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私、桜小町はアンドロイドです。  作者: 山本 宙
4章~新たな刺客β型に対抗すべく、更なるサファイア改造を~
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38話『過去を恨むのは自由です。』

 部屋にいきなり入ってきたα-桜小町に動揺を隠しきれないユミエは近くにあったコーヒーカップを投げつけた。


コーヒーカップはα-桜小町の所に向かって真っすぐ飛んでくる。


α-桜小町は手で顔を覆って防ごうとした。


コーヒーカップはα-桜小町の肘に当たり、地面に落ちて真っ二つに割れた。


「どうしてアンドロイドをこの中に入れた!すぐに出ていけ!」


罵声を飛ばすユミエは興奮冷めやらぬ状態となっていた。


「何立ち止まっている!誰かの指示で中に入ってきたのだろう!お前の顔なんぞ見たくないのだ!」


怒りの沸点を通り越して、叫び声が部屋に響き渡る。


何事かと思って博士と麗奈が部屋の方に駆け付けた。


「α-桜小町が勝手に部屋に・・・」


どうすることもできないこの状況に鈴音は困惑した。


「勝手に入ってごめんなさい。私はあなたとお話がしたいの。アンドロイドであるからと言って拒絶するあなたが可哀そうに思えたのよ」


「無礼な!私にとってアンドロイドは全て同じ。大嫌いな人形なのよ!あなたも操り人形にしてやるわ!」


「私はあなたの考えが大っ嫌い」


α-桜小町の突然の言葉にユミエが静まる。


「今さっきあなた・・・大っ嫌いって言った?」


「えぇ、そうよ。あなたの過去に何があったのかは知らないわ。過去を恨むのは自由よ。だけどね、私には全く関係のない話だから、ここにいるA-ジョッシュ、α-権蔵さん、α-真子姫、α-ショコラだって関係ないことよ。それなのにあなたは会って話をすることすらしない。勝手すぎるのよ。アンドロイドを一くくりにする考えが大っ嫌いだし、とても憎いわ」


「大っ嫌いとか・・・偉そうに知ったふりをして本当にバカね」


ユミエは立ち上がってゆっくりとα-桜小町の近くに歩み寄る。


「スパイプラグを打ち付けようとしているのか?」


α-権蔵が警戒してユミエとα-桜小町の間に入ろうとした。


「α-権蔵さん、待って・・・」


ユミエは真っ二つに割れたコーヒーカップを拾い上げてテーブルの上に置いた。


「博士、ごめんなさい。コーヒーカップ割れちゃったみたい」


そのままユミエはα-桜小町の肘に目線を向けた。


「少し切ったみたいね。興奮して済まないわ。私が常に持っている絆創膏よ。これを貼って止液しなさい。故障する前にね」


急に優しくなるユミエに周りは変な空気となっていた。


「α-桜小町ちゃんだっけ?今度ゆっくり話しましょう。今日は部屋から出て行って。少し私も考えを改めてみるわ」


反省しているようにも思える言葉に皆は驚きを隠せない。


α-桜小町は笑顔で答えた。


「ありがとう、ユミエさん。またこの部屋にお邪魔します」


そう言い残して、ユミエを背にゆっくりと扉を閉めた。


「やっべー、いきなり何しているんですか。ユミエに何されるかわからかっただろう」


「α-桜小町ちゃんの身に何かあったらどうするのですか」


皆が心配した目で話しかける。


「私から行動しないと、ユミエさんの考えは変わらない。話をしないと今のままずっと、ユミエさんはアンドロイドを嫌う人間のままよ。大ちゃん、わかって」


鈴音は頭をかきむしって気を紛らせた。


「考えはわかるけど、危ないって」


「ごめんなさい・・・」


「でも、ユミエの気持ちが少し変わった気がするな。α-桜小町の行動で心の変化があらわれているのかも・・・」


「そうなってくれれば良いのだけど・・・」


扉の向こうにはユミエがいる。

マリオネットとサファイア=ファミリアの和解を実現させたいのは

皆の意見となっていた。


ユミエはただの人間だ。

マリオネットの頂上に立つ者が、すべてを背負っている。

田邊・・・・。


田邊と鈴音が話し合ってこの戦いを終わらせたい。


鈴音は田邊と会って話をする決心をした。


このような無駄な戦いは、犠牲を生むだけに違いない。

とにかく田邊と話をして、終わらせないといけない。


それはユミエの為でもある・・・。


「右近博士、マリオネットの動きはどうなっていますか?」


しばらく世間はマリオネットの動向で騒ぎを見せていない。

マリオネットは大きな事件を起こして以降、何もしていないように思える。


動向を知る右近博士から何の指令もない為、

鈴音から問いかけた。


「マリオネットも沈黙状態のままだよ。何を企んでいるのかわからないが、ユミエがいないのは大きいかもしれないな」


ユミエはマリオネットにとって司令塔である。

マリオネットには司令塔が3人いる。


ユミエと鮫沖と田邊だ。


指令チップを脳に埋め込んでいる人間はその3人となる。



「じきにマリオネットからユミエを取り返しに来るかもしれないな・・・」


右近博士はユミエを取り押さえていることに恐怖を感じていた。


この研究室もいずれマリオネットに場所を特定されるに違いない。



マリオネットのアンドロイドの探索能力も

高いであろうと模索していた。


「鈴音君、この研究室もそのうち相手に見つかってしまう。どうにかこの状況を打開してくれ。α-桜小町ちゃんがおこなったことは単に間違いではないかもしれないな」


鈴音は想いを馳せて次の行動を考えるのであった。



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