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閑話 ラシェリ

予定通りに本日2話目の投稿になります。

人間界の中央に位置する国ロトーネ、その町の豪華な屋敷が建ち並ぶ場所、貴族街と呼ばれるその場所の中でも端に位置する屋敷の中の一室で三人の男女、そしてこの屋敷の主と思われる豪華な服に身を包んだ太った男が会話をしていた。


「屋敷の者からの情報じゃ、冒険者ギルドに白銀級のフェリックが来ておるらしい。お主らは暫く町には出ないようにしてくれ」


「フェリックって神眼のフェリックか?」


フェリックと聞いて反応する三人の中で、一人だけ立って話に加わっていた男が太った男に聞き返す。


「そうじゃ、神眼とも評されるフェリックならお主らの変装を直ぐに見破るじゃろうな。フェリックと戦いたいのならそれでも構わんがの、そうでないのなら暫くは屋敷で大人しくしていてくれ」


その言葉に立っている男が頷き、そして嫌そうな顔をする。


「話はわかったがよ、その姿と喋り方は俺の前では止めてくれって言っただろう。貴族なんて力も無い癖に威張り散らす存在は見ていてイライラするんだ。人間の中で最も不合理な存在だ、合理的な俺にはなんで力のある冒険者達がわざわざ貴族に従うのか全く理解出来ねぇ」


男が吐き捨てる様に言うと、豪華な身形をした男から黒い煙の様な物が立ち上ぼり姿が一変する、その姿は太っていた先程の姿とは真逆で細身、髪は透き通るような銀色の長髪に白い肌、そしてどこか作り物の様に感じる笑顔、細い目に金色の瞳だ、その男、ラシェリが立っている男に言葉を返す。


「ふふ、バラムさんの好きな合理性で物事を進めるには数が必要です。人の上に立ち、その数を纏める力を持つのが貴族なんです、全種族の中で一番弱い人間がここまで栄えたのは数の力ですよ。まぁ今の貴族に人を纏め正しく導く、そんな力を持つ存在がいるのかは疑問ですがね」


「お前達の下らない話は後にしろ、それよりフェリックは何をしにロトーネに?奴は人の多い場所には滅多に近付かないんじゃなかったのか?」


ソファに座る大柄な男が横から口を挟む。


下らないと言われたラシェリは肩を竦め、そして話を続ける。


「フェリックは普段外周で過ごす事が多いそうなんですが、どうやらその外周の魔物の様子がおかしいと報告に来たようですね」


フェリックの言葉に大柄な男が目を見開く。


「まさか気付かれたのか!」


「さぁどうでしょう?でもギルドの動きも活発ではないし少しおかしいと感じた程度じゃないですか?現に私も長年冒険者をしていましたが貴方達から聞くまでは全く変化に気付きませんでしたよ」


薄笑いを浮かべながら話すラシェリに立っている男、バラムが再び口を挟む。


「お前は人間ばかり甚振っていたから魔物の変化に気付かなかったんだろ」


ラシェリは呆れたように話すバラムにも肩を竦めて返す。


「でもそのおかげで貴方達とも知り合いになれたんですよ、貴方達も私のおかげでロトーネで活動がしやすくなったでしょう?その為に我慢して美味しくもないこの屋敷の主の血を飲んだんです。まぁ私も貴方達から聞いた知識のおかげで闇魔法の扱いにも大分慣れてきたのでお互いにいい結果になったでしょう」


そこでずっと黙って話を聞いていた女が口を開く。


「私も人間の血は好きだけどね、血を飲んだ相手の姿に変身出来る闇魔法なんて聞いた事ないわよ。貴方の先祖はどんな魔族だったのかしらね」


女はそう言いながら赤い液体の入ったグラスを口許に運んで傾ける。


そんな女にラシェリが答える。


「私は昔から絶望した人間の血を飲むのが好きでした、どうして他の人間と違うのだろうと不思議に思っていましたが今ならわかります、きっとご先祖様の本能が体に残っているのでしょうね」


「はっ、お前は俺等よりよっぽど魔族らしいよ。お前が甚振った後の人間の顔は正直俺等でも可哀想に思えてくるぜ。人間の村が燃えてるからなんだと思って見に行ったらよ、絶望した顔で死んでる人間の隣で恍惚の表情を浮かべながら血を飲んでる人間がいるんだもんな、正直目を疑ったぜ」


バラムの言葉にラシェリは心外といった顔をする。


「それは言い過ぎです、フルレさんは生きたまま人間の血を抜き取り、その顔を見ながら血を飲むのが趣味なんですよ?私はきっちりと殺してから飲むんです、自分の血を目の前で飲まれながら死んでいく人の方がよっぽど可哀想でしょう」


そう言ってグラスを飲み干した女に目を向けるラシェリ。


「ふふ、人間の動脈に細長い管を刺すとそこから少しずつ血が流れて来るの、その味がどんどん絶望で変わっていくのを楽しむのよ」


唇についた赤い液体を舐め回すように舌を這わせるフルレ、ラシェリはそれを見て微笑む。


そんな様子を見ていたバラムはやれやれとでも言いたげに首を振る。


「お前らの趣味には口出しはしないがあまり派手に遊ぶ事は控えておけ、フェリックに限らず他の冒険者も魔物の変化に気付く可能性もある、そこでお前らが派手に動くと裏で魔族が暗躍していると思われかねない。ただでさえ計画が遅れていたので今年のアリィ様が寵愛を下さる時期は派手に動いたんだ」


