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シベリアンハスキー

誓断輪廻せいだんりんね 転生した異世界で課せられた転生者たちのルール『人殺し、死、自殺』


カニス 正式名称 カニス・アミークス この世界での犬の獣人種の名称

アンナ「シアン最低…」


仮面をつけているアンナがどんな表情をしているかはわからないが、その発言と低い声、垂らした尻尾を見れば機嫌が悪いのは一目瞭然。

明らかに誤解をしている。


確かに(はた)から見れば脇に銀髪の美女を抱えベッドに連れ込んだように見えるかもしれないが俺が連れ込んだのではない…それに俺は動けないのだ。

しかもルカは男だ。


シアン「アンナちょっと待って、まずは話を「アンナちゃんだ!」ぐえっ」


俺が言い訳をするより前に扉側を見えるように寝ていたララが立ち上がり俺を踏み越えてアンナに近寄っていた。


アンナ「え?…あ、ララちゃん?」


お腹を踏まれた…痛い。

というかなんでアンナとララが面識あるんだ?

アンナはララ達と同じプリムス村の出身ではないし、ララ達はあの洞穴で一緒に暮らしていない。

本来この二人は面識はないはずだが…


ルカ「不思議そうな顔してる」

シアン「え?」

ルカ「この村にシアン達が到着した後、俺たちはみんなに会ったよ。マコトもシュウもね。ただシアンのことと、この部屋のことは俺たちは知らなかった。なんで教えてくれなかったんだろう?シアンがどこにいるか探してたのに」


ああ…そうか。

俺は一週間近く意識を失っていたらしいから、その間にみんなは再会していたのか…

その時にプリムスの村で生まれていないソラや、あの人(リオン)から預けられたアンナと面識ができたのか。


しかしなぜこの部屋に俺が寝てることを隠していたのだろう?

ルカとララになら教えてもいい気も……


いや、ダメか…

俺が目が覚ました時、カーネはとてもくたびれていた。

ズタボロになった俺がいつ目を覚ますのかもわからない不安の中、俺に会いたいといろんな人が部屋に立ち寄ろうとしたら、カーネはもっと疲れていただろう。


この二人はいつも陽気で明るいのがいいところだが、その陽気さも時には邪魔になることもあるかもしれない。

流石にボロボロで意識がない俺をこの二人も見たら陽気ではいられないとは思うが、

俺だけじゃなくカーネのことも考えれば、誰も近寄らないようにみんなが遠ざけていたのかもしれない…


いろんな人たちに気を使わせてしまっているな…今の俺は…


アンナ「ララちゃん…男の人のベッドにそんな簡単に入ったりしたらダメだよ?」

ララ「なんで?」

アンナ「なんでって…だってララちゃんすごく美人だし…勘違いされちゃうから…」

ララ「勘違い?何を?」

アンナ「えっと…」


アンナが困っている…アンナが言っていることはよくわかる。

この二人、めちゃくちゃ顔が美形で頭が良さそうなのに…なんというかすごく天然だし、陽気だし、警戒心もない…

シベリアンハスキーは番犬に向かないとよく言われるがこの二人を見ているとその理由はよくわかる。

こんな美人が人のベッドに気軽に入るのはとても良くない。


ララ「でもルカもシアンと一緒に寝てるよ?」

アンナ「男の子同士が一緒のベッドで寝るのはいいの」


アンナ「とにかく、男の人が「ラウラウラウラウ」寝てるベッドに簡単に入ったら「ラウラウラウラウ」ダメだ…って今の何?シアン?」


今の変な声は当然俺じゃない…

俺はアンナがお説教している最中に今みたいな変な声を出して妨害なんてしない。

ただ俺の方からその変な声が聞こえているのは事実だ。


ルカ「ラウラウラウラウ」

その変な声の発声主は俺の隣でベッドに顔半分を埋め、退屈そうにしているルカ。

ルカは昔から退屈だと感じた時にこれを始める。

例えそれがお説教されてる最中でも関係なく、半目で「ラウラウ」言い始める。


顔は超絶イケメンと言っていいほど美形なのに、その美形からは考えられないほど変な声や表情を見て何度も驚かされた。

別にこれはアンナのお説教を邪魔しようとしてやっているわけじゃない。

本当にただの癖。


そしてこれを始めるとだいたいこの後の行動も決まっている。


ルカはガバッと立ち上がり、「ん〜」っと伸びをした後、頭をブルブルと振り、キリッとした顔で何か考えた後、もうここには用はないと言わんばかりに窓を開け部屋を出ていった。


