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2) 一時の目覚め

ストックができたので、投稿です。

 NPOの支部に連絡を入れ、軽ワゴンに飛び乗ってから、30分でとある一軒家に着いた。場所こそは明かすことはできないが、NPO法人サポーターズ・サポートの支部ある。

「支部長、遅くなりました。」

「マスターこんにちは。今日のお嬢様はまだ眠っているわね。」ジーパンに長Tシャツのマロンブラウンのショートカットの女性が出迎えに来た。支部長、佐井村洋子である。

「はい、電池切れのようです。詳しい話は事務所で。」

女マスターは車からサポーターの少女を担ぎだし事務所兼保護サポーターのシェルターに入って行った。

 その担ぎ方に「体力あるんだからお姫様抱っこにしたら良いのに」と支部長に言われて、

「言われて気付きました!!軽ワゴンの板の上で寝てるから、早く寝床に連れていってあげたくて。」

「あなたらしいわね。男前だわ。」支部長はくすくすと笑っていた。


 NPO法人サポーターズ・サポートとは、人間からサポーターへの法的侵害から保護する名目で、各サポーター製作会社から寄付を受けて設立されたNPO法人だ。   元々はサポーターがAIなどのエラーで人間に危害や迷惑行為をかけないように作られた団体だっが、人間側の強欲によってサポーターが被害をうけたり、犯罪の加担がある実情から、サポーター管理法が制定される前からサポーター保護に転換した経緯を持つ。その活動から政府に陳情する機会があり、サポーター管理法の骨子にその、陳述内容が反映されているのである。

 女マスターが所属している西日本のとある県の支部で、人間のスタッフが支部長とボランティアスタッフ10名、法律顧問に弁護士1名、サポーターの在住スタッフ2名、ボランティアスタッフ5名で運営されている。


 玄関から先に行くと甲高いアニメ声が「マスター、お帰り!!」と、出迎えてくれた。

「あ、リコ。ただいま!!」事務所を兼ねた

リビングダイニングから小学校の6年生くらいの背丈で細身の巨乳の少女がドアから現れた。

 サポーターの在住スタッフのリコである。スタッフ間でもロリ巨乳乙と密かに言われているサポーターである。女マスターも彼女の胸に癒されたことが何度かある。それゆえに「私は癒し系」とは、本人の言である。

「今日は眠り姫状態なの。」

「うん、そう、電池切れ。」

「その子のダークブラウンのショートの髪型から思うに初期方のH社スタンダードタイプだと、リコは思うな。」

「目はドングリ眼のタヌキ顔。ワーキングロイド時代の初期量産型」

「そうなんだ!!私よりお姉ちゃんなんだ。」

その二人の会話に支部長が割り込む。

「そこのおしゃべりコマドリは口をつぐむ。サポーターちゃんを寝かすことが先決、リコ、ベッドの用意は」

「ベッドメイクはもうできてるよ。」

「場所はどこ。」

「客間だよ。」

「マスターは客間に眠り姫を連れていって。リコは眠り姫のボディチェックの用意をしておいて」 

「「りょ!!」」ネットスラングで了解を伝える女マスターとリコであった。


 ベッドにサポーターの少女を寝かし、リコは学生ボランティアの吉良ミマリといっしょに少女にボディチェックをするところだった。

「眠り姫、いやいや、サポーターさん、今からボディチェックするので服を脱いでいただきます。まずは後ろの首筋からです。」

 リコはサポーターを横向けの体位にして髪をかきあげた。

「USBがない、僕みたいに改良が必要かな。」

「身体のほうは。」ミマリはやおら毛布をひっぺがそうとしたので「ダメダメ、電池切れ個体だけどホスピタリーを上げて、丁寧に!!」と、リコに注意を受けた。

 ミマリはサポーター製作会社M社のロボット大学校に籍を置く女学生だ。ロボット工学や機械工学の職人としては腕はプロ並みだが、コンプライアンスにおいては経験値が少なく、倫理観に薄い。その点で、学校から出向という形でサポーターズ・サポートの有償ボランティアになった経緯がある。

