温泉掃除
……遠くで話し声が聞こえる気がする
(まった…ぬしのわる…じゃ…)
(…なさい〜…だんしちゃ…つけるわ)
聞いた声が話し合ってるけど睡魔に抗えず奥深くまで潜っていく……
意識がはっきりした時には夕方だった、驚くほど頭が冴えてるし不安な心が晴れている。お香の残り香はまだあるがお香自体は燃え尽きてるようだ。
「お、起きたのかの」
パッと見れば狐音が横に居た。
「全く、儂が出た後に騒ぎになりよって」
「すいません、あんまりにも驚きすぎて…」
「まあ仕方あるまい、鎮静香をユウメから貰ったんじゃろ?」
鎮静香って言うのか、確かに落ち着いたし元気出て来た。
「管理人さーんおはようございますですわ〜よく眠れた様でなによりです」
「あ、ユウメさんお香ありがとうございます」
「いえいえつみほろぼし…もとい管理人さんに何かあったら大変でございますので」
何か言い掛けた?つみほろぼし?
「ほれほれ、お主管理人業務について知りたいんじゃろ?うってつけのもんがあったわい」
強引に割り込んだ狐音から渡されたのは、デッキブラシであった
「今回は儂も管理人としてみせてやるから付いてこい!」
無理矢理引っ張られていく…ユウメは笑顔で優雅に手を振っている、その姿も絵になる。
狐音に連れて来られたのは温泉だった。
温泉にデッキブラシ、もう予想は付いている。
「皆までは言わんぞ、ほれ湯はここで止めて抜くのはこの板止めじゃ」
ドバァっと勢いよく湯が抜けて行き底が見えだす、要はここを擦るのだろう。
「お主にはこれを毎日やってもらいたいのじゃ」
「毎日?結構大変だな…」
「うむ、ここ最近皆忙しく不定期じゃったからの〜お主の日課の仕事で管理人らしいじゃろ?」
確かに仕事ではある…が、これって温泉管理人なのでは?
「勿論他もあるじゃろうし、お主が出来ん時は皆に協力してもらうからの安心せい」
「はあ、まあとりあえず頑張ります!」
「うむ、良い返事じゃ終わったら一緒に入るかの?」
「……いや、それはマズイです」
「お主は本当に硬派じゃのー」
無駄口を叩きながら掃除を済ませて、温泉の装置に付いてレクチャーを受けた。
「掃除時間は任せるし必要な物あれば遠慮なく言うんじゃぞ?」
縁は必要な物と聞いて、自分の中にあった計画を話してみた。
「あの狐音さん、やっぱ脱衣所とかが要ると思うんですけど業者依頼とかは出来ないんですかね?」
軽く聞いてみたが狐音の反応はよろしく無い。
「うーむ、業者のう…」
「あ、やっぱり予算の関係とかですかね?」
「いや、金は問題無いのじゃが…一言で言えば資格があるかじゃよ」
資格?業者だから資格はあるのでは?
「お主の思ってる作業の資格じゃのうて、受け入れられる資格なんじゃよ…まあおいおい話してやるわい」
どういう事かわからないけど普通に依頼するだけではダメと言う事か。
とりあえず清掃管理で温泉とアパートの維持からスタートだな。
「湯が溜まるまで時間かかりそうじゃし儂は部屋に戻るぞよ、いつもぐらいに溜まったら板止め調整して湯を弱めてくれい」
「あ、わかりました見ときます」
不思議な体験から持ち直し、やっと管理人らしい事が出来た気がする。
あの目はなんだったのか、心が落ち着きやる事が定まって少しずつ忘れつつあった。