なんでそんなことをすると思う?俺にもわからない…


でも昔からルカはそうなのだ…

ララはまだ話が通じるがルカはよくわからない…

決して悪い子ではないことだけは確かなのだが、何を考えているかは読めない。


ララ「あ、ずるっ!あたしも行く〜!」

とララもルカの後を追うために窓から外に出て行ってしまった。


アンナ「………」

シアン「………」


残されたのは唖然としているアンナと、ベッドをぐちゃぐちゃにされ銀色の毛まみれにされた俺の姿。


俺は密かに思った。

あれはシベリアから流れてきたブリザード…

その場を掻き乱し後、凍らせて去っていく…


俺が元気になるまではしばらくは来ないでほしいと…



俺の服やベッドについたルカとララの毛を払いながらアンナが

アンナ「ルカくんやララちゃんとは昔から仲良いの?」

と聞いてきた。


仲がいいかと聞かれると少し困る。


シアン「ん〜プリムスの村にいるときに面識はあったけどそんないつも一緒ってわけじゃなかったよ?村も敷地が広大だったから北と南でちょっとだけ分かれていて、俺とマコトとシュウは南。ルカとララは北に住んでたから」


アンナ「そうなんだ…どうやって知り合ったの?」

普段はあんまりこういうことを聞いてこないアンナだが、今日は珍しく色々聞いてくるな。どうしたんだろう?


シアン「えっと…プリムスの村の時、あの二人が俺たちの住んでる家の方に遊びにきたんだけど、その時人間の農具を壊しちゃったんだよね。その怒られているところをたまたま俺が出会(でくわ)したんだけど…ララはドヤ顔していて全く反省してるそぶりがなくて、ルカはさっきみたいに「ラウラウ」言い始めてて…

俺もさっきのアンナみたいにびっくりしちゃって…何をしてるんだろう?この二人…って凝視してたら目があって…追っかけまされた…

仲が良かった。というよりもあのキャラだから強烈に印象に残っているっていう方が正しいかも?」


なんか今思い返すとあの二人って有り余るエネルギーを発散できてなくて落ち着きがなかったイメージがあるなぁ…

こっちに村に来てどうなったんだろう…?あんまり変わってないのかな…?


アンナ「私と会った時は落ち着いた子だと思ったんだけどなぁ…」

黙ってるとクール系にしか見えないからなぁ…あの二人…


アンナ「ねえ…シアン。せっかく二人っきりになれたからちょっと聞きたいことがあるんだけど…」


? 

なんだろう…?二人じゃないと聞けない話?

……

………いや、アンナが俺のことをそんな目で見ているわけないだろう…


シアン「何?」


アンナ「どうして、あんな危険な真似を自分でやろうとしたの?」


それは魔熊を退治する時にやった作戦のことだろうか?

