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第15巻:如月令嬢は『空想の産物を認めない』  作者: アリス・リゼル


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第3話『冒険』(前編) ~section 3:王冠の鑑定と、ドワーフの反逆心~

「どうか、勇者よ! 我が民を、この世界を救ってくれ! 頼む!」


 黄金の玉座から身を乗り出し、悲痛な声で懇願する国王。

 その感動的で悲劇的なロールプレイングゲームのクライマックスのようなシーンを、完全なる無視という暴力で叩き切り、如月瑠璃は一直線に王の元へと歩みを進めた。


「なっ……! 何をする、貴様! それ以上、陛下に近づくことは許さん!」


 異変に気づいた屈強な近衛兵たちが、ガチャリと重々しい音を立てて白銀の長槍を交差し、如月さんの行く手を阻もうとする。

 しかし、彼女の歩みは微塵も揺るがない。

 その華奢な背後から、漆黒のフルプレートアーマーを身に纏った巨漢の『戦士』である黒田さんが、地鳴りのような一歩を踏み出した。彼が一言も発することなく、ただ背中に背負った巨大な大剣の柄に手をかけただけで、その常軌を逸した物理的なプレッシャーと圧倒的な殺気に当てられ、近衛兵たちはヒッ、と短い悲鳴を上げて完全に硬直してしまった。


(黒田さん……ファンタジーの世界でも、その威圧感は完全にチートじゃないですか……!)


 僕が内心で突っ込みを入れている間にも、如月さんは兵士たちの間を涼しい顔ですり抜け、ついに玉座を取り囲む半透明の巨大な『魔法のバリア』の真正面にまで到達した。


 オーロラのように七色の魔力光を波打たせる、王族の命を守るための絶対不可侵の力場。

 この世界において『魔法』と呼ばれる、人間の物理的干渉を一切受け付けない超常の防壁を前にして。

 如月さんは、右手に握った純銀のアンティークルーペを、静かにその光の表面へと掲げた。


「無礼者! 何のつもりか知らんが、無駄なことだ!」


 結界の内側で、国王が目を見開いて叫ぶ。


「その『聖なる光盾(ホーリー・イージス)』は、建国より代々我が王家に伝わる絶対の守護結界! 王家の血を引かぬ者、あるいは特別な魔力鍵を持たぬ者が触れれば、たちまちその身を焦がし、数メートルは弾き飛ばされる! 素人が不用意に近づくなど……!」


「……うるさいのう。静かにせよ」


 如月さんは、王の忠告を『鬱陶しいハエの羽音』とでも言わんばかりに、極めて冷酷なトーンで一蹴した。


「王族の血だの、魔力鍵だの、お主らはそうやって現象の表面にロマンチックな空想のタグを付けて満足しておるようじゃが、そんなものはすべて後付けの妄想に過ぎん。いかに『魔法』と名付けられようとも、この空間に光を放ち、質量と熱量を持って存在している以上、これは『特定の波長を持ったエネルギーの膜』じゃ。であれば、必ず観測可能な物理法則の支配下にある」


 如月さんは、純白の手袋に包まれた左手の指先を、バリアの表面すれすれの空中に這わせるように滑らせた。

 バチバチッ!と、青白い火花のような魔力が弾け、彼女の指先に警告のスパイクを放つ。しかし、彼女は全く動じない。


「光の屈折率、電磁波の波長、そしてエネルギーの位相……。この結界は、常に一定の周波数で周囲の空間の屈折率を連続変化させ、外部からの運動エネルギーを光と熱に変換して拡散させているに過ぎん。極めて高度な数式に基づくシステムではあるが、しょせんは固定されたアルゴリズムじゃ」


