村長
姉さんが依頼品を届けに行っている間に、ボクはコタを村長の家へと連れて行くこととなった。
村長の家は、村で一番大きな家だ。
寄り合いやお祝い事などに使う大広間などもあるので、かなりの広さだ。
近くでよく見てみるとわかるのだけれど、村の住人が増えて、広間が手狭になる度に増築しているので、壁や屋根の色がグラデーションになっている。
商人などが村に訪れた時に泊まる場所も村長の家だ。
広さも部屋数も多いので、村長の家の掃除は村の子供の小遣い稼ぎの仕事になっている。
村では貨幣も使われているけれど、基本的に物々交換が一般的だ。
でも村長の家の掃除は、貨幣で貰える。
勿論一番下の【鉄貨】だけれど、子供達はその貨幣を貯めて、商人が来た時に珍しいお菓子や玩具を買う。
なぜ村では物々交換なのに、貨幣を渡すのかは、将来村を出て、町や王都に行った時に困らないようにと、村長の配慮だ。
大きな町や王都では、勿論物々交換などは無いそうなので、成人して村を出る予定の若者への報酬も貨幣となる。
ボクらへの依頼の報酬も貨幣だ。
村から出る気のない大人達からしたら、
「どのみち物を買うんだから、最初から交換の方が面倒がないじゃないか」
と言われる。
勿論ボクもそちらの方が面倒がなくて良いと思うけれど、姉さんの夢に付き合うと決めてからは、貨幣で貰うようにしている。
商人も、村から村を回る小規模な商人だと、よその村で仕入れた物を別の村へと持って行くのが基本なので、物々交換も歓迎される。
こちらから差し出す品が有っても、欲しい品が無い場合、貨幣を貰うくらいで、うちみたいな小さな村では、貨幣の価値は低い。
なので、村の人達からすれば、持ってても……な貨幣を処理できるので、ボクらの報酬が貨幣なのは喜ばれている。
村に定住している人だけではなく、出て行く者の事まで考えてくれている村長は、尊敬できる人だと思う。
そんな村長の元にコタを連れて行ったんだけれど…………。
*****
「ほう、なるほど、食べることのできる草花は多いんだな」
「あとね、たんぽぽはお茶にもなるんだよ。
たんぽぽってこう言う花」
そう言ってぽんっと軽い音とともに、コタの姿がよく見かける黄色い雑草に変わる。
「ほほう、お茶とは王都の人々が飲むと言う紅茶とは違うのかい?」
「うーん、紅茶って砂糖とか入れて飲むけど、お茶はそのままだから、違うのかな?
よくわかんないや」
「そうかそうか、よくわからんか。
しかしコタは変化が上手じゃのう」
「へへへへー、化け狸だから、これくらい朝飯前だよ」
「しかしまあ、あの山は食べ物の宝庫だったとはなぁ。
「山を降りる時に見かけただけでも結構有ったけど、きちんと探したらもっとあるはずだよ」
「それなら一度村の者も連れて山に行ってみるか。
どれが食べれるものか教えておくれ」
「仕方ないなぁ、一緒に行ってあげる」
「して、テンプラ?とオシタシ?の作り方も知っとるのか?」
「任せて!」
「おうおう、コタは頼もしいのお」
「えへへへへへへ」
タヌキになったコタを膝に乗せ撫でながら、デレデレした笑顔の村長は、いつもの優しくて思慮深く、頼りになる姿とは全く違う、孫に激甘なお爺ちゃんだった。




