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夢を見たその後で 4話 「10年も前に......」 その1

第4話  10年も前に........



「バケット(フランスパン)はカゴに入れて鏡の前に置いて!!」

「はい!」

「ピーチデニッシュ?......そうやなぁ、レジの近くに並べようか」

「はい!」

「菓子パン系と惣菜系のパンを同じ所に置いたらあかんよ」

「......すみません」



日曜日の開店20分前。

アルバイトの子にパンのならべ方を指導している。

どの店にも言えることだが商品の並び方一つで大きく売り上げが変わるのでなかなかバカにできない。

自分が客ならどんな並び方しとこうが汚らしくさえなければよさそうなものだが、それでも無意識に買いたくなってしまうような商品の並べ方は実際ある。


「もうすぐ営業時間が始まるけど 楽しく、元気のいい接客を心がけて下さい。それでは今日も一日頑張っていきましょう!」


「はい!今日も一日よろしくおねがいします!」


いつもの挨拶も終わりお店が開店する。

さて、今日も一日頑張りましょうかね♪




「それじゃ、休憩行って来るなー」

今日は、日曜日にしてはそれ程お客さんが多くないので余裕をかまして休憩時間が取れる。

「やっぱり日曜日に井上さんがいないってのはマズイなぁ......」


すっかり”看板娘”となってしまってる井上さんのいない日はそれだけで売り上げが下がってしまうのだ。



接客態度の良さや機転が利く所など、見た目がいいって以外にも彼女が”看板娘”となっている理由がある。アルバイトにしておくにはもったいない。

他の子も井上さんを見習って欲しいものだが、なかなか女同士っていうのはややこしいものでうまいことはいかないものだ。



いつもの休憩所についた。

とりあえず、お昼ご飯を食べていつものコーヒーを飲んでると少し離れた場所から俺を見ている視線に気が付いた。


「..............」


俺を見ている人は......


この前、迷子の男の子を一緒にインフォメーションまで連れて行った女性.......10年前に別れた昔の恋人だった。

「あっ.......」

彼女が俺の方に近づいてきて......そして、俺の目の前に来た。

「この前は、どうも。お久しぶりね......松本さん」


「............」


声が出なかった。彼女は俺の事なんてすっかり忘れているものだと思っていたのだが、その彼女が俺の名前をハッキリと口にした事。そして、もう一度俺の前に現れた事に驚いた。

「ああ.....久しぶり」

「松本さん......やっぱり、あの頃みたいに祐ちゃんって呼んでいいかな?」

「ああ.....いいよ。俺はなんて呼んだらいいやろうか?」


「美香で......いいよ」

「少し.....喋り方変わったか?そりゃあ10年もたっとるんやから当たり前か」

「私は.....あれからすぐ引っ越してこっちに来てるの。まさか、こんな所で祐ちゃんと会えるとは思わなかった」

「そっか.....こっち来て10年もたったら喋り方も変わってもしゃぁないよな」

「違和感があるのなら昔みたいに喋るけど?」


「いや、そのままでいい」

「そう?」

言葉遣いまで変わった美香は 10年前とはまるで違う人みたいな感じだが、過去は過去と割り切るためにもそのままでいいと自分に言い聞かせた。

それに......今の彼女である はるかの事を思えばやはり、これ以上深入りはしない方がいいだろう。


あまり深入りしすぎて自分の本心がわからなくなるのも怖い。

「今は、仕事中かな?」

「ああ、もう少ししたら仕事場に戻らなあかんねん」

「久しぶりに会えたんだからもう少しゆっくり話がしたかったんだけど.......そうだ、仕事が終わってからでいいから時間作れない?もう少し祐ちゃんと話がしたいし」


「ああ、いいけど......」

「7時には仕事終わっている?」

「うん、そんなもんかなぁ」

「それなら、7時に駅の前で待っているから。....これ、私の電話番号なんだけど何かあったらここに電話してね」

「わかった」

「それじゃ、駅で待っているから」



突然現れた昔の彼女。

久しぶりに話がしてみたいっていうのもあるが、お互いがこの10年間でどう変わったのか やはり気になる。

それにしても綺麗になっていた。

俺より1つ年下であの頃はあどけない顔をしていたが、10年の歳月はやはり人を変えるものだと思う。



彼女も もう、27歳なんだから当たり前なんだろう。


第4話 その2に続く.......


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