 彼女の深いアメジストの瞳が、ルーペのレンズ越しに、七色に明滅するバリアの六角形の幾何学模様を恐ろしい速度で解析していく。


「お主らが『王家の血』と呼んでいるものは、おそらく特定の生体磁場や、DNAから発せられる微弱な固有振動数のことじゃろう。結界のシステムがその特定の周波数を『アクセス許可のパスワード』として認識しているだけのこと。……ならば、話は単純じゃ。この膜を構成するエネルギー波の『位相』が反転し、物理的な干渉力(テンション)が一瞬だけゼロになる『波の節(ノード)』の座標を見つけ出せばよい」


「波の、節……? 何を馬鹿なことを! そんな物理法則など……!」


 王が叫ぶのを遮るように、如月さんの唇が冷酷な笑みの形に歪んだ。


「見えた。……ここじゃな」


 次の瞬間。

 如月さんは、バリアの表面の特定の空間座標に向けて、スッと右足を踏み出した。

 それは、魔法を打ち破るような力強い一撃でもなければ、呪文を唱えるような魔力的なアプローチでもない。ただ、日常の中で開いたドアを通り抜けるような、極めて自然で、何の変哲もない『歩行』の動作だった。


 ス……ッ。


 まるで、水面に落ちた一滴の雫が、波紋の隙間をすり抜けるように。

 あるいは、分厚いガラスの壁に、最初から彼女の形をした穴が空いていたかのように。

 如月瑠璃の小柄な身体は、七色に輝く絶対防御の魔法のバリアを、文字通り『何の抵抗も受けずに』あっさりと通り抜けてしまったのだ。

 弾き飛ばされることも、身を焦がすこともない。バリアの表面は、彼女が通過した瞬間にわずかにノイズのように乱れただけで、すぐに元の波打つ光のドームへと戻った。


「な……っ!?」


「ば、馬鹿な……!? 魔法の結界を、ただ歩いて通り抜けた……だと!?」


 玉座に座る国王が、信じられないものを見たというように両目を見開き、愕然と声を漏らした。

 周囲を固めていた近衛兵たちも、そして後方で控えていた翡翠さんすらも、一瞬だけ驚きに目を見開いている。


(スゲェ……! ファンタジー世界における最強の魔法すら、如月さんの前では『ただの物理的なエネルギーの波』として処理されちゃうのか……!)


 僕は、勇者の鎧の中で鳥肌が立つのを感じていた。

 剣も魔法も関係ない。彼女の武器は、ただ『圧倒的な知性』と『すべての事象を物理的に観測する目』だけだ。それが、いかに世界観が異なろうとも、絶対に揺るがない彼女の『フォーマット』なのだ。


 バリアの内側に侵入した如月さんは、そのままスタスタと赤絨毯の階段を上り、玉座で呆然と固まっている国王の、文字通り目の前にまで迫った。


「ヒッ……! き、貴様、何者だ……!」


 王が、得体の知れない恐怖に顔を引きつらせて後ずさる。


「動くな。わしは今、極めてデリケートな物理的観測の真っ最中じゃ。お主の吐き出す二酸化炭素と無駄な情動の振動が、鑑定のノイズになる」


 如月さんは冷たく言い放つと、玉座のすぐ横の大理石の段差に片足を乗せた。

 身長一四七センチという小柄な彼女が、大柄な国王の頭上にある『王冠』を精密に観察するためには、どうしても高い位置に陣取り、上半身を王の頭上へと深く屈み込ませる必要があったのだ。


 彼女は、大理石の段差に足をかけ、バランスを取るために左手を玉座の背もたれに置き、グッと背筋を伸ばしたまま、上半身を王冠のすぐ数十センチの距離まで深く沈み込ませた。


「……っ!!」


 結界の外側でその光景を見ていた僕の口から、再び声にならない悲鳴が漏れた。

 彼女がその体勢を取った瞬間。

 ミッドナイトブルーのコルセット風ドレスの、大きくU字に開かれた胸元が、重力の法則に完全に服従し、限界までその危険なラインをたわませたのだ。


(あああっ! だから、その体勢は本当にダメだってば!!)


