リニューアル幽荘温泉 EX
荷物を運び下ろし、アイスでパンパンになった冷凍庫とジュースやお酒でパンパンになった冷蔵庫。
「……お店を始めるのかな?」
縁は詰まりに詰まった物を見て苦笑し、振り返る。
自然の景色がとても良い、夜は星空も見れるだろう。
「管理人さーん、全部です〜」
「はーい」
よく冷蔵庫容量ギリギリに納めたものだ、ただ詰め過ぎは良くないと聞いた事もあるが……まあ毎日減っていくだろう。
縁は脱衣所を出て幽荘メンバーと合流する。
対して温泉改修に長く尽力してくれたジャノメ率いる職人達が整列している。
「それでは、以上を持って幽荘温泉改修工事の完了とします!」
ジャノメがピシッと礼をし、職人達が後を追って一斉に礼をする。
「ほんに、良くやってくれたのうジャノメ達や。感謝するぞ」
狐音が綺麗に礼で返し、幽荘メンバーも習って礼をする。
その後はワイワイと職人達も交えてお礼の言い合いや、改修のポイントの話をしたりとフリータイムだ。
その中ジャノメが縁を見て寄ってくる。
「ジャノメさん、ありがとうございました!」
「なーに!久方ぶりに幽荘に関われて楽しかったぜ!にいちゃん、何かあったら連絡しな。力になるからよ!」
ジャノメと番号を交換して、しばらく話す。
「この地域も俺がガキの頃から変わってない様で変わってきている、今回の工事で俺が変えた証になるのは嬉しいんだ」
「昔はまた違ったんですか?」
「ああ、幽荘周りにもまだ民家が幾つかあったしな。おめぇの両親、隆二と里子も住んでいた。」
「……僕、両親からは都会生まれ都会育ちだと聞いてたんです」
「変な見栄張りやがってあいつら!……まあ、この地域に嫌気が差して駆け落ちしたくらいだからな」
「そんな所に、何故僕を送り込むような事をしたんでしょうね」
「そうだな……おめぇさん、孤児院行ったんだろ?リュウメに会ったと思うが幽荘に関わる人は幽導村出身が多い」
「ええ、ユウメさんからも聞きました」
「この幽導村の地域はな……特に孤児が多い所だったんだ」
「幽導孤児院と幽荘が関係あるんですか?」
「あるにはあるが直接的じゃない、時代と共に周りの都合の良い場所だっただけだ」
孤児院の帰り、ユウメが話した子を手放しやすい場所として長く周辺から扱われたのかも知れない。
「ヘビメやおめぇさん世代になって、ようやく変化を感じる事が出来た。隆二と里子は託したのかもな」
「……だと良いですが」
始まりは両親が浪人生ニートの縁を更生の為に放り出した形だと思っていた、しかしそれはこの地域の特に幽荘に対しての冒涜になってしまう。
だとすれば、何か意味があって縁は送り込まれた。
そう考えるほうがしっくりきた。
「さて!そろそろ俺達は引き上げるぜ!おーい皆帰るぜ!」
ジャノメは縁の肩を叩き「ヘビメをよろしくな」と告げ歩いて行った。
豪快な人だが、やっぱり繊細に娘を心配してるのだろう。
そして、職人達が撤収し静かな幽荘が戻ってきた。
「なんか寂しいね」
縁の袖を摘みながらネコメが言う。
「そうですね〜あんなに大勢の毎日久しぶりでしたからね」
スズメも寂しげだ。
「アタシはうるさいパパが離れてくれて、ホッとするわよ」
ヘビメはツンツンした言い方だが、顔はそうじゃない。
「皆様が手掛けてくれました温泉、大切にしましょうね〜」
ユウメが温泉を見つめる姿が凛々しい。
「……さて、今夜は皆で新しい温泉に入るぞ!」
狐音が明るく言って皆が同調する。
「縁よ、お湯張り頼むぞよ」
「任せてください!……ん?僕も一緒に入るんですか?」
「何言ってるんじゃ当たり前じゃろう?何の為に男女仕切ったんじゃ」
「いや……確かにそうですけど」
強制混浴や乱入防止の為ではあるが、衝立一枚の隣で女性陣が温泉に浸かっている。あくまで棲み分けであり、進んで一緒に入る為にじゃないような気がする縁だった。




