表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/38

第6話 稽古

本日2話目

 


 イーナの稽古の為に、皆は広い庭にいた。庭にいるのは、リリィ、イーナ、ルード、クリスの4人だった。

 リリィはクリスと一緒に離れた場所で椅子に座っていた。


「今日は実戦に近い稽古をするみたいだから、ここまでは離れていないとね」

「そうなんだ……あれ、それは何?」

「あの魔導具は、四方に囲むことによって、中にいる人のダメージを半減させるの。頭や心臓を潰されていなければ、致命傷にはならないから実戦の稽古が出来るの」

「そんな便利な物があるんですね……」

「うん。魔導具は壊れやすいから、戦争では使えないのが玉にきずだけどね」


 戦争と言われて、ビクッとしてしまう。母親は既に経験済みだとわかって、微妙な表情になってしまう。

 戦争を経験しているなら、もし真正面から自分と戦うことになったとしても、容赦はしないのでは? と考えてしまう。

 自分の子供が相手になれば、戦いにくいだろうと考えていたが、それは無駄になりそうな気がした。なら、戦うなら2人よりも強くなるしかない。


 そんな決心をしていたら、稽古が始まった。


「イーナは私を殺す気で来い。手加減はするが、早々と倒れてくれるなよ?」

「はい!」


 イーナは槍を構えて、重心を低くした。服装はいつものメイド服だが、その姿はとても似合っていた。後から聞いたが、稽古を付けるのは、リリィのお付き人であり、護衛させる意味もあると。

 自分にしたら、イーナが強くなってくれるのは大歓迎である。イーナは既にリリィの共犯者であり、強くなってくれれば、2人だけで本屋に行かせて貰える可能性が出る。

 だから、リリィはイーナだけを応援する。


「イーナ、頑張れっ!! 父親なんか、負けちゃえっ!!」

「リリィ!?」

「はい、頑張ります!!」


 リリィの言葉にルードはショックを受けた様子だが、イーナの槍裁きを軽く受けていた。

 隣に座っていたクリスは応援に苦笑しつつ、ルードのことを教えてくれた。


「うふふっ、ルードはね。今の騎士団で隊長をやっているのは知っているよね?」

「はい」

「隊長になれたのは、ある勲章を受けた後なの。隊長になる前は、騎兵隊として名を馳せていたわ」

「騎兵隊……」

「最前線で一番前にいる部隊なの。1番死にやすく、とても危険な部隊で……ルードはいつも、鬼神の様な槍裁きで道を作っていたわ。敵の騎兵隊も歩兵も魔術師も後ろにいる指揮官までも突き破ったわ」

「……確かに、鬼神ですね。そんなことが出来るのは」

「えぇ、その戦いがあったことで、ダスティス王国は戦争に勝ったの。そして、ルードに与えられた二つ名は…………『怒鬼の騎士』と」

「怒る鬼ですか。今の父親には似合いませんね」

「その名は戦争で発揮するから、今はただの甘い父親なのよ」


 今のルードを見ても、あの二つ名は似合わないと思う。だが、あの槍裁きは凄いと素直に感じられた。イーナの鋭い槍裁きを一つも傷を作らずに反撃までもしていた。反撃といっても、石突きと言う箇所で当てているだけだ。それでも、イーナは石突きを受ける度に後ろへ下がらさせてしまう。








「はぁっ、はぁっ」

「いつでも重心を低くしているのはいいが、瞬発力が足りないな。終わったら、ダッシュ50本だ」

「は、はい!」


 そう言って、チラッとリリィがいる場所を見た。今のままでは実力の一つも引き出せていない。これでは、稽古を見せてあげるようにお願いをした意味がない。一つでも技を見せてやれるようにしなければならなかった。

 今までは石突きを使った攻撃だけで、穂先は全く使われていない。


「ふぅっ……」


 息遣いを落ち着かせた後、今まで見せてなかった動きを見せることにした。


(これで技を一つは引き出せれば上出来。これは、今まで見せたことは無いなら、やれる筈!!)


 ここからはイーナの意地だった。


「む?」


 イーナの構えが変わったことに訝しむルード。そんな構えは教えてなかったのだから。

 今のイーナは穂先を下斜めに構え、重心を高くしていた。ルードは何が狙いかわからないまま、イーナが動き出した。


「はっ!」

「むっ!?」


 イーナはそのまま、穂先を地面へ突き刺して、振り上げていた。それによって、土がルードに向かって目潰しを行っていた。

 こんかやり方は教えてなかったことで、まんまと土を被っていた。




「シッ!」




 そのまま、振り上げた穂先を振り下ろすーーーーことはせずに、石突きの突きを仕掛けていた。そのまま振り下ろすだけなら、読まれている可能性を考えて、後ろに下がると予測することで石突きでの突きを選んだのだった。

 普通の相手だったら、このまま石突きでの突きが当たっていたーーーーが、ルードには効かなかった。


「やるな。穂先を使わせるとは」

「なっ!?」

「私の槍を使った技を一つ見せることになるとは思わなかった」


 今のイーナの状態は、突き出していた石突きが粉々に破壊されて、バランスを崩していた。ルードの方は、穂先で石突きを破壊し、いつでも首を斬れる体勢だった。


「石突きを破壊された……?」

「あぁ、私の技、『一尖』で石突きの一点へ力を集中させて、破壊した」

「……参りました」


 イーナは稽古だが負けたと思わされた。だが、試合に負けたが勝負では勝った。ルードに穂先を使わせて、技を一つ引き出せたのだから。

 またリリィがいる方を見ると、親指を立てていたことから、最低限の目的は達せていた。









 凄い戦いだった。まさか、イーナが父親に技の一つを引き出すとは思わなかったので、思わず親指を立てていた。こっちを見るイーナが笑みを浮かべていたことから、嬉しかったようだ。


「しかし……」


 強すぎると思った。リリィはあのルードに勝つビジョンが全く浮かばない。今はまだ5歳だからそう思うのは仕方がないが、どうやって倒せばいいかわからなかった。


 魔法で遠距離砲撃をする……いや、戦争で経験済みだろうし、生きていることから効かないのは間違いだろうね……あー、どうすればいいんだよ!? あの化け物!!


 もし、国ごと滅ぼす魔法があっても、ルードだけは生き残りそうなビジョンが浮かぶ。魔法では難しそうなら、接近戦でぶった切るしかない。


 …………なら、育てるか? わざわざ私が殺さなくても、接近戦が得意な仲間に任せる手もあるわ。


 リリィは別に自分の手でやらなくてもいい。ただ、生き残れるなら手柄は誰にもあげたっていい。なら、ルードに勝てる才能が高い人物を引き込み、育てればいい。


 そういえば、この世界は奴隷はいるの? 奴隷なら、裏切ることもないし仲間に引き込んでも損はない筈。


 ただ、奴隷にそんな才能を持った人がいるのか? それに、この世界は奴隷がいるのかもわからない。あとで、イーナに聞いてみるかと思いつつ、ダッシュをしているイーナの姿を眺めるのだったーーーー






まだ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