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クリスの依頼

「ゴーレムが…こんな…簡単に」


刺客の覆面の下からくぐもった声が聞こえる。


俺はただの石になり崩れ落ちたゴーレムに反応が無いことを確認して刺客に向き直る。


リズの所はそろそろ魔物の反応が無くなりそうだしエーヴェンの所もリックが獅子の鬣のメンバーを連れて助けに行っているので大丈夫だろう、エーヴェンが倒したのか無機質な魔力の反応も無くなってるし後は雑魚だ。


「くそっ」


空間把握で他の状況を確認していると刺客が俺に向けて細かい風の刃を撃つ。


『氷面鏡』


それを氷の鏡で跳ね返す、そして風の魔法に乗じてその場を逃げようとした刺客に詰め寄る。


「くっ、化け物か」


逃げられないと悟ったのか刺客が外套の中からナイフを取りだし繰り出してくる。


ゴーレムよりも数段遅い、その攻撃を余裕を持ってかわし焔を解いた腕で刺客の腹を殴り付ける。


「ぐっ」


刺客は苦しそうに呻きながら倒れる、殺さずに情報を得られるだろうか、呻く刺客を見ながらどうしようかと考えていると刺客が急に先程とは違う苦しみ方をし、口から血を吐いて動かなくなった、魔力の反応も無くなったのでどうやら自殺したようだ。


「死ぬ事が怖くないのか…」


簡単に仲間を殺し、最後に自分も殺した刺客を見ながらポツリと呟くと後ろからレイナとセオ、そしてクリスが駆け寄ってくる。


「トーマさん大丈夫ですか?」


心配してくれるレイナに大丈夫だと伝え刺客を指差す。


「襲撃の中心人物だと思う、殺さずに捕まえようと思ったんだけどね、毒を飲んだのか血を吐いて死んでしまったよ」


俺の言葉にレイナもそうですかと呟く、そしてクリスが北の状況を聞いてくる。


「エーヴェンさんの方はどうなってるんですか?」


「リックさんが獅子の鬣のメンバーを連れて合流してるので大丈夫ですよ、そろそろ戻ってくるはずです」


俺の言葉にクリスはほっとした顔をする、公爵の馬車も残りのメンバーが守っているので大丈夫だな、俺は電光石火と活性化を解く、二十分程使っていたが魔力は半分以上残っている、籠手と具足で魔力を効率よく使えたおかげかな。


俺が籠手と具足を確認していると西の魔物を片付けたリズが戻ってきた。


「お疲れ、その様子だと大丈夫だと思うけどどうだった?」


リズの問いに刺客を指差しながら答える。


「この倒れてるのが襲撃の中心人物、自分で毒を飲んだみたいで死んでしまったよ、リズの所は?」


「私の所も全員殺したよ、手加減すると何が起こるかわからないからね」


だよな…ただ、襲ってきた人間を殺すのは当然の事なんだけどまだ慣れないんだよな、気持ちを切り替える為にリズに呪文はどうだったか聞いてみる。


「練習した呪文は使えた?」


「実戦で使ってみたけど拍車は凄く使えるね、物事に勢いをつける、だっけ?直線にしか進めなかった縮地が右足、左足でそれぞれ方向転換出来るしその度に速度が上がってさ、正に勢いをつける、だったよ」


拍車は右足と左足に一回分ずつの魔力を纏って任意で発動出来る、一度使った後は両足を地面につけないといけないので連続で使う事は出来ない。俺の拍車は単純に一歩の速度を上げる事か、空中に右足と左足で足場を一回ずつ作れる、リズの拍車は縮地を三回連続で使えるようだ、しかも方向転換出来るしその度に速度が上がるので縮地の使い勝手が良くなったと喜んでいる。


リズの感想を聞いて同じ魔法でも随分と効果が違うもんだなと思う、俺は魔素操作があるし、イメージも人それぞれで違うからな。


「弓の方はまだ使えない?」


「そうだね、風魔法がまだ上手く使えないからもう少し練習しないと矢が作れないんだ。でも刀は凄いよ、前も切れ味は凄かったけど今は切った手応えが無いくらいだよ」


リズがスゥニィから貰った弓は魔力を矢にして放つ事が出来るみたいだが風魔法が使えないと上手く矢を作れない、縮地は風の魔力でアシストして速度をあげているようだがリズにはまだ風魔法のスキルが無いからな。刀の方はタイドゥトレントの魔力と馴染む程に切れ味が上がっていくようだ。


