お出かけ2
だいぶ時間が空いてしまいましたが続きです。
「じゃーん!」
「・・・・それを着ろと?」
土曜日の朝一番、僕の部屋に入ってきた実里は両手に服を抱えていた。見ると、肩のあたりが空いている水色のトップスと、白のミニスカートだった。要するに、女物。ちなみにほかにも茶色のブーツやらちちゃいカバンを持っていた。
「可愛いでしょ!」
「そんな話してないだろ!なんで女物なの!?」
「え?逆になんで?お姉ちゃんの見た目を考えたらこれぐらいがちょうどいいって。」
「どこが!?もしそうだとしても絶対に着ない!」
これを着てしまったら男として大切な何かを失ってしまいそうな気がする。
「せっかく選んだのに・・・。」
珍しく実里が落ち込んでいる。
「あ、いや・・・。」
「まあ・・・そうだよね。私が選んだ服なんて・・・着たくないよね?ごめんね?」
「い、いや、そんなことはないぞ!」
しどろもどろになりながらも言葉を紡ぐ。普段明るく笑っている実里からは想像できないほどの落ち込みようだ。
「こんな服・・・嫌・・・だよね?・・・」
「そ、そんなことない!すっごい着たい!ありがとな美里!」
そう言った瞬間、今までうつむいていた実里が顔を上げた。その顔は、いたずらをやってのけた子供のような表情だった。しまったと思ったときには既に遅かった。
「着たいんだ~?おねえちゃんやっぱり着たいんだ。いいよ~。使って!」
実里が持っている服を差し出してくる。そう、僕は騙されたのだ。
「ぐ・・・。」
「着たいんでしょ?なんなら着せてあげるよ?」
そう言って実里は僕の服を脱がそうとしてくる。朝早く、まだ着替えていなかったため、寝巻きのままで、すぐに脱げそうになる。それを手で押さえ抵抗する。
「ちょ、待って!分かったから!着るから!手を離して!」
「よいではないかよいではないか。」
「なんだよその悪代官みたいなセリフ・・・。いいから出てけ!」
「はいはい。着替えたら教えてね?」
「くっ・・・。」
実里が部屋の外に出るのを見届けるとはぁ、とため息をついた。
「これを着るのか・・・。」
手には実里がドロップした装備品が残っている。おそらくこれを着ればステータスが上昇する代わりに精神的ダメージを受けるのだろう。鏡を前にしてまたため息をついた。
「着替えた~?」
ドアの外から実里が呼んでいる。まだと答えるが、これから着るかはわからない。ってか着たくない!
「お姉ちゃん、ちゃんと着てね・・・・?」
どうやらコイツはエスパーなようだ。もはや選択肢は残されていない。僕は覚悟を決めて鏡と向かいあった。
「・・・・。」
着てみた。よし、脱ごう。こんな姿を誰かに見られでもしたら末代までの恥だ。っていうか妙ににあってるのがすごく悲しい。
「お姉ちゃ~ん。そろそろ着替えたでしょ~?入るよー。」
そう言って入ってくる実里。僕の姿を見て目を丸くする。
「笑いたきゃ笑えよ・・・。」
「・・・い。」
「?」
「かわいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
ガバッと美里が抱きついてきた。
「な、何やってるんだよ!」
自分でも自分の顔が赤くなっているのがわかる。そりゃ誰だって妹だとしても女子に抱きついてこられたらこうなるでしょ。え、ならない?
「だって、想像してたよりもずっと可愛いんだもん!いや~さすがお姉ちゃんだね!」
「ぜんっぜん嬉しくないんだけど!」
「これでよの男どもをノックアウトしてきなよ!」
「するわけないだろ!」
今日はこんな服装で出かけるのか・・・。うう・・・。
―――――
集合時刻の30分前には集合場所にいる。というのが僕のポリシーだ。やっぱり人を待たせるのは良くないからね。それなら自分が待つほうがよっぽどいい。と、いうわけで僕は既に駅前に到着している。時刻は9時32分。あと28分で集合時間だ。
っていうかさっきからすっごい気になってるんだけど、めちゃくちゃ見られてる。周りからの視線がすごい。まだまだ朝早いせいか人は少ないけど、いる人のほとんどは、僕のことを二度見するか、じっと見ている。やっぱりこの格好が変なのかな・・・。やっぱり女物の服なんて来てくるんじゃなかった・・・。
「はぁ・・・・。」
最近なんだかため息増えてるなあ。今日だけで既に3回目だ。やっぱり女の子はストレスを感じやすいのかー。そんなことを考えていると急にあたりが暗くなった気がした。少し驚いて顔を上げると、髪を金色に染め、耳やら口やらに金属の輪っか、もといピアスをつけたいわゆるチャラ男が僕を見ていた。
