温泉ユウメの襲来
ドラム缶風呂試運転の夜、まだ浸かれる内に浸かっておこうと縁は温泉で星を見ながら考えていた。
(やっぱり簡単なカーテンみたいなので見えないようにするか?でも燃えたりするの怖いしな…)
このままではさすがに良くないだろうと考えはするが、具体的に思い付かない。自身で火の番をやってみたが結構風向きや薪の置き方で火が変わるのだ。
「温泉あるって偉大だなぁ…」
「そうですわよねぇ〜」
いつまで経っても慣れない誰かが側にこっそり来てる混浴シチュエーション。今回もユウメだった。
「ゆ、ユウメさんダメだって言ったでしょ!」
「えー私も管理人さんと一緒にドラム缶にも入りたいですわ〜」
「誰とも入ってないですから!」
昼間どこかで見ていたのか狐音に聞いたか、今日のドラム缶風呂について必要以上に身体を密着して聞いてくる。
物凄く肌触り良く柔らかな身体をくっ付けてくる中でお酒の匂いもする、どうやら出来上がったまま温泉に来た様だ。
「ユウメさん酔って温泉は危ないって言ってるでしょ!」
「管理人さんが居てたから大丈夫だな〜って思いましたのよウフフ」
だいぶ上機嫌なユウメだが、こんな彼女を湯船に放置するのも危険だ。出来る限り後ろを向いてやり過ごすしか無いだろう。
ツンツン背中を指で押してきたりして遊びながらユウメは呟きだした。
「管理人さんのような優しい方で良かったと思ってますのよ」
「え?」
声のトーンが少し下がり酔ってる勢いなのかわからないがユウメは話をしだした。
「私はハーフですからどこに行っても珍しい目で見られておりましたもの、でも管理人さんは最初驚きはされてましたが幽荘の皆を想い動くのが見れて嬉しいのです」
確かに凄い美人が居るとは思ったがアパートの一人一人がクセのある、でも皆いい人だと知ってからは気にならなくなった。しかし混浴するのは別なのだが。
「ここで生活をする皆の為に動く管理人さん、とても眩しいですわ」
「あ、ありがとうございます…」
ハッキリと言われたら少し照れてしまう。
「私も長く生きてますから、人の善し悪しを自然と感じてしまうものです。モデルのお仕事も味方ばかりではありませんからね」
やはりモデルとは光り輝く下で陰になる部分から何かされてしまうものなんだろうかと縁は思った。
「実はモデルを辞めようと思ってた所に管理人さんが来たのです」
「え?辞める?」
「はい、でももう少し頑張ろうと思わせてくれた管理人さんに感謝なんですよ」
チュッ
不意に頬を柔らかい物が押し込まれ、そのままそれは耳元で囁く。
「優しい管理人さんありがとう…」
背中がゾワゾワしてさすがに振り向いた、ユウメさんそれはやり過ぎです!と言いかけた時だった。
ぶくぶく……
「な!?ユウメさーん!!」
「全く、お主ら温泉で何やっとったんじゃ?」
パタパタ団扇で煽がれ身体にタオル一枚掛けられてノビてるユウメを狐音と縁で介抱している。
湯当たりして上せたユウメを見た縁の叫び声が、たまたま近くにいた狐音に届いて事なきを得たのだ。
自分は悪くないと思うが言い出せない縁であった。




