本当に話したかったこと
誓断輪廻 転生した異世界で課せられたルール。最後の一人が決まるまでにしていけないこと。『人殺し、死、自殺』
カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称
玩狗 転生者、転移者たちの総称
十の牙 デケンティス
この世界でカニスに与えられている10の種族名
異世界転生。
誰もが耳にするその言葉に、疑いを持つことを忘れてしまったのが運の尽き。
私は第二の人生で、やり直しをさせてもらえるのではなく、ただ別の世界でも翻弄され続けるただのおもちゃだったんだと、解した瞬間、頭の中に――『クスクス』と誰かが笑う声が聞こえてきたんです。
その声はやけに神秘的で、数年経っても頭から離れることがなかったあの女神の声。
『かわいそうな私の子。お前は何も悪いことはしてないのに、運命がお前を苦しめる』
その苦しい運命とやらに落とし込んだ張本人が、クスクスと笑いながらそんなことを言いました。
ああ、そうだ。
この声の主は自分を女神とは名乗っていない。
名も、立場も語らずただ別の世界に私を落としただけ…。
出会った時からこうなることは見通していたのだろうか…?
『お前に授けただろう?運命に抗う力を。男と目が合うだけでお前の言うことを聞くその目の名前は愛縛の魔眼。
それを使ってたくさんの男を利用すればいい。この世界で最も効率のいい攻略法は相手を利用すること。
お前はその中で最も強い力をもらった転生者』
攻略…?なんの話だかわからない。
『ああ、そうか…そうだった。忘れていたよ。説明していなかったね。お前がこの世界に来た理由はね…』
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アンナはそこまで振り返り、言葉を詰まらせてしまった。
言葉を詰まらせた理由は俺にはわかる。
誓断輪廻という神が与えた誓いを無関係な人に言うわけにはいかない。
それは自身の弱点でもあるし、巻き込んでしまう理由でもあるから。
「………」
話を中断してしまったアンナに対しカーネは何も尋ねない。
ただただ、アンナが自分の中で話を整理し、続きを話すのを待っている。
普通なら、詮索する。
『アンナちゃんがこの世界に来た理由はなんだったの?』
あのような中途半端なところで、話を中断したら誰だって気になる。
でもこの人は聞かない。
おそらくアンナが話すだけでも辛いのがよくわかっているから。
「私は…そのあと母に連れられ森に逃げました…」
話が飛んだ。
おそらくその部分だけをどう伝えればいいか整理がつかなかったのだろう。
それは仕方ない。
現に俺だって、誓断輪廻のことは誰にも話すことはできない。
だって、人を殺しても、死んでしまっても地獄に堕とされるという脅された状態だ。
易々と話すことなんて…できるわけがない。
「母は王国に逃げるという考えもあったみたいですが、街よりもさらに人の多い王国はさらに危険なのではないかと…それなら森を抜けた先にある、村に逃げる方がいいと考え、近道をしたその森で、母は…魔獣に襲われ…」
街にそのまま残れば、愛縛の魔眼に魅了された男たちがいる。
その時のアンナは仮面をつけていないはずだから、魔眼を制御することもできない。
だから街から出ることも王国を避けたことも判断は間違っていなかった。
だが、準備もないまま森に逃げたことが致命的だった。
「魔獣は小さな私には目もくれず、母を貪り食っていました」
ここにいるもの全員が森を抜けた経験があるから、その判断が間違っていたことがわかる。
武器も持たず、子供を抱えながら森を歩くことの愚かさを。
「そして私はどうすればいいのかわからない時、背後からとても嫌な気配を纏ったあの人と出会ったんです」
『………なんや君、転生者か?』
多分それは俺が二度目に出会った時と同じような感じだろう。
魔獣が蔓延る森の中ですら、迷うこともまた一興だと思うような豪胆さを持ち。
何処に居たって飄々とし、誰に対しても臆さず話しかける。
「私はその人への恐怖のあまり、魔獣に喰われている母のことすら忘れ、ガタガタと震えていました」
リオンという男に出会ったカニスが口を揃えていう「怖い」「不気味」「腹がたつ」
俺とカーネ、そしてマコトはリオンにそのような態度を見せたことがない。
これはただの相性か、それとも何かの能力か…。
「恐怖に怯える私にあの人は『コレ』を私の目の前に放り投げました」
そう言って、アンナは顔につけている仮面を触る。
やはりその仮面が魔眼を制御するためのアイテムで、そしてその仮面を渡したのはリオンか…。
なんとなくわかってはいた。
あの時プリムス村で出会った時、リオンはアンナのことを「可哀想な子やねん」と言っていたから…。
あの男は、アンナが魔眼を持っていることも、そして転生者であることも知っていた。
何か見通す力を持つのかわからない。だが、あの男の底は見えない。
アンナの目はこのゲームに参加させられている男にとって一番恐ろしい能力。
その能力を抑制する力がある仮面を、自分の手元からアンナに託すなんて、普通ならしない。
本来なら、アンナのような強力な能力を持つ異性は一刻も早く『脱落』してほしいものだ。
なのにそれほど強力なアイテムを、運命に振り回される哀れな子だという理由だけで、その仮面を授けたのだろうか?
