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【連載版】ミドサー転生幼女は働きたくない~面倒事はお断りです~  作者: Na20
第一章 三歳の幼女

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番外編 四歳の誕生日

 

「「エステル。誕生日おめでとう」」


「ありがとうございます」



 この世界に転生して四年。私は今日、四歳になった。



「生まれた頃はあんなに小さかったのに、あっという間ね」



 母がしみじみと言う。



「そうだな。もう四歳なのかと思うと、とても感慨深いよ」



 父がうんうんと頷いている。



(私もそう思う)



 前世の記憶を持ったまま、この世界に生を受けた私。

 三十五歳(ミドサー)は最初相当混乱しましたよ。まさか赤ちゃんになるなんてと。

 働かなくていいのは最高に嬉しかったけど。

 ちゃんと赤ちゃんできるかは不安でしたよ。



(まぁ、なんとかなったけど)



 ミルクやおむつも案外抵抗はなかった。

 本能のままに生きることの素晴らしさを知りましたよ、ええ。


 そんなこんなで自由気ままに生きてきた四年。

 三歳の時はちょっと大変だったけど、私はこれからも自由気ままに生きていくつもりだ。



「でも本当にパーティーをしなくてよかったの?」



 母が問いかける。

 今は家族だけのささやかな誕生日パーティーの最中だ。

 目の前には私の好物ばかりが並んでいる。もちろんデザートは、料理長特製のバースデーケーキ。

 本当は貴族として盛大にパーティーを開くべきなのだろうが、私はこれくらいでいい。



「おとうさまとおかあさま、それにやしきのものにいわってもらえるだけでじゅうぶんです」



 わざわざ目立つことはしたくない。

 私はニコリと笑う。



「エステルは本当に謙虚だな」


「ええ、本当に」


(ごめんなさい。ただ面倒なだけです)



 そんな会話をしながらパーティーは進んでいく。

 しばらくして、私が待ち望んでいた話題が出てきた。



「そうだ、エステル。誕生日プレゼントは何がいいかい?」


(きた!)



 さすがシゴデキ父は、娘のことを分かっていらっしゃる。

 もちろんサプライズのプレゼントだって嬉しいよ?

 でも、私は自分でプレゼントを選びたい派なのだ。



(その方がお互いWin-Winだしね)



 話題が出なければそろそろ自分から切り出すつもりだったが、いいタイミングだ。



「なんでもいいんですか?」


「もちろん。なんでも好きなものを言いなさい」


(よし。言質は取った)



 きっと父はぬいぐるみやアクセサリーといった、子どもらしいプレゼントを想像しているだろう。

 だけど残念ながらそれは違う。

 私が望むもの。それは⋯⋯



「きょうだいがほしいです!」



 弟か妹。それが私の今一番欲しいもの。

 父と母を見る。驚いたのか、目を見開いてこちらを見ている。



(そりゃ驚くか)



 四歳児が突然そんなことを言い出すのだ。驚かないほうが無理だろう。

 しかし私は本当に、切実に弟妹が欲しい。

 理由は二つ。

 一つは子どもが好きだから。

 前世でも仕事で心が荒んでいた時、無邪気に笑う子どもを見ては、勝手に癒やされていた。



(もちろん不審者じゃないよ)



 前世、独身の社畜には手が届かなかった。

 だからこそ今世は愛でに愛でまくりたい。

 さすがに他人の子には憚られるが、弟妹なら問題ない。


 そしてもう一つの理由。

 それは今後の私の生活に大きく関係してくる。

 私の目標。それは働かずにのんびりゴロゴロな生活を送ること。

 けれど最近になって気づいてしまったのだ。



(このままだと私、公爵になっちゃう!)



 ファンタジー世界あるあるの、爵位を継ぐことができるのは男だけという決まりはこの国に存在しない。

 男でも女でも爵位を継ぐことができるし、長子だろうが末っ子だろうが関係ない。

 だからこのまま私以外に子どもがいなければ、必然的に私が爵位を継ぐことになってしまう。


 公爵。それは絶大な権力を得ることができる地位。

 望んでも簡単になれるものではない。



(でも私はいらない)



 忙しい父を見ていれば嫌でも分かる。

 爵位を継ぐということは権力を得る以外に、仕事と責任が付いてくるということ。


 仕事と責任。なんて恐ろしいのだろう。

 そのせいで前世の私は死んだ。

 だから絶対に爵位なんて継ぎたくない。



(今世は寿命をまっとうするんだから!)



