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寄り道

リーヴァ達と別れてから一日がたった今、俺達はラザに向けて馬車を走らせている、そこで俺はある実験をしていた。


「もっ、もう止めてくれ」


叫ぶセッタに構わず首に手を触れ、魔力解体を使いセッタの体を流れる魔力を削り、そして首を流れている魔力の道を完全に断ち切る。


叫んでいたセッタがそこで静かになる、首から脳に向かう魔力の流れを完全に断ち切る事で魔力枯渇と同じ様に気絶したのだ、ミリエメの体の魔力を削り流れを弱めた時をヒントに、魔力の流れを完全に断ち切れば気絶するのではと予想したのだが予想通りだ、魔力枯渇と違い体内に十分な魔力が残っているので数時間で目が覚めるが相手を確実に気絶させる事が出来る様になったのは大きいな。


それでも手を触れて一瞬で、という訳ではないのでアルヴァ達の様に直ぐに自決されたり、戦闘で動き回る相手には無理だが何かの役には立つだろう。


人体実験のようで気が引けるが…、そう思いながら昨日から数えて都合六回目の気絶をしたセッタを見る、だらしなく涎を垂らして気持ち良さそうに眠るセッタ、まぁいいか、気絶しているセッタを放ってリズの隣に行く。


「天を…、天を移ろう、泡沫の、力を…、力を…、あ〜駄目だぁ」


「はい、水」


コップに飲水で水を入れてリズに手渡す、ありがとうとコップを受け取るリズの顔は汗だくだ。


今俺達はラザに向かっているがその途中でセッタを引き渡す為に進路上で一番近い町を目指している。


俺達はラザを出た時はスゥニィの助言で野営に慣れる為にリストルまでは町に入らずに移動をしていた、なので町の場所はリズが昔人伝に聞いた情報が頼りだ、情報通りなら明日にはラザやリストルより少し小さめの町につくらしい。


この世界には地図は出回ってないし町の人達は基本一生を生まれた町で終える、なので他所の町の情報などは町から町を移動する商人や冒険者、何かの事情で町を移った人等から聞くしかないのだ。


その次の町に向かう馬車を操っているのはダリだ、ダリは御者も出来るというのでダリに御者を任せ、俺達は力をつける為に馬車の移動時間を利用して色々と試していて、リズは詠唱、レイナはテオとセオに呪文を教えている所なのだがなかなか上手くいかないようだ。


「どう?」


「空気中にある魔素に干渉出来てる気はするけどそれを集めるのが難しいね」


一気に水を飲み、ふぅと一息つきながら答えるリズ。


「まずは自分の周りの魔素だけじゃなくて離れた所の魔素まで集める事が出来るようにならないとね」


リズは空気中の魔素を集める所で苦戦しているようだ、俺の詠唱なら力を手繰り身に纏う、レイナの詠唱なら力を束ねて堆く、積み上げ誘う一入に、の部分だな。


その人がどういうふうに魔素を使うか、というイメージを、言葉としっかりと関連付けないといけない、俺の詠唱よりレイナの詠唱が長いのはレイナの魔法がより多くの魔素を必要とする為だ、リズはそこに苦労しているようだ。


「魔素の事はなんとかイメージ出来る様になったんだけどさ、それを自分の周りに集めてどう使うかって所でシックリ来る言葉が無いんだよね、他にも色々な言葉を教えてよ」


魔素に対するイメージも個人で違う、俺は普段から一メートル以内の魔素を魔素操作で自由に操れるがその範囲の外の魔素は使えない、なので魔素操作の範囲外の魔素には当て所ない物というイメージを持つ、レイナは魔素の事を魔力になる前の雑じり気の無い物と捉える事で生粋という言葉を使う、どうやらリズは人のイメージで魔力にしなければ直ぐに流れて消えてしまう魔素の事を水に浮かんでは消える泡のような物と捉えたようだ。


「まぁ焦らない事だよ、そろそろ日も傾いて来たしさ」


言いながら汗だくのリズに清浄の魔法をかけた所で御者台から声がした。


「ダリさんどうしましたか?」


「いえ、町が見えてきたんですがこのまま門まで進んでもいいんですかい?」


そう言われてダリの向こうに目を向けると確かに壁が見えてきた、リズが聞いた情報が間違っていたのか、馬車を牽くニィルの脚が早いのか、ダリの御者が上手いのかはわからないが早く着く分には助かる、まだ日は暮れてないので門番も外にいるはずだ、俺はダリにお願いしますと声をかけ皆に町についた事を伝える。