「かーのじょっ!可愛いね!俺と遊ばない?」
「え、はぁ・・・?」
全く自体が飲み込めないんだが、これはもしかして、いや、もしかしなくてもナンパっていうやつではないか?なんつって、んなわけないか。男の僕に男がナンパしてくるとか、笑えないし。
「今暇でしょ?遊ぼうよ!俺いいとこ知ってるんだよね~」
もしこれが本当にナンパだとしたら、こんな典型的なやつってあるんだな。それに時間も考えろよ。いま朝だぞ。朝っぱらから盛ってんじゃねーよ。
「すいません、人を待ってるんで。」
「えー彼氏ー?」
「いえ、女の友達です。ですのでお引き取りください。」
「いいじゃんいいじゃん!みんなで一緒に遊ぼうよ!ぷれいうぃずみー!」
そう言って男は僕の腕を掴んできた。結構強い力で掴まれたのか、左腕に痛みが走る。
「っ・・・やめてください!」
「いいじゃんあそぼうよ~。なんならいいこと教えてあげるよ?」
男は不敵な笑みを浮かべる。それと同時に僕の左腕を掴む力も強くなる。振りほどこうともがくが男はさらに強く握ってきた。痛みに耐えようと目を瞑ると、すぐに手が離れた。
「あんた何やってんだ?」
聞き覚えのない声がする。男の声だ。恐る恐る目を開けると背の高い茶髪の男が僕とチャラ男の間に入り、チャラ男の腕を掴んでいる。
「くっそ、何だお前!いて、いてててててて!」
「二度とこの子に近づくな。」
そう言って茶髪くんはチャラ男を離す。チャラ男は一目散に逃げていった。あれ、そういえばこの茶髪くん、どこかで見たことあるような・・・。
「三島くん・・・・?」
そう言った瞬間目の前の茶髪くんがびくっと体を震わせる。この間仁と一緒に弁当食べてたような気がするんだけども、たしかあの時女嫌いって言ってなかったっけ?
「お~い!たけ~!急にどうしたんだよー!」
人ごみの中から仁が叫びながら姿を現す。たけって誰だ?あ、たしか名前丈朗だっけ?助けてもらったし覚えておかなきゃ。
「ってうぉ!優じゃん。何してんだお前ら?」
「えっと、三島くん?が僕がナンパされてるところを助けてくれたんだ。」
自分でナンパされたとか言うのめちゃくちゃ恥ずかしいな!
「そうなのか!何かされてないか?大丈夫か?」
「うん、三島くんが助けてくれたから。」
「あーそれで急に飛び出していったのか。」
「でも、三島君って女の子嫌いなんじゃなかったっけ?」
「確かに。よく助けに行こうと思ったな。」
二人で三島の方を見る。三島と目が合うが、そらされてしまった。
「いや・・・困ってたからつい・・・。」
三島はそう答えた。なんだろう。かっこいいとかそういうことを思わなきゃいけないんだろうけど、僕は何故か可愛いと思ってしまった。
「お前可愛いって・・・・。」
仁がドン引きしている。
「え!なんで考えてたことわかったの!?」
「いや、口に出てたからな!?」
「なんだって!?この人ストーカーです!私のこと何でも知ってます!」
そう言って僕は仁を指差す。周りの人はなんだなんだとこっちを見てくる。
「ばっ・・・ここでそういうのは本当にまずいって!だいたいなんでそうなるんだよ!」
仁は指差す僕の腕を掴む。今日は僕の腕をものすごく掴まれるきがする。そしてまたもやその手はすぐに別人によって解かれた。
「何朝っぱらから盛ってんだこのクズ男おおおおおおおお!」
乱入してきたのは萌花ちゃんだった。僕の腕を掴んでいた仁に飛び蹴りを食らわせる。
「ゆうさん大丈夫ですか!?」
遅れて葵ちゃんもやって来る。
「痛てててて・・・。何すんだよ!」
起き上がり叫ぶ仁。
「あれ、高橋くんだったの?ってそっちは三島くんか。なんで二人で優をナンパしてたの?」
「しとらんわ!たけが優がナンパされてるとこ助けたんだよ。」
な、と仁が三島を見ると、三島は頷いた。
「なんだそうだったのかー!てっきり優に虫けらがたかってるのかと思ったよ!」
「お前ひどいな・・・。」
ドン引きする仁。
「ってそれより、集まったんだし行かない?」
僕は萌花ちゃんと葵ちゃんに提案する。
「そうですね。あ、高橋さんと三島もご一緒にいかがですか?これからデパートに買い物に行こうと思っているのですが・・・。」
葵ちゃんが二人に言う。ところが仁は首を振る。
「誘いは嬉しいけど遠慮しとくよ。ちょっと・・・色々とあってな。」
何故か目が泳いでいる仁。一体何があるのか・・・。ちょっと気になったのでまたいつか聞いてみよう。
「そうですか。それではまたの機会に。」
「おう。」
そう言って僕らは別れた。歩いていく仁達を見送ると、僕たちも移動を始めた。
さて、ついの更新はいつ出来ることやら・・・・。




