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専属魔女は王子と共に  作者: ちゃろっこ
掴み取った未来の果てに
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「………え?」


呆然とした顔で青年が固まった。

そんな青年の顔をイザベラはじっと覗き込んだ。


「あんたの全部引っ括めて好きですよ。

女々しい所も、意地っ張りで見栄張りな所も、ヘタレな所も、面倒臭い所も全部。

全部受け入れられる位あんたが好きです。

だから私が幸せにしてやります。

私があんたの事を一生かけて幸せにしますから、あんたは私に一生を預けて下さい。

何だったら来世も幸せにしてやります」


相手が300年拗らせたと言うならば、こちらだって言い逃げされたまま300年経ったのだ。

拗らせ具合ならきっと負けてない。


「…それ位、私はあなたが好きです。

会いたくて、見付けて欲しくてあんな分厚い本を書いてしまう位にはあなたが好きです。

生まれ変わっても共に歩みたいと思える位にはあなたが好きです。

…だから結婚して下さい」


イザベラが言い切ると、青年の瞳からボロボロと涙が溢れた。

先程王妃様に借りたハンカチを手渡しながらイザベラは言葉を続ける。


「…返事は?

私はイエスですが。

……300年越しになってすいませんでした」


「ーーーっ」


今度は逆になってしまった。

青年は俯いてしまい、返事を貰えない。

嗚咽の音が響く中、イザベラは彼の頭を軽く撫でた。


「とりあえず聞きたいんすけど…今世の名前ってなんですか?

私夫の名前を知らない事になるんですが」


「………あっ本当だ」


名前聞くの忘れてた…と呟く青年にイザベラは今度こそ吹き出した。

名前も知らない相手にプロポーズなどどんな奇特な状況なんだろうかと。


「…とりあえず私はイザベラです。

まあフィーって呼んでくれていいっすけど」


「私はルイス・ジュゼット。

今世もまた第三王子だよ。

旅人兼農家に転職予定だけど」


「奇遇ですね。

私もです」


互いに吹き出しケラケラと笑ってしまう。

無性に嬉しくて、どこまでも幸せだった。


「あっでも」


「ん?」


「私今世一応貴族の端くれなんで親が転職を許可してくれるかなあと」


「フィーが貴族としての義務を気にしてる…?!」


「なんすか」


「いや普通に驚くでしょ。

凄いねフィー。

成長したね」


「…ありがとうございます?」


あんま褒められてなくね?と思いながら首を傾げるイザベラにルイスはくすりと笑う。

やはり褒めてはいなかったのだろう。

失礼な話である。


「…あっあれっす」


「ん?」


「封印の儀の褒賞って貰えないんすかね?

あれ使えば転職出来そうな気もするんすけど」


「…まずはフィーが生まれ変わりだって証明する事からかな。

でも300年越しに褒賞貰いに来た前例がないから難しいと思うよ」


「ちっ。

融通が効かないですね。

これだからお役所仕事は駄目なんすよ」


「生まれ変わりって奇跡を起こしてまで褒賞をせびりに行く人もまあまあ奇特だけどね。

まあ大丈夫だよ。

私が何とかするから」


「まじすか」


「今世も私は既に結婚を諦められてるからね。

結婚となれば大概の事は譲歩して貰えるから」


「さすがやりますね」


「良い事では決してないけどね」


ルイスは苦笑を浮かべながらイザベラの手を取った。

土で汚れたその手を胸元から取り出したハンカチで拭う。


「あっそうだ」


「ん?」


「封印の儀の褒賞。

ルイス様も一緒に貰いに行きましょうよ。

そしたらちょっとは信用度上がりそうじゃないすか?」


「あー…ごめん。

私は目が覚めたらもう叶ってたよ」


「そうなんすか?」


「ん。

私は最初に伝えてたからね。

…アイザック兄上が叶えてくれた」


これを見てとルイスが手を引き慰霊碑の傍らに設置された石碑を指差した。

石碑に刻まれた文字を見て、イザベラは目尻を下げる。



『彼らの功績を讃え、「魔術師差別解消法」を成立し後世に苦しみを残さぬ様ここに刻む』



ルイスがその文字を嬉しそうに指でなぞった。

これが私の願いだったんだと呟きながら。


その願いはまた後世に繋がっていくのだろう。

それを引き継ぐ誰かの手によって。




後世で彼らの名を知る人はいないだろう。

教科書に残っているのは『悲劇の12代目勇者御一行』と言う文字列だけに過ぎない。

歴史上唯一全滅した不運の代だと記述を添えて。


だがそれで良いのだと思う。

ただの過去の数多ある事象の1つとして長い歴史の中に埋もれてしまったとしても。

彼らの死戦を誰も知らなかったとしても。

残ったのが『全滅』の文字だけだったとしても。


そこには繋がれた未来が確かにあるのだから。

皆が守り通した未来が確かにあるのだから。



この先も国が、人が幸福であってくれたなら。

この先も国が、人がずっと先まで続いてくれるなら。



それこそが何よりも守りたかった物なのだから。

それだけで、生きた意味があったと思えるのだから。

生命を賭けて良かったとそう思えるのだから。



そして信じたいと思うのだ。



彼等が守ったこの国の行く末を。

幸せな未来になる事を。

繋いだ未来の先で紡がれる世界がずっと続いて行く事を。

彼等が託した人々が繋いでくれる事を。




「さっ行こうかフィー」


「……はい」




それだけを願い、もう少しだけこの国と共に歩いて行こう。


ーー今世もまた、この王子の隣で。



[完]

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― 新着の感想 ―
[一言] かなりギャグ部分では笑わせて頂きました。戦闘部分になると主人公達の思いにぐっときましたし、登場人物というより、何だか作者様の心の叫びの様にも感じました。勇者一行全滅という他の作品に類を見ない…
[一言] かなりツボで最高でした! 面白くってケラケラしながら読んでたのに、最後はポロポロ泣きながら読んでしまいました!! 素敵な作品ありがとうございました!
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