「レイナの杖はどうだった?」


「この杖は凄いですね、思ったより霹靂神の範囲も威力も上がっててびっくりしました。魔力操作と杖の扱いに慣れれば範囲を狭くする事も出来そうです」


レイナが自分の身長程の杖を大事そうに抱えながら話す、俺が見ても前より魔法の範囲も威力も凄かった、 三百匹の魔物、その倍以上の範囲を雷が覆っていたからな、大規模過ぎて使い所が難しいが現状は一番殲滅力があるので範囲を調整出来るなら使い勝手もよくなりそうだ。


「セオはどうだった?」


セオはレイナのフォローだけであまり戦闘はしていないがクリスを助けた時の動きはよかったな。


「籠手と具足が魔力の流れを整えてくれるのでいつもより素早く動けました、あと指輪が魔力の調整をしてくれるようで消費もいつもより少なかったと思います」


俺の籠手と具足もそうだったしスゥニィの餞別はかなり皆を助けてくれそうだ、テオはリック達と北に行っているので後で聞いてみよう。


「有り難う」


俺が皆の新装備の使い心地を確認しているとクリスがセオに頭を下げた。


「風魔法を撃たれた時、僕は避けることは出来なかった、助かった」


クリスはセオにお礼を言い、頭を上げると俺達にも礼を言う。


「貴方達にもお礼を言いたい、正直ここまでの事をする相手とは思わなかった、僕達だけではきっとここで全滅していたと思う。貴方達の事は良く思っていなかったが認識を改めるし今までの事も謝罪する、すまなかった」


俺はまだお前の事を良く思って無いよ!と、ここで言うのは狭量過ぎるよな、俺は苦笑いを浮かべてクリスの謝罪を受けとる。


「クリスさん、頭を上げて下さい。俺はセオに言った耳欠けという言葉、それを撤回してくれるなら他は特に気にしてません」


許してもいいがセオに言った言葉だけは撤回させないとな、そうクリスに言うとリズが手を繋いできた。


『トーマは私達の事になると頭が固くなりすぎだよ、今までのクリスさんの発言は少し横暴だったけど貴族の価値観ならおかしくはないよ、トーマが私達の事を想ってくれるのは嬉しいけどね』


魔力を通してリズの言葉が頭に直接響く、俺はリズに正直に話す。


『勿論それはわかっているけどさ、リズと初めて会った時に言ったけど俺はリズやレイナ、テオとセオ、仲間の存在に助けられてるんだ、だから俺が出来る範囲で皆に嫌な思いはさせたくないんだ』


セオよりも俺の方が気にしているのはわかっているが、もう少しこの世界の価値観に慣れるまでは仕方ない、許せないのは許せないしな。


「うん、あの時は侮辱してすまなかったと思ってる。言葉は撤回するし、二度とあんな事は言わない」


真顔で真剣な口調になり、深く頭を下げるクリス。俺はその真摯な態度に漸くクリスへの認識を改める。


「わかりました、セオも気にしていないようなのでこの話は終わりましょう、ジーヴルまでもう少しですがその間、改めてよろしくお願いします」


俺が右手を差し出すがクリスは俺の言葉を聞いて少し俯く。


「それで、虫のいい話だとわかっているんだけど、護衛の依頼をもう少し伸ばしてくれないだろうか?」


俯いていた顔を上げ、切実そうな顔でクリスが護衛の延長を頼んでくる。


「僕は相手がここまでの事をするとは思わなかったんだ、魔寄せの笛で集めた魔物は五百以上、オートマタに加えてゴーレムまで使ってきた、まるで大攻勢だ。ここまで相手が本気ならこのまま終わるとも思えないんだ、だから頼む、報酬なら僕が出してもいい」


そう言ってクリスはまた頭を下げる、さっきから何度も頭を下げるクリス、本当に変わったんだな。


俺はクリスの頼みにどうしたもんかと皆の顔を見回す、するとリズと繋いでいた手から魔力が流れ込んで来る。


『トーマ、この話は後で考えようか。エーヴェンさんとも話をしないといけないはずだし』


それもそうだな、リズの手に魔力を流しわかったと返事をしてからクリスに答える。


「クリスさん、その話は取り合えず落ち着いてからしませんか?エーヴェンさん達も戻ってくるようですし」


俺の言葉を聞いてクリスはわかったと頷いたので俺達は公爵の馬車の方に戻り、クリスは馬車の中にいる夫人達に大丈夫だという事を伝えに行った。




「トーマ君お疲れ様、馬車を守ってくれてありがとう。オートマタに足止めされたときは焦ったけどテオ君が兄ちゃんが来てるから大丈夫だって言うから魔物の方に集中出来たよ」


エーヴェンが皆を連れて戻ってきた、何人か怪我はしているが死人はいないようだ、一人酷い怪我をしている人がいるのでレイナに治癒魔法で治してもらう、獅子の鬣のメンバーにも治癒魔法の使い手がいるがレイナよりは利きが良くないようだ。


