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ジーヴル到着

東の空からうっすらと白が広がり星が消えていく、そろそろ太陽の昇る時間だ。


季節もすっかり冬に変わり空気が澄んでいる、何もない平原の朝はかなり冷えるがスゥニィに餞別として貰った肌着は魔力だけではなく体温も調整してくれるようでかなり温かい、あの後余った素材で何着か作ってくれたがこれからの季節に助かるな。


珈琲を飲みながら体を内と外から温めているとレイナの魔力が動き始めたのに気付いたのでレイナの分の珈琲も入れる。


昨日は食事の後、遅くまで話をしたが獅子の鬣のメンバーもまだ眠って三時間程しかたってないのに何人かの反応が動き始めた。


「トーマさんそろそろ朝食の準備をしますね」


レイナが馬車から降りて来たので珈琲を渡す、リズとセオはまだ寝ているようだ、レイナは珈琲を飲んで直ぐに朝食の準備を始めた。


「レイナ、他の人達もまだ起きたばかりだし出発は遅くなりそうだからゆっくりで大丈夫だよ」


レイナはそうですねと笑顔で返して料理を始める、俺はレイナの笑顔に癒された後、珈琲を飲み干し料理が出来るまで体を動かす事にした、最近はなかなか時間が取れないので久し振りだ、ゆっくりと型を繰り返すと自分でも魔力の質が濃く力強くなっているのがわかる。




トーマ:14


人間:冒険者:異邦人


魔力強度:93


スキル:[魔素操作] [真眼] [魔力回復:大] [熱耐性] [痛覚耐性] [直感] [身体操作] [格闘術] [魔素纏依] [炎魔法] [詠唱]




そろそろ魔力強度も三桁が見えてきたな、俺が自分のステータスを確認しているとレイナから声がかかる。


「トーマさん、そろそろお姉ちゃんとセオを起こしてきてもらえますか」


レイナに頷き自分に清浄をかけてリズとセオを起こしにいく、テオは今日もエーヴェン達の馬車だ。


四人で朝食を済ませ、ジーヴルの事を先に知っておく為にリズから話を聞く。


「トーマ、先に言っておくけどジーヴルでは色々不愉快な物を見ることになると思う、だけど我慢してよね」


まずリズに釘を刺された、町には奴隷も沢山いるし貴族達は少し前のクリスみたいな考えが当たり前らしい。


この世界の奴隷、それは労働力として確立されていてテオやセオの様に親に売られてという時もあるが、殆どは借金が払えずに奴隷になったり自分を身売りして自ら奴隷として働いたりする、どうしてもお金が無い人の最終手段として奴隷制度があるようだ。


犯罪等を犯した者も奴隷にはなるがそういう奴隷は町中では使われず山や森、古くなった街道の整備といった人の少ない場所で国が行う事業の労働力になるようだ。


そして貴族はクリスの様な高圧的な態度が当たり前らしく、夫人や公女のように柔らかい物腰の人もいるが人を物として見る考え方は変わらないので気を付けてと言われた。


俺達が話をしているとリックがテオを連れて歩いてくる。


「よう、お前ら昨日は凄かったな」


俺は魔法でリックとテオの椅子を用意して二人を座らせる。


「森でも凄かったがお前らは広いとこだともっと凄いな、嬢ちゃんの雷魔法、トーマの消えない炎、リズちゃんなんて姿が見えないのに魔物の首が飛ぶって西にいた奴等が言ってたぞ、こんなに凄いのに名前が売れてないのが不思議なくらいだ、たまにお前らの様に突然出てきて名前が売れる奴もいるけどお前らは別格だな」


リックは昨日の興奮冷めやらぬといった感じだ、昨日は酒は飲んでないはずなのに朝から元気だな。


「コイツも凄かったぞ、素早い動きで雑魚とはいえ一撃で倒してたからな」


リックがテオの頭に手を置きながら話す。


「それでな、お前らジーヴルでも一緒に行動するだろ?その間テオを借りたいんだ、コイツに俺の弟達を紹介したくてな」


獅子の鬣のメンバーはジーヴル出身の者が多く、リックもジーヴルに家があるようだ。


「兄ちゃん、リックが弟達に修行をつけてくれって言ってるんだ、だからリックの家に泊まってもいいかな?」


余程仲良くなったのかテオはリックを呼び捨てだ、ジーヴルでは俺達は公爵の家に泊まる事になっているがテオがそういうならいいかと俺はリックにテオをお願いする事にした。


「わかった。じゃあテオはリックと一緒に行動して、何かあったらエーヴェンさんに伝えてくれればいいからな」


「ありがとう兄ちゃん、ちゃんとリック達と一緒に仕事もするからな」


仕事か、今まではただ俺と一緒に行動するだけだったテオも獅子の鬣のメンバーから色々と学んでいるようだ、テオの成長が嬉しい様な寂しいような…。


「じゃあまた後でな」


リックとテオはまた前の方に戻って行ったので俺達は出発するまでジーヴルでの行動について話し合った。







「トーマ、起きて」


何となくリズが起こしに来るのを鋭くなった感覚で気付いていたので直ぐに起きる。


「ジーヴルについたよ、もうすっかり夜だから入るのは明日だけどね」


馬車を降りると辺りはすっかり暗くなっている、昨日エーヴェンが言っていた様に少し無理して夜も進んでいたみたいだな。


「そろそろ夕食も出来るよ、準備が出来たら来てね」


リズにわかったと返事をして後ろを振り返る、するととても大きな壁があった、ポルダ村の壁もかなりの大きさだったが一回り以上の大きさだ。


そして壁の向こうでは夜なのに空間把握に沢山の反応がある、城下町だけあって壁も大きいし夜でも起きている人が多いな、壁の周りにも俺達以外にも結構人がいて夜営の準備をしている。


