秘技!瞬光殺・六連斬
「無限収集箱!!」
ホークスが、理想の力 無限収集箱により空中に現れた小型ブラックホールから新たに刀を取り出して、先ほど砕けた小刀の代わりに左手に装備した。
長刀の二刀流である。
一見不合理そうでは有るが、いざ二刀を構えられると凄まじい圧を感じる。
間違いない。
間違い無く今からホークスは必殺の斬撃を放つつもりなのだろう。
いくらエスブリッジでは切られても光る粒子が漏れるだけとはいえ、それはエフェクトが違う、、、と言うか見た目が違うだけで実際は切られたダメージは受けるみたいだし、命懸けなのには変わりは無いのだから・・・などと考えていると、やはり凄まじい緊張感が俺を襲う。
ホークスが先程よりさらに前屈みに体重を乗せた様に見えた瞬間、気?オーラ?の様なものが一気に膨れ上がった。
・・・来るっ!
刹那、ホークスの体が俺の視界から完全に消えた。
今度は全く視認する事が出来ない。
ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!ズバッ!!
次の瞬間、俺の体中を凄まじい衝撃が襲った。
「秘技、瞬光殺・六連斬。」
俺の遥か後方でホークスの声がする。
恐らく俺の【世界最強の力】が宿った目にすら映らないほどの超高速で間合いを詰め、俺の脇を通り過ぎる際に六連撃を放ち、反撃の届かない程離れた後方まで走り抜けたのだろう。
「うおっ!?」
身体の切られた辺りから光の粒子が溢れる。
しかし・・・
違和感を覚えた。
確かに衝撃は受けたが、痛みを感じないのだ。
いや、正確にはシッペを喰らった位の痛みは有るのだが、とても刀で切られたとは思え無い。
すると、後方で
パリーン!パリーン!
と言う高らかな音が響き渡る。
「うおぅ?マジかよ?」
見るとホークスの両手の刀が砕け散っている。
「おいおい、反則だろ。さっき蹴りで小刀砕いたのも酷いけど、斬ったら逆にこっちの刀が砕けるとか・・・お前さんの身体、どんだけチート級の硬さなんだよ。」
マジか?
いや驚いたのはこっちも同じだよ。
俺の身体の周りの光の粒子は、どうやら俺が切られて吹き出したものでは無く、砕け散ったホークスの刀の破片が散っていたモノだったらしい。
「ん?あれ?」
自分の身体の頑丈さにもビックリしたが、それと同時にとある感覚が芽生えた。
「何と無く出来る気がする。」
先のアール先生とのバトルでジョーカーが自分の力の使い方を直ぐに理解したのもこんな感覚だったんじゃなかろうか。
「今度はこちらから行きますよ。」
俺は先ほどホークスが見せた構えと全く同じポーズをとる。
すると身体の周りにオーラの様なものが溢れ出した。
「うお!?冗談だろ?」
ホークスが仰天した様な表情で呟いた。
俺は足先に力を込め、前方に向かうべく一気に踏み抜いた。
バシュン!!
ホークスの視界から俺が搔き消える。
ズバッ!ズバッ!
見よう見まねだが何とか体裁は取れたか?
二回ほどしか斬りつけられなかったけれど・・・。
「秘技、瞬光殺・・・残念ながら二連斬・・・です。」
手応えがあった。
恐らくホークスの身体の二箇所から光の粒子が溢れているだろう。
早くヤツの手持ちのポーションをかけて直さなければ人殺しになりかねない。
慌てて振り返ると、何とホークスは切り傷一つ負っておらずピンピンしていた。
「あれ?」
間抜けな声を出した俺にホークスが解説を始める。
「へへっ、不思議だろ?実はこれも俺の理想の力の一つなんだぜ。」
アール先生もそうだが、理想の力は複数付与されるケースも有るらしい。
「【斬撃無効】。俺にはありとあらゆる斬撃が効かないのさ。刃物では俺を切ることはおろか、ダメージも一切与える事は出来ない。」
「・・・は?何ですかその能力!?」
「日本にいた頃コレクションで手を切って怪我をした事が有ってな。その時の記憶が、この理想の力の根底になってるみたいだな。」
成る程。
俺が言えた事じゃないけれど、【理想の力】ってのはどれもこれも反則級に規格外みたいだ。
「しかし大したもんだな。二連だったとはいえ初見で、しかも一刀のみで瞬光殺をやってみせるとはなぁ。」
二刀だったとしても六連はまだ無理だろうなー。
しかし、斬撃無効かぁ・・・うん?まてよ、だったら・・・。
「もう一丁行きますよ。」
俺は再び先程のホークスが見せた構えを取る。
身体の周りからオーラが迸った。
「おりょ?・・・何度やっても無駄だぜ?俺に斬撃は効かないからさ〜。」
少し呆れ声のホークスを無視して、俺は地面を踏み抜く。
その際に手に持っていた刀が地面に溢れ落ちる。
・・・いや、わざと落としたのだ。
そして刀では無く拳をホークスに叩きつけた。
ズガガガガガッ!!!
「秘技、瞬光殺・六連打。」
斬撃が無効化されならば打撃を与えれば良い。
しかも素手ならば刀の斬撃よりも数倍速く正確に攻撃が行える。
「ぐあっ!」
ホークスが腹を抱き抱えながら地面に崩れ落ちた。




