異世界冒険者
モコモコ…(もふもふって言うんだっけ?)なコタを抱っこして寝ていると、夜明け前に酔っ払った姉さんが乱入してきた。
「ちょっとマコ!宴会じゃあ遠慮してたのに、なにもふもふ独り占めしてんのよ!
私にももふもふ寄越しなさいよ!」
酒臭い息を吐きながら、時間も考えず絡んでくるなんて、女性のすることじゃないよ。
口に出すと長々と反論されるから黙っているけどね。
まだ寝足りないから、こんなに騒いでいるのに爆睡しているコタを素直に渡した。
二度寝して起きても、二人とも起きてこないので、日課の素振りをしていたら、近所のおじさんから収穫の手伝いの仕事の依頼を受けたので、依頼をこなして昼近く家に戻ると、姉さんの部屋からコタの叫び声が聞こえた。
二人とも今まで寝てたんだ……。
「マコちゃんひどいよ!
起きたら女の人の腕の中って……何かあったらどうするの!」
「あら、コタと間違いなんておきないから大丈夫よ。
私の好みに全くかすってもいないんだから。
それに子供を襲うなんて酷いことしないわよ」
「子供じゃないもん!
オイラマコちゃんよりちょっとお兄ちゃんなんだからね」
「お兄ちゃんねぇ……そんな事でムキになるのも子供だと思うわよ」
「ヒドイーーー!
このきょうだいヒドイーーーーー!」
地団駄を踏むコタの姿は子供でしかないけど、それを口にしないのも優しさだと思う。
「姉さん、コタをからかうのもいい加減にしときなよ。
それより朝からアーデムさんの依頼受けてきたよ。
はい、これ」
僕が報酬で受け取った銅貨を手渡してると、プリプリ怒っていたコタは、今度は興味津々でボクを見ている。
「依頼?マコちゃん朝からなにしてきたの?
魔物討伐?薬草採取?まさかのダンジョン?」
ワクワクした顔で聞いてくるコタに、畑の収穫の手伝いだと伝えたら、がっかりされた。
「えー、冒険者なら魔物討伐とか採取とか、魔物の素材とか、ダンジョンとか、護衛とか、色々あるじゃん。
畑の収穫とかって冒険者の仕事じゃないんじゃないの?」
コタは不満顔だけど、そんなこと言われても、だよ。
「あのねコタ、魔物なんて西の山脈の奥の方にいるとか言われてるけど、ただの噂だし、薬草採取なんて、女性や子供の仕事だし。
ダンジョン?ってわかんないし、護衛って兵士さんの仕事だし。
依頼されればなんでもするのが私達なの」
「えー、冒険者ギルドとかで仕事斡旋してないの?」
相変わらずコタの言うことの半分がわからない。
「ギルド?それもわからないわ。
コタの世界ではそんな機関があるの?」
「いや、オイラの世界ではないけれど、ファンタジー世界の常識だし」
「……ごめんなさい、コタの言うことって、分からないことだらけだわ」
コタは腕を組みうーんと悩みだした。
「冒険者ギルドに初めて行って絡まれるのって、オヤクソクの一つじゃん。
だいたい魔物が噂レベルとか、異世界なのにアリなの?
山脈越えないと他の国に行けないなら、護衛も必要ないのか?
ダンジョンも無い、魔物もいない、護衛も無い、採取もやらないの無い無い尽くし?
でもそれじゃあ冒険者って何するの?
これはあれか?
やっちゃんの叔父さんが探偵と言いつつ何でも屋さんだったのと同じパターンか?
この世界の冒険者って、田舎の探偵と同じ部類なのか?」
長々と独り言を言った後、うんうんと頷いている。
コタの中で折り合いがついたみたいだ。
しかしコタの世界の冒険者って、随分危険なことをしているんだな。
ちょっと面白そう。
ほら姉さんなんて、コタの世界の冒険者の話を聞きたいって顔しているよ。
*****
昼からは村の人達を交えて、昨夜言っていたきのこ狩りに行った。
勿論村長はこれも依頼としてくれたので、姉さんは張り切っている。
しかしコタは本当に詳しい。
見た目が同じようでも、ひっくり返したカサ?の裏側の差とか、クキ?の下の方のガラ?とかで、食べられるのものか、毒があるのかを見分けて教えてくれる。
鼻の良いハーフの人達には、匂いを教えてる。
食材が増える上に、きのこは美味しかったから、皆真剣だ。
沢山のきのこと、ついでに山菜を採り、村長の家へ行くと、喜んだ村長に頭を撫でられたコタは、恥ずかしまぎれにかタヌキ姿に戻ったせいで、村長の気がすむまでもふもふされていた。
タヌキになるともふられるってわかっているだろうに……。




