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異世界で最強底辺な俺の気ままな武器貯蔵  作者: 津名 真代
第三章 ボルバック諸島国
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98.大ピンチ

劣勢続く

洞窟内部に少なくない爪痕を残したブレスは消える直前まで威力に対して申し分のない勢いを保っていた。

すべての焔を吐ききった龍は、その後ピクリとも動かなくなった。

本来ならば直ぐ様標的を変え、エリカたちに襲いかかっても可笑しくないのだ。

だが、龍は動かない。

そして、次第に龍の目元は鋭さを増し自身の口元を睨み出す。


「さすがに・・・洒落になんないなぁ」


龍は自分の口から聞こえてくる声に強い敵意の目をしつつも、何が起きたのか理解できない故の困惑が入り交じった表情を見せていた。


「これ以上はちっとまずぃ、な!!」


レオの声に合わせて龍の口から再び膨大な炎の塊が溢れ出す。

ただし、さきほどと違い指向性のある炎ではない。

四方八方に飛び散るような動きであり、だんだんとその量を膨張させていく。

そしてこの現象が龍自身が起こしているわけではないことは端から見ている者たちからは明らかであった。

何故ならば、口から出てくる炎を押さえ込もうと必死な龍の姿がそこにあったからだ。


「はああああああ、はっ!!」

「うぉぉぉぉぉぉ、ふん!!」


口の中の炎に意識を取られた龍は、近寄る二つの影に気づいていなかった。

いきなり現れた二つの影は龍の喉元に左右、対象となる位置から合わせて一撃を加える。

片や邪気を纏った一拳、片や魔力を纏った一閃。

龍から見れば通常であれば歯牙にもかけぬほど者であり、そんな者たちの一撃など痛くもない。

だが狙われたのが喉であり、口に意識を向けていた所に不意討ちを食らえば深刻な一撃とはならずとも一瞬の隙くらいは作れる。

つまり、いきなりの衝撃に驚いた龍はその口を大きく開いてしまったのだ。

そしてその瞬間を待っていた者が口の中から勢いよく飛び出してくる。


「レオ、さ、ん?」

「あ、主様?」


レオの救助に成功した二人の喜びは、束の間のものだった。

二人が目にしたのは人の姿を失ったレオ。

いや、正確に言うならば五体満足の人の姿であったが、全身が炎に成っているのだ。


「はぁ・・・はぁ・・・」


片膝をつき呼吸を荒げるレオの姿は二人からすれば初めて見た光景だった。


「レオさんがあんなに疲弊してるなんて・・・」

「! ―――エリカ嬢離れて!!」


今度はエリカたちがレオに気をとられている隙に龍が不意討ちを狙ったのだ。

蛇の蛇行のように自身の首を勢いよく左右に振ることで、二人を弾き飛ばす。


「はっ、きゃああああ」

「うっ、ぐあああああ」


ほぼ同時に飛ばされた二人は地面を滑りながら3mほど引き離されてしまった。

即座に体勢を立て直した二人は龍の追撃を警戒したが、龍は未だにレオを凝視し一切目線を切ろうとしない。

自身の口から飛び出した見るからにその体を変化させた異様な姿形に興味をそそられていたのだ。


「はぁはぁ、うっ、くっ、はぁはぁ(きっつい)」


未だに呼吸が整わないレオは言葉が出せない状態が続いている。

だがそんなレオに対して龍はいつでも行動を起こせる準備を済ませていた。


「(まずいn・・・」――――ドクンッ!!!


急にレオの心臓が大きく跳ねりだす。


「うっぐ! ぐぁ、うぅぅ!」


心臓に続き今度は身体中からビシビシと音が出ているのでは、と感じるほどに痛みが全身を駆け巡る。

その痛みは心臓が跳ねる度に全身へと駆け巡り、それに対応するようにレオの炎も勢いを増していた。

そしてついにレオはうずくまり、一切の行動が出来ぬまま痛みに耐えるしかなくなっていた。


「グルゥ―――」


これを好機と見た龍はレオにトドメを差そうと飛びかかる。


「生命の生まれ育つ母なる大地。揺るがぬ優しさは重量な盾。荒ぶる怒りは猛威の剣。今一度、大地の力を貸し与えたまえ!

『岩窟王の盾剣』」


魔法の詠唱が完了すると同時にレオと龍の間に縦・横・厚さ1、2m、ある巨大な壁がせり上がる。

その壁に勢いよくぶつかった龍は自身の勢いある体当たりのカウンターを食らい一瞬意識を手放す。

その隙を狙い打ち、せり上がった壁は、龍の方へ傾きつつその全身を崩落させる。

砕けた壁により出来上がった岩岩が龍に覆い被さり、さながら岩石封じのように龍を押さえ付けている。


「レオさん、しっかり!」

「主様・・・」


岩に埋まった龍を見て、エリカとクレイがすぐにレオの元へと歩み寄る。

未だにうずくまったままのレオは痛みが少しは和らいだのか悲痛な声が出ない程度には落ち着いていた。


「皆さん、大丈夫ですか?」


ふよふよとゆっくりと三人に近づいたのは先ほどの魔法を使った張本人である。


「奥方様、見事な魔法でした。助かりました」

「レイさん! レオさんが!!」


現れたレイに対し取り乱したままの二人が口々に言葉を発する。


「二人とも落ち着いてください。

レオさまは事情があって今は【不安定】ですがしばらくすれば【安定】してくるので大丈夫です。

それよりも――――――」


レイの答えに少しばかりの冷静さを取り戻した二人は、先にやらないといけないことにようやく気づく。


「あれを倒すか、逃げるか。

それを先に決めますよ」


レイの言葉の終わりに合わせて岩山が下から押し上げられるように盛り上がる。

ガンッガンッと少しずつ削りながら真っ白な蛇顔を露にする。


「嘘・・・ 無傷、ですか・・・?」

「あの程度で傷が付くならエリカさんとクレちゃんの不意討ちで首が飛んでますよ」


エリカもクレイも分かりきっていた事実ではあったが、キチンと口に出されて聞かされると絶望感が加速していた。


「仕方ないですね・・・ 【消します】」


抑揚のない声で開かれたレイの言葉は味方であるはずのエリカたちですら身震いするほどである。


「お二人は無理しない程度で敵の詠唱妨害を押さえてください。


エリカもクレイも迷うことなく首を縦に振る。

そのままレオとレイを背で隠すようにして前に飛び出す。


「無、無、無。すべてを呑み込み、食らう黒き暴渦よ。

全て、全て、全てを、すべからく無に帰せ。

そこにあらゆる例外も、認めない。あらゆる意思も、含まない。

我が意に答うるまで、この世の一切合切を平等のモノへと落としたまえ!

『事象の地平せn――」

「た、頼む!!ま、待ってくれ!!!!」


レイの魔法が完成する直前に龍の後ろ、今まで影になって見えなかった場所から一人の男が姿を表したのだ。

一体誰だ!?

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