第二十六話 二人のメンバー
結城君達と合流し、町に生還した。道中でテコのじいさんが自ら結城君に謝ったのは驚きだった。
「その顔だと…うまくいったようだな。ところで…そこのご老人と少年は誰だ?」
町長がご機嫌で出迎えてくれた。それでこの二人は…魔法使いのテコと、“勇者”こと弘瀬成木。この町に魔王討伐のメンバーが来るらしいのでここに来たらしいです。
「あなた方が例の…メンバーが二人来てますよ。呼んできますね。」
町長が“魔王討伐のメンバー”を呼びに行った、弘瀬君は“グラ”を自分が一人で倒したって町の人達に吹聴している、確かにトドメを刺したのは君だけどさ、そこまで追い詰めたのは僕達じゃないか、それに君のせいで情報を聞き出せなかったし。
「連れてきましたよ。」
町長より巨体の男と、少し小柄な男が連れられてきた。
「僕はイラ。」
「俺はアントニー、よろしく。」
大きい方がアントニーさん、小さい方がイラさんね。
「君が…勇者?」
ああそうだ、とイラ君の問いに弘瀬君は頷く。
「勇者としての力が見たい、お手合わせ願いたいり」
いいよ、と弘瀬君は即答した。やけに自信満々だな“勇者”さん。
剣を鞘から抜きイラに斬りかかるものの、同然のように回避される。続いて2.3発魔法で攻撃するが、それも難なく避けられた。
「本当に勇者なの?もっと本気で来いよ!」
連続で攻撃しているが一発も当たっていない。イラ君が呆れた表情で、筆を取り出し筆から弘瀬の腹部に光線を撃ち込んだ。
「おいアントニー、お前の言ってた“勇者”ってこの程度だったのか?」
アントニーは無言で俯いている。苦悶の表情でイラ君を睨んでいる弘瀬、意識が離れたらしく、慌ててテコのじいさんが駆け寄った。
「悪いアントニー、魔王討伐のメンバーのことだがキャンセルさせて貰うよ、“勇者”がこんなんじゃ先が見えてる。」
勝手にしろ、と言いたげな顔で巨大な男がイラを見る。“勇者”さん、仲間になる予定の人に失望されてどうするのよ。
魔王を倒す具体的なプランが無いし、イラ達とも交流したいし少しこの町に残ってもらうか。
宿の料金は…自腹にするか。
~to be continued~