「もうすぐ町につくよ、セッタを門番に引き渡せば特に町には用はないけどどうする?」


俺達は野営に慣れているし俺が土魔法で竈や食卓を作るのに慣れてきた事もあり、レイナとセオの料理スキルもあるので外でも十分な食事が出来る、馬車の荷台も四角い箱に幌がついただけの簡素な物だがその分広いし布も沢山あり、寝るのも困らないので町に入るかどうか聞いてみる。


「急ぐ旅でもないですし、トーマさんもテオも昨日は夜番で疲れてるだろうから今日は宿でゆっくり眠った方がいいと思いますよ」


「たまにはレイナとセオも自分で作らずゆっくりと夕食を食べてもいいんじゃない?」


別に野営でも大丈夫だと思っていたがレイナとリズがそう言ってくれたので町に泊まる事にする、リストル、ポルダ、ジーヴルと何かしら用があって町に泊まったが用が無いのに町に泊まるのは何気に初めてだな。


そう思いながら門に並ぶ列についたので馬車を降りる。


「ダリさん、ダリさんはこれからどうしますか?この町で別れるならそれでもいいですよ」


御者台の側まで行きダリに尋ねる、セッタには内緒でダリには町に引き渡す気は無いと伝えてある、その時のダリはビックリしていたが色々と話をして納得してもらった、町に引き渡す方が引き渡される方を納得させるというのも変な話だがダリは元々盗賊をするような人間では無いと言うことだろう。


「出来ればラザまで一緒に行ってもいいですかい?御者は任せてもらってもいいんで」


そう言われてわかったと頷く、ダリは御者の他に魔物の解体も出来るので俺達も助かるしな。


そろそろ夕方なので町に入る人は多いがダリと話をしている内に俺達の順番になる、俺は荷台からセッタを降ろし門番に盗賊だと話して引き渡す、セッタはまだ気絶しているので煩くなくて丁度いい。


門番が詰め所から衛兵を呼んできたのでその人と詳しく話をしていたが、ランゼ盗賊団を返り討ちにしたと言うと衛兵は疑いの目を向けてきた、俺達はダリ以外女子供のパーティーだからな。


なので先にカードを見せていた俺以外の、リズとレイナの銀上級の冒険者カードも見せ、馬車からランゼの持っていたハルバートを持ってきた事で漸く信じてくれた、このハルバートはランゼの武器として有名だったようで使い込まれていたのもあり信じてくれたようだ。


ランゼ盗賊団の一員として無事にセッタを引き渡す。


セッタはこの後、衛兵に尋問され罪が確定すると犯罪奴隷になる、尋問には対象が正直に話しているのか嘘をついているのかを魔力の反応から察知する道具が使われる、鑑定の道具と同じくらい貴重である程度の大きさ以上の町にしかないようだがこの町にも一つあるようだ。


もう一度、セッタは盗賊団の仲間だという事をしっかりと確認され、頷いた所でセッタの奴隷としての値段から手数料を引かれた金貨十八枚を受け取る、これでもし後でセッタが盗賊団の一員じゃないと判断されたら俺が罪に問われる事になるのだ、そして金貨を受け取り門番にお礼を言って町に入ろうとしたが再び門番に声を掛けられた。


「そう言えばランゼには賞金が懸かっていたはずだ、冒険者ギルドで確認出来ると思うぞ」


有名な犯罪者には賞金が懸かり、冒険者ギルドにも討伐の依頼が出たりするのは知っていたがランゼにも懸かっていたのか、門番にお礼を言って今度こそ町に入る。


町、門番に聞いた所リガルという名前らしい、に入ると夕食前の準備や家路につく人で道が混んでいた、それほど大きくは無いが活気のあるいい町だ、門番から聞いていた通りに馬車を走らせ先ずは冒険者ギルドに行く、リストルでも売ったのだがここに来る途中でも何度か魔物に襲われたのでランゼの討伐報告と一緒に素材と魔石を売ろうと思ったのだ


馬車を外に待たせてリズと一緒にギルドに入る、今は依頼を終えた冒険者でギルドが混む時間帯だ、ハルバートを持っている俺に視線が集まる。


「おい、あんなガキが大層な武器を持ってるぞ」「俺の方が似合いそうじゃねぇか?」「馬鹿、軽々と持ってるじゃねぇか、只者じゃねぇぞ」「それより隣の女可愛いな。声かけてみようかな」