「ふふ、その最後の締めに集めた魔物が最初の町で失敗しましたからね」


その時を思い出しているのかラシェリは楽しそうに笑う。


「あれはお前がスゥニィフゥドの存在を教えないからだろ、知っていたら他の場所に標的を変えたのによ。折角集めた魔物が一つの町も潰せず壊滅なんて笑えやしねぇ」


「あら、貴方だってそれを私に知らせずに直ぐに逃げたじゃない。私があのままスゥニィフゥドに気付かず計画通りに裏門に行ったら消滅していたかもしれないわ」


そう言われてバツが悪そうに頭をかくバラム。


「俺もあの時は冒険者の連中に囲まれちまって逃げるのに必死だったんだ、でもフルレの姉さんならスゥニィフゥドにだって勝てるんじゃねえのか?」


「必死に逃げたねぇ、まぁいいわ。スゥニィフゥドね、私じゃ一対一でも勝てるかわからないわ、それに冒険者がいるあの状況じゃ確実に無理よ。ガロスならどうかしらね」


話を振られた大柄な男、ガロスは無表情で答える。


「スゥニィフゥドか、森人の里で大人しくしていればいいものを里を飛び出し冒険者になり、その冒険者時代に我々の同胞を殺し、邪魔をしてくれた森人だな。さて、俺が楽しめる程の相手ならいいがな」


淡々と話すガロスの言葉を聞いてバラムが一つ口笛を鳴らす。


「まぁ、ガロスさんなら大丈夫だろうな、それに引退して長いスゥニィフゥドより他の白銀級の方が厄介だ。ライザとウォルフには話を通してるんだろ?」


バラムはそう言ってラシェリを見る。


「ライザは元々思考がこちら寄りの人間ですからね、手配されている私の話も聞いてくれましたよ。ウォルフは白銀級になるまでに受けた扱いで貴族を相当に憎んでます、彼も私達に協力してくれるでしょう。アカネはヒズールから出ないでしょうし、残っているのはフェリックとシャローラですね。フェリックが少し感付いてるかもしれませんがシャローラはフェリックよりも更に風来坊なのでどう動くかわかりません」


ラシェリの説明を聞いてガロスが頷く。


「居場所の掴めないシャローラは今は放っておけ、厄介なのは神眼と呼ばれるフェリックだな、お前らもフェリックがロトーネを出るまでは派手に動くな、今更気付かれたからと言って何も出来んとは思うが次のアリィ様の寵愛を受ける時期までは万全を期したい」


ガロスの言葉に三人は頷く、そしてバラムが思い出したように口を開く。


「厄介と言えばスゥニィフゥドの弟子だか知らないが厄介そうな冒険者がいたな」


スゥニィフゥドの弟子?そう聞き返すガロスにバラムが説明する。


「あぁ、さっきフルレの姉さんに言った冒険者に囲まれて逃げるのに大変だったって話、その俺を囲んだ冒険者の中にいた奴等なんだけど、俺等や森人が精霊に語りかける言葉を参考に昔の人間が作った言葉、呪文って言えばわかりやすいかな?その呪文を使う冒険者がいたんだ。今では呪文を使う人間なんて珍しいだろ?」


そう言ってバラムはラシェリに尋ねる。


「そうですね、私も貴方達の精霊魔法を見るまでは魔法はイメージだけで使う物だと思っていました。確かに呪文を使う冒険者がリストルにいましたね。ですがあの三人は私の獲物です、絶対に手は出さないで下さいよ」


ラシェリに言われたバラムが肩を竦める。


「今の内に殺してた方が合理的だと思うんだけどな、あいつらはきっと強くなるぞ、それこそ白銀級と呼ばれる程に」


その言葉を聞いてラシェリが嬉しそうに笑う。


「ふふふ、だからいいんじゃないですか。それに彼等は仲間というんですかね、そういう存在をとても大事にしているようでした。金や権力に執着する人間は絶望してもあまり美味しくないんです、だけど他人を大事に思う人間が、その人間を殺されて絶望するととても良い味になるんですよ。彼等の深く絶望した時が楽しみです」


「そんなに上手く行くかねぇ、人間一人を深く絶望させるのも大変だぜ?だから俺等は大攻勢を使って村や町を襲うんだしな、少数に固執するより大勢を絶望させた方が合理的だ、その中には勝手に深く絶望する人間も何人か出てくるしな」


バラムの言葉を聞いてラシェリの体を黒い煙が覆い姿を変える。


「その姿がどうしたんだ?」


「この姿はその三人の内の二人の父親の姿です、彼女らは私が村を襲った時の生き残りだったようなんです」


「何度も村を潰したお前が潰した村の事を覚えているのか?」


不思議そうに尋ねるバラム、ラシェリは再び姿を変える、そしてその姿で薄笑いを浮かべながらバラムに答える。


「これが彼等の姉の婚約者、兄と言ってもいい存在です。彼女らに言われるまで気付かなかったんですがね、この男の血はとても美味しかったので思い出す事が出来ました、この姿を使えば深く絶望してくれると思いますよ」


ラシェリの言葉を聞いていたバラムは首を降る。


「はっ、悪趣味だねぇ。けどそこまで言うならその三人が邪魔になった時はお前がキッチリと責任を持てよ」


「えぇ、任せて下さい」


その後も四人は夜遅くまで話を続けていった。






サブタイトルを最初、幕間にしようかと思ったんですが、幕間って章と章の間に入るイメージがあるので閑話にしました。


そうです、次の章ではラシェリが出る予定はありません。


ならなんでここでラシェリの話を入れたのかというとラシェリの手配書の話と、リズとレイナの村の話が出たので丁度いいかなと思って入れました。


次話からはまた更新のペースを戻す予定ですが、展開の遅い本作をどうかよろしくお願いします。

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