「トーマまだ?」


俺がこの世界での都会という物に少しワクワクしているとリズが早くと急かしてくる、慌ててごめんと謝って皆の所に向かった。


夕食を済ませるとリズは早々に馬車に戻る、今日はあまり休まず馬車を走らせたのでお疲れのようだ、レイナ達と話をしてねと言って欠伸をしながら歩いていった。


昨日は襲撃もあって眠れず、今日はずっと御者をしていたからつかれたんだな、そろそろ俺も御者を覚えないとな。


リズを見送ってからレイナ達と最後の確認をする。


「お姉ちゃんと昼に話したんですけどジーヴルでは私達は公女と一緒に、トーマさんはエーヴェンさんと一緒に行動する事になりました、屋敷の中でも私達はエレミーさんの部屋に寝泊まりする予定です」


俺は昼はいらないと言ってずっと眠っていたのだがその時にエーヴェンが来て話をしていったようだ、確かに男の俺が公女の部屋に行く訳にはいかないがテオもいないし俺はジーヴルでは一人で行動するのか、少し不安だが大丈夫だろうか…。


「じゃあ私達もそろそろ眠りますね、お休みなさい」


俺はレイナとセオにお休みと言って焚き火の側にいく、火を見ながら一人で考え事をしているとエーヴェンが歩いてきた。


「やぁトーマ君、何か考え事かい?」


いつも通り爽やかな笑顔のエーヴェン、クリスが何も言わなくなって夜番や雑用をするようになったエーヴェンは最初に会った時の気障な感じが消えて本当に生き生きとしている。


「エーヴェンさんこんばんは、実はテオがジーヴルではリック達と行動する事になってリズ達もエレミーさんと一緒に行動するから俺は一人で大丈夫かなって、俺はかなり田舎者だから」


苦笑いをしながら喋る俺の前にエーヴェンが座る。


「トーマ君何をいってるんだ、トーマ君は俺と母さんと一緒に城に行くし、時間がある時は俺も含めて獅子の鬣のメンバーを鍛えてもらう予定だよ、一人になる暇なんてないと思うよ」


は?城に?俺が口を開けているとエーヴェンが、あれ?という顔をする。


「聞いてないのかい?リックがトーマ君の指導でかなり動きがよくなったって言っててね、テオ君も兄ちゃんの修行は凄いんだぞってメンバーに言ってたらしくて俺からトーマ君に皆を鍛える様に頼んでくれって言われたんだ、リズさんに話をしたらトーマ君ならきっと引き受けてくれるよって言ってくれたからてっきり聞いてるものだと思ったんだけど」


いや、リズから聞いてないよ、それより修行というか訓練は俺も好きだから構わないけど城に行くなんて聞いてないぞ。


「あ、あの、修行をするのは構わないんですが、城に行くって言いませんでしたか?」


戸惑いながら話す俺にエーヴェンは当たり前じゃないかという顔をする、俺が寝ている間に何か色々と話が進んだのか。


「エレミーは屋敷にいるから護衛はいらないと思うけど一応何があるかわからないし、一番可能性があるのは毒だけどそれもセオちゃんがいるから大丈夫だって事で母さんの護衛はトーマ君に決まったんだ。相手の本命はエレミーだと思うけど母さんも狙われるかもしれないからね、それで外に出るならトーマ君は感知スキルがあるし大勢で行動するよりトーマ君一人の方が頼りになるって事でリズさんと話し合ったんだ」


レイナは町中では戦力が落ちるので対象が二人いるなら俺とリズが別れるのはわかる、だが城に行くのは何もわからない俺より村長の娘として少しは教養があるリズの方がいいんじゃないだろうか。


「エーヴェンさん、さっきも言ったけど俺はかなりの田舎者で城での作法なんて何もわからないですよ?俺は城の前まで行ってそこで待機していた方がいいんじゃないでしょうか?」


なんとか城に入らない方向になるようにエーヴェンに話す、城なんて入ったら何か失敗しそうだ。


「ははっ、そんな事か。リズさんが言ってたけどトーマ君は仲間が馬鹿にされると我慢出来ないけど自分の事はそんなに気にしないって聞いたから大丈夫じゃないかな?最低限の事は俺が教えるしね。それとトーマ君も城に連れていくのは訳があるんだ、城には刺客を仕向けたエスターヴ家もいるだろうからね、トーマ君にはエスターヴ家を実際に見て、魔力も覚えてほしいんだ」


今回の元凶が城にいるのか、それを覚えておけと、それなら仕方ないか。


「わかりました、でも城に行く前に色々と教えてくださいよ?俺は本当に何もわからないですからね」


「そこら辺の話はリズさんから聞いたよ、ずっと生まれた村で父親から鍛えられてたんだってね、それで父親が亡くなって村を出てから直ぐに森人の師匠がついたからそんなに強いっだって言ってたよ」


エーヴェンの言葉に久し振りに父親の事を思い出す、最近は父親の事を思い出す事も無くなっていたな、リズ達と地球の話をする時以外は地球の事も思い出さなくなってきたからこの世界に順応してきたのかもな。


町の近くなので魔物の襲撃も無く俺はエーヴェンから朝まで城での作法をみっちりと教えてもらった。






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