中に入ると色々な声が聞こえてくる、俺はその声を聞いて、ハルバートをわざとらしく少し大袈裟に片手で軽々と肩に担ぐ、そしてリズの事を可愛いと言った男だけを睨み付けながら素材倉庫に向かう、絡まれたらどうしようと内心はドキドキしているが、それでもリズに手は出させないぞと牽制しておかないとな。


ギルドの奥、素材倉庫の方も人は多いが報告カウンター程では無いので素材査定カウンターに向かい素材と魔石を査定してもらう、査定が終わると本来は報告カウンターに行って報酬を貰うのだが報告カウンターはまだ混んでいる事もあり、ランゼの事を向こうで報告するよりはと思い査定してくれた職員にハルバートを渡す。


「ランゼ盗賊団のランゼを討伐しました、確認して下さい」


「えっ!?」


周りに聞かれないように小声で言ったのだが査定してくれた職員が大きな声をあげたので視線が集まる、だが少しして視線は離れていった、報告カウンターで言わなくてよかった。


「賞金首のランゼを討伐しました、これはその時の戦利品です」


そう言って職員にハルバートを渡す、十キロ以上はあると思われるハルバートを重そうにしながらも確認し、カードを借りていいですかと言われたので俺とリズのカードを渡す。


職員はハルバートとカードを持って報告カウンターの方に行ってしまった。


倉庫内にある素材を暫く眺めていると職員が戻ってきて、二階に上がって下さいと言われたのでギルドの二階に上がる。


そう言えば折角銀上級になったのにギルドの二階を使った事が無かったなと気付きリズと一緒に苦笑いをする、ランゼの事はわざわざ混む一階で報告せずに最初から二階に行けばよかったな。


二階は一階と違いそれほど混んではいなかった、この時間で混んでいないのならリガルには銀上級以上の冒険者があまりいないのだろう。


そう思いながらカンウターに行くと素材を査定してくれた職員がそのまま対応してくれた。


「こちらが素材と魔石の分、こちらがランゼ討伐の報酬です。確認して下さい」


そう言って職員が一枚の紙を差し出す、紙にはランゼの似顔絵と特徴、そして賞金額金貨二百枚と書かれていた。


二百枚が高いか安いかは俺には判断出来ないが取り合えず出された金貨を確認し、しっかり数えてから大丈夫ですと言って腰の革袋に入れようとする、革袋には既に五百枚の金貨が入っていて、そこに今回の二百枚を入れるとパンパンだ、それを見ていた職員が声をかけてきた。


「トーマ様はギルドの口座を利用されていないようですが利用されますか?」


口座?初耳だぞ?リズを見るとリズも知らないようなので職員に確認してみる、職員の説明によると冒険者は依頼で町を移動出来る様になる銀上級になるとギルド間での口座が使えるようになるらしい、手数料として年間金貨一枚、パーティー間で使うなら追加で二枚、合計金貨三枚の手数料がかかるがどこの冒険者ギルドでも使えるようになるようだ。


マジか…、俺達が銀上級になった時、俺はキュクロプスにやられて死にかけていたし、リズは昇級やキュクロプスの後始末等を一人で対応していたので忙しかった、その後は直ぐにラザを出たのでそこら辺の説明を全く受けていなかったな、スゥニィも教えてくれなかったが金に執着の無い森人だからかな、取り合えず手持ちの金貨が増えて困っていたのでかなり助かる、俺はリズを待たせて一旦馬車に戻り、皆で分けて持っていた金貨を預かると再びギルドに戻る。


「た、確かに、金貨二千四百枚受け取りました」


ランゼの懸賞金と銀貨以下を抜いて、今までの報酬を全て預ける、職員が少し引き気味だがまだ宝石もあるんだよな。


取り合えずこれで大分楽になった、金貨は馬車に置きっぱなしにするわけにもいかず皆で分けてもかなりの量になっていたからな。


俺が一息ついている隣でリズが真剣に一枚の紙を見ていた、目を向けて見るとラシェリの手配書だった。


「それは?」


「あぁ、トーマを待ってる間に職員に聞いてみたんだ。ラシェリはリストルの一件で賞金首になったみたい」


リズから受け取り詳しく見てみる、ロトーネで結構有名なだけあって似顔絵もしっかりと書かれている、賞金は金貨二千枚、ランゼの十倍だがラシェリの危険性を考えるとかなり安い気がする、リズと二人がかりでも敵わなかった相手、それも手加減をされてだ、その実力に加え変装もあり、人の精神にも悪影響を与えるスキルを持つラシェリ、真眼で変装を見破れる俺は変装には対応が出来るが出来れば会いたく無い相手だ。


