ショー前準備
——縁がもみくちゃにされている頃
「ユウメちゃん今回もありがとうね……本当にありがとう」
「院長泣かないで下さいな、まだ始まってないですよ〜」
「子供達の晴れ舞台を用意してくれるユウメちゃんや狐音ちゃん、それに今の幽荘メンバー……やっぱり感謝しちゃうのよ」
「うふふ、それじゃあその晴れ舞台を最高のショーにしましょうね?今日は管理人さんも初参加ですから!」
「ふふ、そうだね。しかし隆二と里子の子も二十歳で、まさか管理人させられたなんてね。あの二人もしきたりだなんていつの時代かねぇ」
「きっかけはなんだってよろしいのですよ、噛み合ったのが今ってだけでございます」
「それもそうだね、さて職員の皆〜一人ずつ回収しておめかししていこうー!」
「はーい!」
——プレイルーム
縁は孤児院の中でも歳上組に助けられて、なんとか集団をコントロールしつつあった。
「何人かお兄さんお姉さん来てくれて助かった……下手したら俺よりしっかりしてるし」
礼儀正しくも元気にやんちゃだったりおとなしかったり、様々な子供が居て一人一人違うのだと実感する。
手分けして鬼ごっこやスポンジボール当て等、団体が分かれ端から職員や院長が捕獲していってる。
そんな中、孤児院で初めに会ったトラメと呼ばれていた男の子にしがみつかれる。
「なーおまえ名前は?」
先程拳骨を喰らったが懲りて無いようだ、このぐらいの男の子は逞しい。
「俺は縁だよ、よろしくなトラメ君」
名前を呼んだら驚いて逃げてしまい壁から顔を出して、様子を見てくる。
ちょいちょいと手招きしてボールをパスしてあげると、笑顔が戻りキャッチボールが始まった。
「えにしにいちゃん」
トラメに初めて名前を呼ばれた。
「お、なんだトラメ君」
「ユウメ姉ちゃんの彼氏か?」
縁は予想外の球を喰らってボールを受け損ねる。
「違うぞ、俺はお姉ちゃんが住んでる所の管理人だ。わかるか管理人?」
「院長?」
合っているような違うような……いや、違うだろう。
「ちょっと違うけどユウメお姉ちゃんや他の人のお手伝いをしてるな」
「ふーん」
トラメは分かってるのかどうなのか判断に迷うリアクションだ、その時ガバッと職員がトラメをロックした。
「トラちゃん次ねー、ありがとうございます紬さん!」
「やだ!まだ遊びたい!」
バタバタとトラメが暴れてる、この年頃は遊びに対するガッツがある。
縁も説得しようとした時。
「今ユウメお姉ちゃんが服着せてくれるよ?」
職員がボソッと吹き込んだらトラメはピタリと止まり、大人しく職員に連れられて行った。
「さすがだな……扱い方がプロすぎる」
職員の鮮やかないなし方は子供によって変えてるのだろう、トラメの場合はユウメがキーワードなんだなと察する。
「紬君、助かったわ!さすが男の子ね!」
院長が誉めながら歩いてくる、どうやら順調に回収が進み後は歳上組か大人しい系の子が数人だけだ。
「いやぁ毎回ショーの時は大忙しだけど引きつけ役で人が取られるからね、ちなみに前回はネコメちゃんが引き受けてくれたんだよ」
「ええ!?あのネコメちゃんがあの凄まじい勢いの集団を?」
縁は信じ難かった。ネコメの大人しい性格では太刀打ち出来るイメージが湧かない。
「ふふ、子供達はちゃんと人を見てるのよ。ネコメちゃんは皆を集めて、特に女子や小さな子とお話会だったわね」
男である縁には皆で体力勝負が選ばれたのだろう、これを毎日は正直身体が壊れそうだ。
「さ、後は少しだから紬君は客席で見ていきな」
「良いんですか?」
「もちろん、大トリはユウメちゃんだしモデルのユウメちゃん見た事無いんでしょう?しっかり目に焼き付けると良いわ」
ほらほらと院長に背中を押されて、プレイルームを追い出されてしまった縁は集会所へと向かった。
(うお!ショーの舞台だ!)
さっきまでとは違う集会所の様子に驚く。
暗幕で舞台正面が照明で浮き上がり僅かな飾り付けだが、それがモデルを引き立てるようになっている。
どうやら近隣住民の方を招いてるようで立ち見が出る程会場に人が居る。
(遊んでいる間に、こんな事になっていたなんてな)
正直なところ、目の前の子供達で精一杯だった。
縁は少し端の空いた所を見つけて、ショーの始まりを待ち望んだ。