 純白の滑らかな肌。そして、小柄な身体からは想像もつかないような、一六歳の少女としての確かな、そして柔らかな起伏。それが、コルセットの締め付けと前傾姿勢の相乗効果によって、王冠を見下ろす彼女の胸元から、今にも零れ落ちんばかりに押し出されている。

 翡翠さんのような暴力的なボリュームではない。しかし、だからこそ生々しく、僕のような思春期の男子高校生の視線を強烈な引力で吸い寄せてしまう、極めて危険で無防備な『女性の渓谷』が、そこには確かに存在していた。


 しかも、彼女の視線の先には王冠があるため、必然的に、その無防備な胸元は、玉座に座って上を向いている王様の顔のすぐ目の前に位置することになる。


「な……ななな……っ!?」

 国王の顔が、恐怖とは全く別の要因で、一瞬にして茹でダコのように真っ赤に染まった。

 彼もまた男である。突如として目の前に迫ってきた、美しいゴシック少女の芳しい香りと、その暴力的なまでに無防備な胸元の開口部を前にして、視線をどこへ向けていいか分からず、完全にパニックに陥っていた。


(頼む、王様! そこは見ないでくれ! 見たら僕が、勇者の剣でお前の首を物理的に刎ね飛ばしてしまうかもしれないから……!)


 僕は、自分でも引くほどに理不尽で身勝手な嫉妬心を爆発させながら、剣の柄をギリッと握りしめた。


 しかし、当の如月さんは、自分がどれほど周囲の男たちの理性を破壊する姿勢を取っているかなど、文字通り一ミリグラムも理解していなかった。彼女の意識のすべては、ただ純粋に、目の前にある一個の『物体』のルーツを解明することだけに極振りされていた。


「……やはりな。近くで見れば見るほど、あまりにも醜悪で、そして美しく計算された『バグ』じゃ」


 如月さんは、右手に持った純銀のルーペを、王冠の正面にはめ込まれた巨大な真紅の魔力石へとギリギリまで近づけ、深いアメジストの瞳を細めた。


「王よ。お主は先ほどから、魔王の脅威だの、国を救えだのと大口を叩いておるが……自らの頭上に戴くこの王冠が、どのような物理的構造を持ち、どのような『情動のルーツ』によって生み出されたものか、少しでも考えたことがあるか?」


「な、何を言うか……! この『太陽の王冠』は、我が国の建国の祖たる初代国王が、神の啓示を受けて作らせた神聖なる宝物! 込められた魔力は、代々の王の精神を安寧に導き、国を護るための……!」


「阿呆の極みじゃな」


 如月さんの氷のような宣告が、王の言葉を無慈悲に叩き切った。


「神の啓示? 精神の安寧? 笑わせるな。この王冠は、お主ら王族を護るどころか、その精神を数百年かけてじわじわと削り取り、狂気へと導くための『呪いの拘束具』じゃよ」


「な……呪い、だと……!?」


「いかにも。サクタロウ、よく見ておけ。これがいかにして作られたか、その物理的な痕跡を今から解体してやる」


 如月さんは、胸元を危うく揺らしながら、ルーペのレンズ越しに魔力石の表面を指差した。


「まず、この中央の真紅の魔力石じゃ。一見すると、光の屈折率を最大限に高めるための『ブリリアント・カット』に近い多面体研磨が施されているように見える。……しかし、レンズを通してミクロン単位で測定すれば、その致命的なズレは明白じゃ」


 如月さんの口から、極めて専門的な、ファンタジー世界にはおよそ似つかわしくない光学の用語が次々と飛び出していく。


「石の下部、パビリオン角と呼ばれる部分の角度が、理論上の最適値である四十三度から、意図的に『一・五度』だけ浅く削り出されておる。さらに、上部のクラウン角も同様に、光の全反射の法則をわずかに逸脱する角度で非対称に研磨されている」