もしそうなら…あの男は何がしたいのだろうか?
本当に同情しただけなのか、それとも他に意図があったのか。
あの男の行動は、俺にはわからない。
「投げられた仮面をつける前に、色々なことが重なりすぎて私は気を失ってしまいました…そして」
俺たちと出会った夜に繋がる…。
リオンからアンナを託されたあの夜、アンナはすでに仮面をつけていた。
おそらくあの男が、アンナが気を失っている間に仮面をつけてあげたのだろう。
そう考えると本当に善意だったのだろうか…?
「私のこの力のせいで、たくさんの人を巻き込んでいます…父と母だけじゃなく、マットさんやドルゴさんまで…私は皆さんと平穏に暮らす資格がありません」
それはアンナが悪いわけじゃない。
アンナがそうなるように仕向けた女神が悪いし、利用価値があると判断し攻めてきた奴らが悪い。
平穏に暮らしちゃいけないなんてことは決してない。
だけど…。
「私がこの村にいたら、またこの間のような敵が攻めてくるかもしれません」
その可能性は否定できない。
「今回この村を襲ってきた連中の名は、ヴィオレンティア帝国。私たちが住むアルビオン王国の敵国になります」
ここ数日、アンナが姿を見せなかったのは、襲ってきた相手の情報を調べていたからか。
「そしてヴィオレンティア帝国の皇帝、ダミアーノ・ヴェルン・ファルケンハルトは私と同じ転生者です」
ああ…アンナが本当に話したいことがようやくわかった。
「私はその皇帝の暴虐を止めるため…この村からは…出ていきます…」
アンナはその目の力を使い、ダミアーノという皇帝を魅了するつもりだろう。
だが魅了した後をどうする?そのままでいれば、アンナの父が襲われた時のように…。
……そうか。
おそらく…自分で『処理』するつもりなんだろう。
だから、さっき肝心な部分を隠し、話を飛ばしたのか…。
人を殺したら地獄に行くと説明した後に、「私は敵国の皇帝を魅了した後、殺すつもりです」と言えば、カーネは絶対行かせない。
それを見通し、隠した。
「はあ…」
まるでアンナが出ていくことがわかっていたように、「やっぱり」と言いたげな、大きなため息つくカーネ。
「それ…アンナちゃんじゃなきゃダメなの?」
止めるでもない。
ただ代替案があるならば、そうしてほしいと言いたげな質問。
だが、おそらくアンナの中で答えは決まっているのだろう。
「……はい」
と、この部屋に入る時と同じ、覚悟を決めた顔ではっきりと一言だけ答えた。
活動報告でもお伝えしましたが、このたびXとInstagramのアカウントを開設いたしました。
■X(旧Twitter):@TsumujiQuiltro
更新報告のほか、作中に登場した【犬種】の詳しい補足や裏設定などをポストしていく予定です。
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こちらは私自身が世界の犬たちから知見を得るためのリサーチ用です。投稿は少なめですが、私のフォロー欄を覗いていただくと、珍しい犬種や魅力的な犬たちに出会えるかもしれません。
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