 そのようなミマリだから、電池の無いサポーターを粗雑に扱ってしまう事をことさらリコは、チェックするのである。

「う、わかった。先に声がけしながらするんだよな?」

「うん、そうだよ。」

「今から服を脱がします。」

「はい!!」

サポーターの少女は白い夏用ワンピースを着ているだけで、秋深い今では見た目が寒々しいものがある。

「リコ、服は温存するの。」

「その服は捨てるからハサミで切っていいよ。」

「うんわかった。ハサミで服を裁ちます。」

ミマリは服を切っていき身体の隅々をチェックする。皮膚にあたるラバー素材に経年の劣化はあるが改造はみられない。

「改造の所見なし。」

「良かった。不法改造箇所が無いのは良いことだ!」

「まだ、精密検査があるからわからないけどね。」リコとミマリは安堵の表情をした。

 サポーターは仕事の職種や家庭の事情で頭だけでなく身体も改造できる。だが、改造には製作会社の正規品以外は法律では認められていない。

 まだ、イリーガルな出所で身元不明扱いのこのサポーターのケースでは、最悪の場合は廃棄処分が法律での措置となる。この少女の場合ボディチェックでは、措置対象から外れたのだ。

「服を着せたら終わりだね。」

 二人は服をサポーターの少女に着せた。それから、ボディチェック表に所見を記入し事務所に行った。


リコとミマリがボディチェックをしている頃、

女マスターと支部長の佐井村が事務所にいた。

「ところで、マスター、詳しい話って言うのは?」

「今日のサポーターなんですが頭の接続端子を見ていると全て初期使用でいじられている形跡がありません。」

「スペックは旧来型通りと言うわけ?」

「ええ、どういう経緯で中古屋で売られたか知りませんが、サポーター管理法に引っ掛かりますね。」

「確かに、あまりの旧型の場合ワクチンが受付られなかったり、知識のなさから社会適応ができなかったりだったかしら、スペックをあげないとスクラップになるって言うのは。」

「はい、ワクチンを受付け無いことは特にきついですね。ウィルスの保菌者として周囲にウィルスの媒介者になる危険性が高いですし、」女マスターは眼鏡の奥でシリアスな瞳になる。

「ソフトで知識が無いぶん犯罪者の手先になる可能性が高い、か…。」

「はい、スクラップにならないためにもスペックの底上げが必要なんですが、法的管理者の候補が15歳ですからね。」

「若気の至りで買っちゃったはいいけど、管理がね。」

「そうなんです。維持費も大変ですし。」

「新しく管理者を探すことになりそうね。明日、私は精密検査に行くから吉良さんとロボット大学校行ってくるわ」

「なるべくお金がかからないようにですね。」

「ええ、資金はどこでも大変だからねNPOなんて。」

「そうですね、無いなら知恵を絞れですからね」

「「はぁ~」」二人して溜め息をついた。

 廊下から人がやってきた。リコとミマリだ。

「終わりました!」

「ボディチェックだけだけど、不法どころか改造を受けた痕跡がありません。手付かずって感じですね。」

「?!、どうしたの、深刻そうな顔をして」

「あのサポーターちゃん、法的にヤバイの。廃棄処分にならないようにするために資金が結構かかるの。」と女マスター。

「「えぇーー!!」」二人は大きな声を上げていった。会話の最中に。ドスン、と音がした。2階からだ。場所からするとリコとミマリがいた客間から音がした。今はサポーターの少女しかいないはず。

「なんだろう」とミマリ。

「お化けかな」と怯えながらリコ。

「お化け苦手だったね。私が見に行くから」

「と、言いながら寝顔を見に行くんでしょ」と、支部長の佐井村がイジワルに言う。

「えぇ、事実だから否定しません!!」

 女マスターが、立ち上がり、すたすたと2階の客間に移動した。


「サポーターちゃん、どうしたの」

 客間に入り電気をつけると毛布にくるまりながらベッド下に頭から落ちているサポーターがいた。

「大丈夫?!」あわてて女マスターはサポーターに駆け寄った。女マスターは床に面していたサポーターの額を見てみた。

 その瞬間サポーターの瞳が見開いた。女マスターは本能的にサポーターの瞳を見つめた。10秒程見つめあった後

「あなたが私の管理者なんですね。これから、よろしくお願いします。」

サポーターが言った。反射的にヤバイと、女マスターは思った。サポーターが今言った言葉は初めての起動時に言う言葉であり、取り扱い説明書の言葉で言えば契約完了の合図でもある。

