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第一話・輪廻の女神

僕の名前はアルフレイル・ミラルディア、3歳。前世の記憶を持つ転生者だ。

ここは、この世界で最も広大で人口も多く貿易も盛んに行われている、イルグランデ王国の南にあるミルヴェリオスという街。僕はその街を治める領主、ランベルト・フォース・ミラルディア伯爵の次男だ。

3歳のバースデーパーティで、招待されて来ていた子達と書庫で遊んでいて、「誰が1番早く書棚のてっぺんまで登れるか」そんな子どもらしい遊びをしていたが、足を滑らせてハシゴから落ちた。

なかなか目を覚まさず、両親や兄、使用人たちに心配をかけたようだが、1週間後に目を覚ましたとのことらしい。

僕は3歳までの記憶に加え、前世の記憶を持っている。

2度目の人生は前と違う世界なだけあって、ワクワクしているところだ。


♢♢♢


ㅡㅡ前世ㅡㅡ

「ごちそうさまでした」

そう言って皿とスプーンをカウンターの上に置きながら時計を見る。仕事に戻るのにはまだ時間がある。

「いつもの、いる?」

他の客の注文を聞き終えたこの店「Leaf cafe」のオーナー、佐久原ユキが人懐こい笑顔をこちらに向けた。

「お願いします。」

「はーい!ちょっと待ってね」

いつもの、とは、このカフェのテイクアウトコーヒーのことだ。

ランチを食べにきたらコーヒーを買って飲みながら会社に戻るのが日課になっている。3年も通えばオーナーも顔を覚えてくれて、いつの間にか名前も呼ばれるようになった。休日に一度、友達を連れてった時に会話の流れで知ったのだろう。

「京くん、またきてねー!」

注文したコーヒーを受け取り会計を済ませたら、ひらひらと手を振りながらあの笑顔で見送ってくれた。

「またきます」 

軽くお辞儀をして店を出た。昼食はいつも外で済ませている。弁当を作ってくれる人はいない。一人暮らしをはじめてから自炊をしているので、弁当も作れないわけではないし、料理も嫌いじゃないが、あの店でのランチが好きなのだ。オーナーと話せることも、店の味も好きだった。

「午後からの仕事もがんばるか。」と、横断歩道を踏み出した時だった。

「危ない!!」

近くを歩いていた人が叫んだ。

右を見ると目の前に、車がいた。


…「車がつっこんできたぞ!」…

…「人がとばされたぞ!」…

…「飲酒運転みたいよ」…

意識が遠のく中、会話が聞こえた。


眩しくて目が開かない。気付けば目をぎゅっと閉じていた。

「あれ?今車に突っ込まれたような。でも痛くない。僕はどうなった?」

目を閉じていても分かるほど周りが眩しく感じた。ゆっくりと目を開けてみると、真っ白な空間にいた。

「キョウ」

後ろから声が聞こえた。名前を呼ばれた方へ振り向くとそこには白い衣を着て羽根を背中に付けた美しい女の人がいた。

「…どちらさまでしょう?」

だれかは知らないが、僕の名前をしっている。しかも羽根をつけて…いや、生えている?

周りを見渡しても、僕とこの人以外誰も見当たらない。痛いところがないか自分の体を触ろうとしても触れない、不思議な感覚だ。

「私は、女神と呼ばれる存在。そして、キミはあの世界で死んでしまったから、キミの魂を私が呼んだの。」

「やっぱり…僕死んだのか。」

「やけに冷静ね」自分を女神と言ったその人は呆れたように笑った。

「いや、なんかこんな状況、漫画で見たような気がして。」

「ここにキミを呼んだのは、私がキミをずっと見ていて、キミの人格が好きだったからよ。だから、いつかキミが死んでしまったら転生させてあげようと思って。」満面の笑みだ。

「女神様なのにめちゃくちゃ個人的な理由ですね。」

「あら、女神だって好き嫌いはあるのよ。」

「それで、転生って?やっぱ異世界転生ってやつですか?」

「そうね。キミがその人格を保ち続けてくれる限り、スキル『転生』をつけてあげる。次の人生が終わってもまた転生できるっていう特別なスキルよ。ただし、条件があるわ。1つ、今言ったように、前の人格を持ち続けること。2つ、どんな転生先でも自分で命を絶たないこと。3つ、このことは他言しないこと。守ってくれれば、前世の知識や記憶、それにキミが望んだ能力を引き継がせてあげる。最初に付ける能力は好きなの選んでいいわよ。」

「ははっ、それものすごくチートですね。」

そういって、少し悩んで理想とするスキルを女神に伝える。

「あと加護もつけてあげるわ。」

楽しそうに話を進めている。

ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

「死んだらみんな転生されるんですか?」

あの世界で亡くなってしまう人は俺だけではないはず。病気や事故に遭って亡くなってしまう人や俺みたいに事件に巻き込まれる人だっているだろう。なのにここには、俺しかいない。

「全ての人がこうなるわけじゃないわ。さっきも言ったように、私がキミの人格を好ましく思うからよ。」

「あ、ありがとうございます」

人格って、どこがそんなに気に入ってもらえたのだろう?普通に生きて、仕事してきただけだし。なにか女神様には目的があるのか?首をかしげて考えていると、女神様が話を続けた。

「さて、キミはこれから大変な人生を歩むかもしれないし、楽しい人生かもしれない。でも精一杯生きてね。見守ってるわ。」

「あ!まだ聞きたいことがっ…」

手を振っている女神様の姿は白い光に溶けるように消えていった。




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