「一・五度……? それが、呪いと何か関係があるのか?」


 王が、顔の赤みを消して震える声で尋ねた。


「大ありじゃ。魔力石というものは、周囲の空間から魔力波長を吸収し、石の内部で反射・増幅させて持ち主に供給する変換器(コンバータ)じゃ。もしこの石が完璧な角度でカットされていれば、光と魔力は内部で美しく全反射し、濁りのない清冽なエネルギーとして王の脳内へと注がれるはずじゃった」


 如月さんは、冷酷な笑みを深めた。


「しかし、このわずか一・五度の意図的なズレが、石の内部に致命的な『光の漏出(ライト・リーク)』と『波長の乱反射』を引き起こしておる。結果として、この魔力石から放たれるエネルギーには、常に耳障りで不快な『微弱なノイズ』が混入することになるのじゃ」


「ノイズ……?」


「そうじゃ。人間には直接知覚できないレベルの、極めて低周波の魔力ノイズじゃよ。それが、王冠を被っている間、お主の脳波に常に不協和音を叩き込み続けておる。自覚症状はないじゃろうが、慢性的な偏頭痛、睡眠障害、そして理由のない焦燥感や猜疑心に悩まされておらんか?」


「っ……!! なぜ、それを……!」


 王は、図星を突かれたように顔色を青ざめさせ、ガタガタと震え始めた。

 どうやら、如月さんの指摘は完璧に的を射ていたらしい。


「それは、お主が日々、この王冠から発せられる物理的なノイズによって、脳の神経細胞を直接削られているからじゃ。……しかし、これだけではない。真の『呪い』は、この魔力石を固定している黄金の台座の方に隠されておる」


 如月さんは、ルーペの焦点を、魔力石の周囲を取り囲む黄金の台座……精緻な装飾が施された部分へと移した。


「王よ。お主は、この王冠を作ったのが『ドワーフの職人』であるという伝承を誇りに思っておるようじゃな。確かに、彼らの彫金技術は物理法則の限界に迫るほどに卓越しておる。この台座に刻まれた、王家の守護を意味する複雑なルーン文字の配列。その線の滑らかさと均等な深さは、人間の手業では到底不可能なレベルじゃ」


「そ、そうであろう! ドワーフたちは、初代国王の偉大さに感銘を受け、自ら進んでこの王冠を打ち上げたのだ!」


「……自ら進んで、じゃと? 本当に、どこまでも救いようのない愚鈍な一族じゃな、お主らは」


 如月さんのアメジストの瞳が、一瞬だけ、底知れぬほどの深い軽蔑と怒りの色を帯びた。

 それは、真実を見ようとしない権力者に対する、知の探求者としての絶対的な冷酷さだった。


「ルーペの倍率を最大まで引き上げるぞ。サクタロウ、お主の目にも見せてやろう。この守護のルーン文字の溝の奥深く、光の届かないミクロン単位の谷底に、一体何が刻まれているかを」


 如月さんが、純白の手袋でルーペの角度を微調整する。

 僕は、バリアの外から目を凝らした。

 すると、王冠の黄金の台座に刻まれた、幅一ミリにも満たないルーン文字の溝の底。そこがレンズによって拡大された瞬間、僕の背筋にゾワリとした悪寒が走った。


「……なっ! 文字の溝の底に……さらに小さな文字が、びっしりと彫り込まれてる……!?」


「その通りじゃ」


 如月さんは、僕の驚愕を満足げに受け止め、王に向かって残酷な真実を突きつけた。


「表面上は、王家を讃え、守護を願う美しいルーン文字じゃ。しかし、その文字の溝の奥底、肉眼では絶対に確認不可能なナノレベルの世界に、彼らは『裏ルーン』……すなわち、表の文字とは完全に意味が反転した、呪詛の逆さ文字を無数に彫り込んでおったのじゃ」


