねぇの?」


「悪いが、僕にはもう捧げられる物がない」


「……話を戻すよ」


 シオンが目を伏せると、それを見たキャットが一歩前に出て代わりに話を続けた。


「勇者様達にはスライムの相手、それから――」



 ――部屋の隅でカタンッと乾いた音が鳴った。



 向けられた視線の先には、驚愕の表情で固まる“ヘリー”の姿があった。



「い、今の話は……本当ですか……⁉︎」


「っ‼︎」


 全員が慌てて武器を構える。


 兵士が残っているのとは訳が違う。

 ここでヘリーを始末しても、ヴァイスに情報が伝わる――いや、既に伝わっているかもしれない。


 全員が焦りと困惑に顔を強張らせると、ヘリーは恐怖で青くなった顔を少しだけ覗かせながら慌てて声を上げた。


「ま、待ってください……‼︎話を聞いてください……‼︎」


「…………おい神様、どうすんだ?」


「……話が向こうに伝わった所でヴァイスはもう手出しはできんはず…………しかし――」


「話してません‼︎」


 ヘリーは影から飛び出して翼を震わせながら首を振った。

 その言葉にシオンは訝しげな視線を送ると、ヘリーは慌ててオリビアの方を向いた。


「オリビアさんに協力する為に、隠れていたんです‼︎」


「……どういう事?」


「シャナ様から話を聞いて……ずっと、オリビアさんに接触する機会を伺っていました…………」



 ヘリーは翼の先を擦り合わせながらボソボソと話し始めた。


 ――シャナは憑依された3年間、信仰する神の企みを知っても何もできずに苦しんだ。


 憑依から解放されてからも同じ、創造神を信仰するヴァイスの人間に話をした所で誰も信じてくれない。何もできなかった。


 しかし、唯一ヘリーだけはシャナの話を信じた。


 ヘリーはシャナの為に神の企みを阻止しようと、ヴァイスに隠れて別で(ぬいぐるみ)を用意し、オリビアと接触する機会を待っていた。


 自分がスパイとなって、創造神を倒そうとしているオリビアに協力しようと考えていたのだ。


 しかし、転移によって全ての体がヴァイスに送り返されると、慌てて隠しておいたぬいぐるみに意識を移し――状況に困惑した。


 勇者達は転移を免れ、何故か反逆者と共に行動し始めた。


 何が起こっているのか――オリビアの姿がない事も不安の一つに繋がり、じっと身を潜めた。


 そして今――勇者とオリビア達が同じ目的を持っている事を知り、姿を現したのだ。



 話し終えたヘリーは震えながらオリビアを見上げた。

 オリビアが考えるように口元に手をやると、ヘリーは不安げに瞳を潤ませてシオンの前にぺしゃりと体を倒しぶるぶると震えながら必死に懇願した。


「時の神様!勇者様と既に話が済んでいる今……ヘリーはお役に立てないかもしれません…………しかし、お願いです!囮でもなんでもやります……!役に立ちますから……ですから一つお願いを聞いてください‼︎」


「お願いじゃと?」


「シャナ様とお話をしていただきたいのです‼︎」


 ヘリーの言葉にオリビアは思わず目を見開いた。


「まさか……シャナさんシュバルツにいるの……?」


「はい……」


「どうして……‼︎危険だわ‼︎」


「オリビア、少し待て……」


 シオンは声を荒げるオリビアに向かって手を翳し、こめかみを押さえた。


「…………その話の内容は?」


「分かりません……ただ――」


 ヘリーは恐る恐る顔を上げて、か細い声でぽつりと呟いた。


「…………ヨツヤ カズマ……」


「‼︎」


「護衛の者が……時の神様にこれを伝えろと……」


 シオンはその言葉を聞いて腰が抜けたように椅子に座ると、視線を泳がせる。


 そして、しばらく考え込んだ後、椅子にぐったりと凭れ掛かりオリビア達に声をかけた。


「すまない、会議は中止じゃ……一度そのシャナという者と話をする。スロウス、頼めるか?」


「いいよぉ。今どこら辺にいるのぉ?」


「あの……もういらっしゃっていて……」


「は?」




「なんだテメェら‼︎」


 ウイキョウの怒鳴り声が聞こえると、オリビアはハッとして窓に駆け寄り外を見た。


「ど、どうかお話を……」


 そこには威嚇するウイキョウに怯えるシャナ。そして――


「うるさい蜥蜴さんですわ」


「ヘデラちゃんといい勝負ですねー」


 異様な雰囲気を漂わせる2人の男女。

 片方はサングラスをかけた暗い藍色の長い髪を後ろで結った男。

 もう1人は扇子を揺らしながら微笑む明るい緑髪の女――オリビアは彼女の髪色に思わず耳を確認したが、自分のもののように長くはなかった。


 ウイキョウの低い唸り声に我に返ると、オリビアは慌てて窓を開けた。


「ウイキョウ少し待って‼︎」


 男はオリビアの方に顔を向けると、口端を吊り上げて笑った。

 かけているサングラスは光を一切反射せず、まるで深い穴がこちらを見つめているようで不気味だった。


「こんにちはー!トキツ シオンさんいらっしゃいますー?」


「‼︎」


 表情を強張らせるオリビアに、男は笑みを深めた。


「是非、お話を」


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