どうしてと言われても…それしかなかったとしか言いようがないが…

他にあるとしたら…


シアン「お父さんとトラさんはみんなに必要な人だから…」


俺があの作戦をする瞬間『シュウやソラから父親を奪いたくない』という気持ち。

あの気持ちは今も第一にあるが、俺が目を覚まして色々聞かされてからあの作戦は俺がやって良かったんだって改めて思った。


それは俺がこうやってベッドに寝ながら治療を受けれているのは誰のおかげか。


この村の人たちはとても優しく、善人だと聞いた。

流れ着いた俺たちに衣食住を提供してくれ、俺の治療までしてくれている。

ただし当然無償ではない。

最初のうちは無償で提供できても、俺たちには次向かうべき場所はまだないからしばらくここに滞在することになる。

そうなったら誰かがこの村で利益を上げて滞在できるようにするしかない。


それを真っ先に解決してくれているのがやはりマットとトラさんだ。


あの二人が毎日森に出て狩りをし、食料や毛皮を取ってきてくれるから俺たちは衣食住を失うことなくこの村に滞在できている。

あの二人は本当に俺たちにとって必要な人なんだ。


シアン「あの二人がこの村で頑張ってくれているおかげで、俺たちは安心してこの村で暮らせている…だからあの時はあれで良かったって思うよ」


アンナ「自分を犠牲にしようとか。そういうのじゃない…よね?」


魔熊が瀕死でも動いた時、そういう気持ちが一ミリもなかったわけじゃない。

自分が喰われている間に、二人が逃げれるならいいなという気持ちも少しはあった。


だけど


シアン「うん。家族を悲しませたくなかったから、死にたいとは思ってなかったよ」


マットもカーネも妹のソラもそして…アンナも悲しませたくない。

グランじいちゃんは俺たちのために犠牲になってくれたおかげで俺たちは助かったことは事実だが、残された者たちはずっとその心に傷を残したまま生きていくことになる。

その心の傷はとても痛い。ずっと痛い。


だから同じ気持ちを他の人に味合わせないために、必死に、がむしゃらになることはあっても命を投げ出したりはしない。そう誓った。


アンナ「そっか…なら良かった…あの時カーネさんにはああ言って説得してたけど、本当はやけになって自己犠牲になろうとしてた、なんて聞いたらお説教するところだったよ」


ああ、そういえば…


『安心してお母さん。俺はあの日、グランじいちゃんを置いて行ってしまったことを今でも後悔してるし何もできなかった自分を今でも恨んでる。

だからまたあの日と同じことを絶対に繰り返したくない。

それにここでお父さんもトラさんも死なせない』


なんて言ったんだっけ…


アンナ「シアンが大怪我した状態で追いついてきたから、カーネさん本気で動揺してマットさんに怒鳴ったんだよ?マットさんもすごく責任感じてて本当に大変だった…」


ああ、そうか…あの二人はそんな話を俺にはしてくれなかったけど。

それはそうだよな…自分の子供が死にかけで帰ってきて動揺しない親はいないよな。

カーネがマットに怒鳴るなんて姿を俺は今まで見たことがない。

よほど動揺していたのか…


アンナ「だからあんまり無茶しないでね?私だって心配したんだから…」


シアン「うん。わかった。ありがとう…教えてくれて…そしてごめんね。心配かけ…ってうわ!」


俺がお礼と謝罪を言い終わるや否や、アンナが俺の胸の中に顔を埋めてくる。


ちょっと待ってくれ…今そんな雰囲気じゃなかったじゃん…!


アンナ「やっぱりルカくんとララちゃんの匂いがする…」

そりゃあの二人が俺のベッドに侵略してきてましたし、犬の嗅覚があるならあの二人の匂いはしっかり残ってるでしょうね!っていうかなんで俺の胸に顔を埋めてるの!?


シアン「だからあれは俺が連れ込んだわけじゃなくて…」

アンナ「わかってる。ちょっと意地悪しただけ…シアンの匂い最近嗅いでなかったから今日は誰にも邪魔されずに嗅げるかな?って楽しみにしてたのに、他の人の匂い混ざっちゃったってちょっと拗ねただけ」


それはどういう意味なんだ…

アンナはララに勘違いさせちゃうとか言っていたけど、俺にはこっちの方が勘違いしそうだ。


ああ、なんで俺の周りにいる女性陣は俺の情緒を振り回す人が多いんだ…!

さっきのシリアスな雰囲気はどこいった!


俺がどうしていいかわからず動揺しているとアンナはスルリと胸の中から離れ


アンナ「私もこの村で役に立てるように匂いの追跡の訓練を今頑張ってるんだ。だからまた頭スッキリしたくなったら匂い、嗅がせてね?」


そういうと部屋を出て行った…


また匂いを嗅がせてねって…また俺の胸に顔を埋めてクンクン嗅ぐのか…?


なんかさっきかなり密着したから少し感じたけど…

俺だけじゃなくて、アンナの身体も成長してるんだよ…?

今度は拒否しよう…心の健康に良くない…



カーネ「ねえ、シアン。そろそろトイレ行きたいんじゃない?」


俺の介助のために部屋に来てくれたカーネには申し訳ないんだけど


シアン「ごめんお母さん。数分待って」

今の俺は違う意味で動けない…


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