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第7話 奴隷

本日3話目

 



「奴隷はいる?」

「はぁ、奴隷ですか。いますが……」

「お、いるんだ?」

「奴隷が欲しいなら、難しいと思いますよ?」

「え、何故?」

「御主人様は奴隷制度に反対ですからね……」


 なんと、そんな考えをしている人が家族にいるのでは、奴隷を買うのは不可能じゃないか!?


「なんで、奴隷制度に反対なんだ? この世界は魔物がいる。働き手が沢山必要しているはず。なのに、父親は反対するの?」

「うーん、お嬢様みたいに奴隷のことを働き手だと思わない人が多すぎるのが原因かと」

「まさか、人とは思わず道具として使われていると?」

「そうですね。奴隷は魔物と戦う冒険者や騎士よりも死亡率が高いから、人として扱われていない可能性が高いかと」

「まさか、この世界の人は馬鹿なのか……。気性が優しい父親が反対するのもわかるかも……」


 リリィは自分が生き残るためなら、両親を殺す覚悟をしているが、仲間になった人には優しくするモットーである。イーナのことを使えるか? と考えることがあっても、仲間になったからには、捨て駒にするつもりは全く無い。奴隷でも同じだ。


「私の目的に賛同するなら、奴隷でなくてもいいけど、少数なのは間違いないんだよね……」

「私は目的を聞かされてはいないけどね……、まぁヤバいことをやろうとしていることだけはわかるわ」

「でも、着いてくるでしょう?」

「そうね。お嬢様が何か楽しそうなことをしようとしているし、私も何処か壊れているかもね」

「私も壊れているかもね。ただ、破滅だけは受け入られないわね」


 破滅を回避するために、最悪なことでもやり遂げる覚悟だ。

 取り敢えず、やり遂げるには力が必要だ。


「どうする……、奴隷が欲しいと父親に言っても反対されるのはわかりきっているし、何の為と聞かれたら答えられないし……うーん」

「そういえば、どうして奴隷が欲しいの?」

「父親に勝てるように育てたい。それに、奴隷は裏切れないから」

「あー、私では御主人様には勝てないですね。だから、奴隷が欲しかったのもわかるかも……あ、でしたらこの方法はどうですか?」


 イーナの案を聞き、それだっ!! と思った。






「何? 同世代の執事が欲しいだと?」

「はい。お付き人はイーナがいますが、もし、男の手が必要になる事があるかもしれません。同世代がいい理由は、その方が安心出来るからです。父親も大人の男性をお付き人にするよりはマシでしょう?」

「ふむ……、それはわかったが、同世代の子供を探すのは難しいぞ?」

「あら、イーナからは孤児院にいる孤児を引き取ることが出来ると聞いたことがあります。養子にして、一緒に過ごすのも良いかと思いますが?」

「あるには、あるが……そんな簡単なことではない。まず、孤児院から引き取るのは、殆どは子供がいない親や子供が出来ず、後継がいない場合。私達はリリィがいるし、もしかしたら後から子が生まれるかもしれない。なのに、執事の仕事をやらせる為に引き取りたいと言う理由は無理だ」

「そうですよね……、子供を働かせる為に引き取るのは駄目ですね」

「わかってくれたかーーーー」

「あっ、でしたら、奴隷なら問題はありませんね?」


 奴隷と聞き、眉がピクッと動くのがわかったが、感情に任せて怒鳴ることはなかった。奴隷制度が嫌いだといえ、自分の子供に怒りをぶつけることはなかった。といえ、心情は最悪だろう。


「奴隷……、それもイーナに聞いたのか?」

「いえ、母親に聞きましたわ」

「クリスか……」


 もちろん、奴隷のことはイーナから聞いたのが先だったが、ここに来る前に母親へ奴隷のことを聞いていたから、嘘を言ってない。流石に、イーナから聞いたと言えない。余計な知識を与えたと処分されては堪らないので、処分される心配がない母親に聞いたと言ったのだ。


「……駄目だ」

「何故でしょうか? 奴隷は働き手だと聞いていますわ。働かせる為に奴隷を買う。何処が駄目なのかわかりませんわ」

「リリィ……、奴隷はね、可哀想な人達なんだ。無理矢理に働かせたり、冒険者では肉壁……わかりにくいか、魔物の攻撃を受けさせる盾にするとか、嫌なことを無理矢理に奴隷へさせる人が多いんだ。今まで、そんな奴隷を沢山見てきた。それだけじゃない、食べ物も与えられる事がなく、餓死してしまう奴隷もいた」


 奴隷の不憫さを語るルード、そんな人扱いされない奴隷は見たくないのだとよーく理解出来た。

 つまりーーーー




「ねぇ、私が奴隷にそんな扱いをすると思っているの?」




 そんな説明をして、奴隷を買わせないようにしているのは、リリィがそんな扱いをするからと思われているのと同義でもある。


「……えっ」

「失礼ですわ。そんなことをする子供だと思われていたなんて……」

「そんな事はないぞ!!」

「だったら、奴隷を買ってもいいでしょう? 奴隷にそんな不憫なことをさせないし、食事も一緒に食べる。執事の仕事を与えるけど、家族として扱う予定ですわ。それの何処が悪いのか説明してくれないかしら?」

「…………」


 ルードは何も言えなかった。別に間違ったことは言っていない。家族として扱うと言っていることから、酷いことはしないだろう。


「ねぇ?」

「……リリィは変わったなぁ。まさか、5歳に論破されるなんて。わかった、好きにしていい。お金は明日、イーナに渡しておく」

「ありがとうございます」


 リリィは内心でガッツポーズをして、部屋から出て行こうとする。そして、呼び止められた。


「……なぁ、リリィはまだ記憶喪失だよな?」

「はい。まだ何も思い出せませんわ」

「私はね、リリィが別人だと思ってしまう時があるんだ……」


 ドキッと心臓を震わせてしまう。だが、表情に出さずに受け答えをする。


「怖いですか……?」

「いや、心配なんだ。リリィは一度死の体験をしたんだ。そこから何かが変わってしまったのかと」

「……おそらく、私は前のリリアーナではないかもしれません。多分、大人っぽいと思われているかもしれませんが」

「あぁ、そこは驚いたよ」


 ルードは苦笑していた。父親といえ、大人の相手に意見をハッキリと言えている時点で子供ではないと思わされている。


「ステータスを見れる鑑定を手に入れてから、私は貴方達が家族だとハッキリと確信していますわ。同じオリエント家だったと」

「もう鑑定を手に入れていたのか。早いなぁ……」

「女性は育つのが早いのですから」

「ふふっ、そう思っておこう。私はリリィのことを可愛い娘だと思っている。甘えるなら、いつでも甘えて来い」

「その時があれば。では、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」


 今度こそ、部屋を出た。




 可愛い娘ね。本物のリリィはもう、死んでいるわ。私が父親……いえ、ルードに甘えることはないわ。いつか殺す対象でしかないわーーーー




 リリィの決意は鈍らない。いつか殺せるように少しずつ力を蓄えていくーーーー






まだ続きます。

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