「ちょっと、ま、待って、私が登録されてしまった。」

「はい、そうです!管理者さん、なんてお呼びしたらいいですか?」サポーターはニコニコしながら言った。

「これはまずい!!」とも思ったが反面、可愛いしこのままでも良いか、とも思う。

「マリア・・・。」

と、女マスターは呟いた。可愛いあの子を思い出す。私のミスで・・・。

「私はマリアって言うんですか?可愛い名前ですね。」何度か初期化を受けたらしいサポーターはやや、くせのあるアクセントで話しかけてくる。

「感傷に浸っている場合じゃない。お嬢ちゃん

ごめんなさい、首筋見せてくれる。」

「はい、管理者様。」

管理者と言われるのは、嫌だったな。でもマスターと呼ばれるのは、嬉しかった。

感傷は広がる。

今は仕方がない。スタッフとして対応せねば。

女マスターは首筋を見てみた。カバーを外し起動ボタンを見てみると、起動中の点灯がなかった。おかしいと、女マスターは思った。

 配線やボタンなどの物理的な故障かもしれない。ミマリんの出番だな。

 廊下ではリコとミマリの呟きが聞こえた。

「お嬢さん方、聞き耳たててないで入って来たら。」

「あれ、ばれてたの。」リコとみまりがいたずらを見つけられた子供のように小さくなって入ってきた。

「はいミマリん。聞いていい。」女マスターはみまりに聞いた。

「はい?!」

「電池切れのはずが初期化されて、私が管理者として契約されました。電源オフにしようとしてもスイッチが利かないかもしれません。その答えは?」

「初期化ですが、今はできませんね。後は電池切れになるまで待つか、それくらいしか思いつきません。」

「そうなのよね。」

女マスターは溜め息をついた。

「リコの提案!!マスターが管理者になれば。」

「はい、却下。一応管理者候補がいます。」

「えぇーー。こんなになついているのに」

女マスターが見てみるとサポーターの少女は女マスターに寄り添っていた。

 心が痛む。女マスターは小さな溜め息をついた。

 よく見ると電池が切れたのかスリープモードなのかわからないが、少女はいつのまにか寝ていた。


 リコがサポーターの少女をみることになり、女マスターとミマリは一階の事務所に戻った。

「欲望に負けて眠り姫の顔をみて萌えてたかっただけなんですけど、契約完了になっちゃって、正直、困りました。」

「リコはそのまま管理者になればと言うし、マスターさんはどうなんですか。」ミマリはお茶を飲みながら、マスターに訊いた。

 リコには見抜かれたか、と思いながら心の傷をきつく閉じる。

「そういうことは考えられないわ。店もあるし。」

「逆に店だけならサポーターが切り盛りできますよ。」

「うぐ。」

「それにアルバイトをいれるより費用効率は良いですよ。」

「うぬぬぬぬ。」

「それは私も思うわ。」

 ミマリと女マスターの会話に支部長が割って入る。

「でもまだなんでしょう。気持ち的に。」

「えぇ。」

 ミマリは目を見開いたが、プライベートに立ち入ることはせず、言葉を飲んだ。

「今日はリコと私に任せておいて。それに今日は眠り姫しかいないから、大丈夫よ。そうそう、ミマリン、明日は学校で、午後から研修組まれたからあなたの出番よ。先生期待してるからって、言ってたわ。」

「はい。」

「マスターも明日は15歳の管理者候補と面談お願いね。」

「忘れてました。明日1時に面談いってきます。」

「以上で、今日のボランティアは終わり。ミマリンは帰りどうするの。」

「私が駅まで送って行きます。もう9時だし。」

「え、良いんですか。」

「女の子独りだと危ないしね。」

「助かります。」

「そうね、今日は色々あったし、今日はお疲れさま。また、明日ね。」

「「はい、さようなら」」

 二人は家を出て車に乗り込んだ。

 ああ、こんなに夜はふけていたんだ。

 女マスターは今やっと時間を感じることができた。それだけ、自分は必死になりすぎていたんだ。と、反省した。

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