「では手続きは終わりですね、今回はパーティーでの申請なので兎の前足の方ならどこの冒険者ギルドでも引き出す事が出来ます」


ラシェリの事を考えていると職員が手続きを終えてカードを返してきた。


「カードに記載されている討伐した魔物を見るとトーマ様、それにリズ様も金下級への試験を受ける資格は十分ですがお受けになったりはしないのですか?特にこの…、タイドゥトレントという魔物は銀上級ではとても倒せる魔物ではないと思うのですが…、それに倒した魔物の数も…」


タイドゥトレントを倒した俺達に金下級の試験を受けないのか聞いてくる職員、結構有名な魔物だったようだし、リストルの悪夢やジーヴルに向かう途中でもかなりの魔物を倒したので試験を受けないかと聞いてくる職員も反応が少しおかしいな。


聞かれた俺はリズと顔を見合わせる、が答えは決まっている。


「俺達にはまだ少し早いですね、もう少し経験を積んでそれから考えてみます」


そう答えはしたがハッキリ言って銀上級で困る事は今の所無いんだよな、金級の事はあまり考えていなかったが一度リズとレイナに相談してみてもいいかもな、そう思いながら苦笑いをしている職員にお礼を言ってギルドを後にする。


「待たせてごめん、結構時間かかったよ」


外に出ると辺りは真っ暗になっていた、テオが眠そうにしているので一言謝ってから急いで宿に向かう。


ギルドにいる間に既に夕方の鐘も鳴ってからそれなりに時間もたっていたので道行く人も疎らになっていた、宿につくと馬車を預ける、そして部屋を取るのだが二人部屋なので部屋を三つ取る事になる、という事は…。




「ダリさん、夕食も一緒に食べましょう」


遠慮するダリを引っ張って食堂に降りる、既に皆は席について待っていた。


「兄ちゃんなんだか元気無いけど大丈夫か?部屋で休んでた方がいいんじゃないか?」


大丈夫、大丈夫だよテオ、別にリズと一緒の部屋になるかもとか、レイナと一緒の部屋になるかもとかは全然考えてなかったし!むしろ一緒の部屋で生殺しよりはこの方がよかったし!


部屋割りは俺とダリ、レイナとセオ、リズとテオだ、まぁ無難にテオがセオかリズどっちかと一緒になるよな。






眠いけど眠れない、リズ(レイナ)眠ったかな?起きてるかな?


「リズ(レイナ)もう眠ってるの?」


「まだ起きてるよ、トーマ(さん)も眠れないの?」


「うん、少し緊張してるのかも。いつも馬車で一緒に眠ってるのに変な感じだね」


「ふふ、そうだね」


「……………あのさ」


「なに?」


「そ、そっちに行ってもいいかな?」






って感じのやり取りをやりたかったけどしょうがないよな、ここはリストルじゃないしな。


妄想をやめて力なくテオに笑顔を見せ、食事を済ませる、食事の後は一度テオを俺達の部屋に連れていき、体を流してからリズがテオを呼びに来るのを待つ、そしてテオを見送った後はやる事が無いので直ぐに寝る事にした。


翌朝、リガルの町を後にする、体調もバッチリだ、久し振りに皆を鑑定してみる。



トーマ:14


人間:冒険者:異邦人


魔力強度:96


スキル:[魔素操作] [真眼] [魔力回復:大] [熱耐性] [痛覚耐性] [直感] [身体操作] [格闘術] [魔素纏依] [炎魔法] [詠唱]




リズ:14


人間:冒険者


魔力強度:92


スキル :[採取] [身体強化:特大] [部位強化] [弓矢] [剣術] [魔力操作] [風魔法]




レイナ:12


人間:冒険者


魔力強度:92


スキル:[治癒魔法] [雷魔法] [風魔法] [身体強化] [詠唱] [複合魔法] [魔力操作:大] [料理]




テオ:10


獣人:ライカンスロープ


魔力強度:55


スキル:[身体強化:大] [嗅覚] [魔力操作] [部位強化]




セオ:10


獣人:ライカンスロープ


魔力強度:54


スキル:[身体強化:大] [嗅覚] [魔力操作] [料理]




リズが遂に風魔法を覚えたな、魔力強度の伸びが悪いのは相変わらずだ、そこら辺の冒険者や魔物に負けない程には強くなってると思うがまだまだ俺達より強い人や魔物は沢山いる、ヒズールは結構魔物も強いようだしヒズールで少し魔物を狩るのもいいかもな。


そう思いながら再びラザに向けて馬車を走らせる。



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