「う、裏ルーンだと……!? ば、馬鹿な! そんな極小の彫金など、いかなる道具を使っても……!」


「物理的な(たがね)では不可能じゃろうな。しかし、極度に集中させた魔力をレーザーのように収束させ、黄金の分子結合を直接焼き切る技術がドワーフにあったとすればどうじゃ? 現に、この溝の底には、溶解と急速冷却を繰り返した微細なサーマル・フットプリントが、物理的証拠として確実に残されておる」


 如月さんは、王冠からルーペを離し、腰を上げて王を見下ろした。

 大きく開かれたコルセットドレスの胸元が激しく上下し、彼女が放つ圧倒的な論理の圧力が、玉座の空間を完全に支配していく。


「この王冠は、神の啓示などで作られたものではない。初代国王が、武力と魔力によってドワーフの誇り高き一族を力でねじ伏せ、灼熱の地下工房に閉じ込め、彼らの技術を不当に搾取して作らせた『強奪の象徴』じゃ」


「な……なんということを……」


「想像してみるがよい」


 如月さんの声が、冷たい地下の工房に響くハンマーの音のように、低く、重く響き渡る。


「日の光を見ることすら許されず、同胞を人質に取られ、憎き支配者のための王冠を打たされる職人の『情動』を。……彼らは、決して表立って反逆することはできなかった。しかし、彼らの誇りと怒りは、決して死んではいなかったのじゃ」


 彼女は、純白の手袋で自身の胸元をトン、と軽く叩いた。


「彼らは、魔力石のカットをわずかに狂わせ、永続的なノイズを発生させる回路を組んだ。そして、このルーン文字を刻む際。彼らは黄金に(たがね)を打ち込む一撃一撃に、一族の屈辱、搾取された痛み、そして王族に対する底知れぬ憎悪という、強烈な『情動のエネルギー』を込めたのじゃ」


 如月瑠璃の情動の視座が、数百年前の歴史の闇を完全に白日の下に晒し出していく。


「この溝の底に刻まれた裏ルーンは、ただの文字ではない。ドワーフたちの『静かなる怒り』の結晶じゃ。彼らは、表面上は完璧な仕事をして王を欺きながら、その本質的な魔力回路の奥底に、王の精神を削り取り、代々の王族を狂気と破滅へと導くための『物理的・魔力的な時限爆弾』を、極めて精緻な技術で組み込んだのじゃよ」


「あ……ああ……」


 国王は、自らの頭上に戴く王冠の真のルーツと、そこに込められた底知れぬ憎悪の深さを突きつけられ、玉座の上でガタガタと崩れ落ちるように震え始めた。


「魔法アイテムといえど、それが誰かの手によって作られた『モノ』である以上、そこには必ず製作過程の物理的痕跡と、作り手の強烈な『情動』が残る。お主らが空想の神話に酔いしれている間にも、この王冠は、数百年にわたりお主らの脳髄を削り続けてきたのじゃ」


 如月さんは、完全に戦意を喪失した王を見下ろし、深く、冷ややかなため息を一つこぼした。


「魔王を倒す前に、まずは自らの頭に巣食う物理的エラーをどうにかするべきじゃな。本当に、人間の空想と傲慢さが生み出すノイズには、辟易させられるわ」


 魔法のバリアという物理法則を無視した超常の防壁を、純粋な波長の解析で通り抜け。

 国宝級の伝説の王冠に隠された『呪い』の正体を、カット角のズレとミクロン単位の彫金技術という、完全なる物理的証拠と情動の視座によって暴き出した少女。


 ファンタジーという強固な設定の夢の世界にあっても。

 胸元が大きく開かれた、僕の理性を破壊するような不釣り合いなコルセットドレスを身に纏っていようとも。

 如月瑠璃の『空想の産物を一切認めず、すべての事象のルーツを物理的に論破する』という絶対的なフォーマットは、ただの一ミリたりともブレることはなかったのである。



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