職人の到着
ゴゴゴゴと三台の工事トラックが幽荘に向けて荒れ道を真っ直ぐに走り寄る。このボロアパートなんか一撃で潰されるんじゃないかと思える迫力だ。
「ねえ、ヘビメさん確認するまでもないと思うけどアレって」
「うん、パパね」
遠くから響くタイヤの音で幽荘の住人は皆外に出て来ている。
「なんか思ってた以上に工事するのかな?重機積んでるし…」
縁は迫り来るトラックに大事になってないかと心配する。幽荘の手前でトラックが止まり運転席から屈強なヤクザ…もとい親方みたいな風貌の男が降りてこちらに向かって来た。
「ヘビメー!!元気にしてたかー!!俺を頼ってくれて嬉しいぞぉ!!」
凄い野太い声を放ちながらヘビメを抱え上げぐるぐるし出した。娘に激甘タイプなのは察した。
「相変わらず娘にデロ甘じゃのう…しかしよく引き受けてくれたわいジャノメよ」
ジャノメと呼ばれたヘビメの父はガハハと笑い狐音と話をし出した、知り合いなのか?
「なーに、狐音さんとヘビメの頼みとあらば他の仕事潰してでも来ますわい!」
「しかし久方ぶりに来たがここは変わらんですの!でもメンツは変わってて……ん?」
懐かしむように幽荘を見上げ、住人の一人一人に握手と自己紹介をしようとした時だった。
縁の番でジャノメは目を見開き固まった。
「な、な、な、おめぇ、男じゃねぇか!!」
「パパ落ち着いて、縁は無害」
「ジャノメ落ち着くのじゃ、ちゃんと選ばれておるよ」
無害?選ばれた?何か話が見えてこない。
縁が困惑してるとジャノメは鬼の形相で聞いてきた…怖い。
「おめぇウチのヘビメに変な事してねぇだろうな?」
縁はこの時の事を「あ、コレ答え方で死ぬやつだ」と後日振り返っている。
「潔白です!ヘビメさんに不埒な事等しておりません!!」
軍隊の上官に報告する様な勢いで報告をした。
一瞬、そういえばヘビメ以外は混浴したり横で寝てたりがあった事チラついたが、間違いなくヘビメだけは混浴や密着が無い唯一の幽荘住人である事に心から安堵した。
「ジャノメその男はな、ウチの正統な管理人の縁じゃよ。隆二と里子の子じゃ」
狐音がそう説明をすると鬼の形相が仏の顔へと変化していく。
「なんじゃ隆二と里子の子!?デカくなったんじゃのー!立派になって管理人やっとるとは知らなんだわ!」
どうやら命は助かったのか正反対の受け入れようだ、勢いでハグまでしてくる。物凄い力で抱き寄せられ小さくボソッと囁く、「ヘビメに手出したら玉を潰して幽荘住人全員とおんなじ女にしてやるからな」
とんでもない事を言ってる、この人親バカ通り越して危険人物じゃないのか?
他の女性陣とは和やかに挨拶を進めてるのが怖すぎる。
「ジャノメさん私は牛乳の冷蔵庫とアイスの冷凍庫が欲しいのですわ〜」
ユウメがマイペースにお願いしている…
それを皮切りに我も我もと女性陣は追加を要望していくが、忘れないで欲しい。そもそも今回は自分の一番の要望である「脱衣所」が必要で工事をお願いしていることを…
しかし、ジャノメさんが両親を知っていたのは驚きだ。ウチの両親が何者なのか一度本当に聞いた方が良いかもしれない。
一通りわちゃわちゃとなったが一区切り付いてヘビメが言った。
「パパなんで今日来た?着工計画は来週」
「おお、現場の視察と地鎮祭に着工式やっておこうとな。特に必要だろう?な狐音さん」
「そうじゃな地鎮に関しては儂が進めておったが丁度良いの、縁よすまんが御神酒を狐火酒造に取りに行ってくれんかの?」
「あ、わかりました!せっかくだけど他誰か来ます?」
「あーすまんの女性陣には別件があっての」
別件?まあ役割あるなら従おう、サッと行けば1時間半で帰れるだろう。
「それじゃ早速行って来ます」
「うむ、狐子には伝えておるから貰うだけじゃ」
「はい、じゃあ行って来ますね」
縁は軽トラを走らせ街の狐火酒造へと向かっていった…
「…さて、皆の衆久しぶりの陣張りじゃが大丈夫かの?」
「何年振りになりますでしょう、腕が成りますわ〜」
ユウメはぐるぐる腕を回しストレッチを。
「上手く出来るかなぁ…」
ネコメは不安そうに。
「ネコメちゃん大丈夫ですよ、私がサポートしますから〜」
スズメはネコメを抱き寄せ落ち着かせ。
「パパ離れといてよ」
「わかっとるわかっとる、また見れる日が来るとは嬉しいね!」
ヘビメ親子は位置確認。
縁の知らない所で大掛かりな何かが準備されようとしていた。