 ただそのためには私以外の子どもが必要だ。

 私は期待を込めた眼差しで、両親を見る。

 父も母もまだまだ若い。ぜひとも頑張ってほしい。

 私の視線に気づいた父が母を見た。



(おっ)



 そして、父の視線に気づいた母が小さく頷いた。



(むふふ〜)



 仲がよろしいようで。これなら時間の問題だろう。

 ニヤけないように気をつけないと。

 そんなことを考えていると、父が口を開いた。



「あー⋯⋯エステル。実は黙っていたことがあるんだ」


「だまっていたこと?」



 どこか気まずそうな表情の父。



(はて?)



 私はコテンと首を傾げる。

 今、このタイミングで言う『黙っていたこと』とは一体なんだろうか。

 私が疑問に思っていると、父は突然立ち上がった。

 そして母の側に寄り添うと、母のお腹に手を当て言った。



「今、シャロンのお腹には赤ちゃんがいるんだ」


「⋯⋯ふぇ?」


「ふふっ、驚いたわよね?エステルはお姉さんになるの」


「おねえさん⋯⋯」



 おねえ、オネエ⋯⋯お姉さん!?



(なんですと!?)



 まさか、こんなにすぐにお姉さんになれるなんて。

 いい意味で予想外というか、とにかく驚きである。

 というか私、母が妊娠していることにまったく気づかなかった。



「おかあさま!おめでとうございます!」



 私に弟か妹ができる。その現実が素直に嬉しくて、ついいつもよりも大きい声になってしまう。



「ありがとう」


「その、たいちょうはだいじょうぶなのですか?」



 私自身に経験はないが、前世の友人曰く、つわりとは相当辛いらしい。

 症状も程度も人それぞれなのだが、友人は入院するレベルで、相当辛かったという話を聞かされた。

 まぁそれでも、赤ちゃんを幸せそうに抱いていたけれど。


 突然の報告は驚いたし、嬉しいと思った。

 でもその次に頭を過ったのは母への心配だった。



「エステルは本当に優しい子ね」



 そう言って母はふわりと微笑む。その微笑みは、まるで聖母のよう。



「体調は大丈夫よ。きっとこの子も優しいのね」


「ああ、そうだな」



 体調は大丈夫のようで安心した。



「いつうまれるのですか?」


「冬になる頃には生まれているはずよ」



 今の季節は初夏だ。どうやらあと半年ほどで生まれてくるらしい。



「たのしみです!」


(むふふ〜何して遊ぼうかな〜)



 まだ見ぬ天使に思いを馳せていると、父が何気なく言った。



「エステルもお姉さんになる準備をしないとな」


(たしかに)



 弟妹に慕われるような姉にならないと。



(でもお姉さんになる準備とは?)



 そもそもそんな準備はあるのかと疑問に思っていると、父の言葉に続いて母が言った。



「そうね。お姉さんになるんだから、もうお昼寝は卒業しましょうか」


「⋯⋯え?」


(お昼寝、卒業⋯⋯?)



 今、信じられない言葉が聞こえたような⋯⋯



「そうだな。ちょうど四歳になったことだし、お昼寝は卒業しよう」


 

(な、なんてこった⋯⋯)



 お昼寝は私の生きがいだ。

 四歳だろうと三十五歳だろうと、なくてはならないもの。

 それなのにお姉さんになるから卒業だなんて、あんまりだ。



「おとうさま、おかあさま⋯⋯」



 お願い。



(お昼寝とおやつは私の生きがいなの)



 そんな想いを込め、最上級に可愛い姿で二人を見る。

 しかし、現実は残酷だった。



「すぐになくすのは大変だろうから、赤ちゃんが生まれるまでに少しずつ減らしていきましょう」


「それがいいな」


 

 結果、私の最上級に可愛い姿は父と母には効果はなく、少し猶予が延びただけ。

 結局お昼寝卒業は決定事項となってしまった。



(こんなはずじゃなかったのに⋯⋯うぅ)



 四歳の誕生日。

 甘いはずのケーキは、少ししょっぱく感じた。


第一章は以上になります。

ただいまのんびり第二章執筆中です。

目処が立ち次第投稿を再開する予定ですが、しばらくお時間がかかると思いますので、一旦完結済みとさせていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします!

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