俺はエーヴェンに確認してもらうために馬車の所に運んでいた刺客の死体をエーヴェンに見せる。


「ゴーレムを操っていた刺客です、この襲撃の指揮を取っていたと思うんですけど見覚えはありますか?」


エーヴェンは覆面を取った刺客の顔を見るが見覚えは無いようだ。


「見覚えは無いね、刺客なんてしてるなら下手に顔を晒さないだろうしね。ただオートマタはそれほどでもないけどゴーレムなんて手に入れるには相当なツテと金が無いと無理なんだ、だから相手の目星は大体ついたよ」


ゴーレムを魔物で考えるとキュクロプス並み、それ以上の強さはあった、その強さを自由に使えるなら確かにそのくらいの価値はありそうだな。


エーヴェンと話をしているとクリスが馬車から出てきた。


「エーヴェンさんお疲れ様です、奥様とお嬢様にはもう大丈夫だと伝えました」


エーヴェンはクリスにもありがとうと伝えてメンバーを集める。


「じゃあこれから魔物の処理をしようか、数が多くて大変だけど皆で頑張ろうか」


エーヴェンの言葉にリックが待ったをかける。


「ちょっと待ってくれ、リーダーは北で一番奮闘してくれたんだから休んでてくれ、兎の前足のメンバーもだ。お前らが活躍し過ぎて俺達はまだ殆ど何もしてないからな、北にいたメンバーは怪我人が多いから残していくけど残りのメンバーで充分だ」


獅子の鬣のメンバーを纏めていたリックが声をかける、他のメンバーも口々にそうだそうだと声をだす、おいテオ!お前はこっちだろ。俺とエーヴェンが話をしているうちに皆で決めていたようだ、リックは兄貴分というかそういう所があるしな


「馬車の護衛も残さないといけないでしょリーダー、そういうわけで怪我をしたメンバーをお願いします」


ニッに笑うリックにエーヴェンはありがとうと答えて俺に確認をする。


「トーマ君、じゃあリックの言葉に甘えようか。それと、報酬は沢山出すから素材はメンバーに譲ってもいいかな?」


俺はエーヴェンに大丈夫だと返事をする、正直ラザから出てまだ二ヶ月もたたないが金貨は既に五百枚を越えそうだ、服も清浄の魔法があるので数着で足りるし装備もスゥニィの餞別がある、食事も魔物の肉と野草でレイナとセオが作ってくれるしポルダの高そうな宿もエーヴェンが出してくれたしな。


「素材は全部譲ります、東と南の方は焼けてて取れる素材も少ないと思いますが西の方は程度のいい素材が残っているはずです」


俺とレイナが倒した魔物はボロボロになっているがリズの倒した魔物はいつも綺麗なのでその事を伝える、あの雷の魔法凄かったよな、トーマの炎魔法は魔物が死んでも燃え続けてたぞと話し合う声が聞こえてきた。


「皆さん、出来ればオークの肉を少し貰えないでしょうか?そのかわり私達の肉で料理を用意しておくので」


レイナの声にメンバーから歓声が上がる、おいテオ!お前はこっちだろ。


レイナの言葉を聞いてメンバーは張り切って魔物の処理に散っていった。


夜中なのに元気だな、俺とエーヴェンは苦笑いをしながら顔を見合わせた。


馬車の側に土魔法で簡単な椅子を作り、俺とリズ、エーヴェンとクリスで座り、エーヴェンも交えて先程のクリスの話の続きをする。


「エーヴェンさん、クリスさんから依頼をもう少し伸ばして欲しいと頼まれました。エーヴェンさんはハンプニー家がいつまで狙われるかわかりますか?」


エーヴェンはクリスに確認を取る。


「クリス、トーマ君にそんな事を頼んだのか?トーマ君達への依頼はジーヴルまで、その後はヒズールに向かう予定だって言ったじゃないか」


クリスは一度馬車を見て、それからエーヴェンに答える。


「でもエーヴェンさん、トーマさん達がいなければ奥様もお嬢様も守りきれたとは思いません、相手はゴーレムを使ってくるほどです、このまま諦めるとも思えません。それに、正直魔物に四方から攻められゴーレムを見た時は無理だと思いました、だけど少しの怪我人で誰も死んでない、トーマさん達にはまだ余裕すらある、僕は彼等が普通の冒険者には見えません」


クリスが俺にさん付けになってるんだが…、エーヴェンは少し難しい顔をする、クリスは諦める気が無さそうだしな。


二人の会話を聞いて隣に座っているリズが手を繋いできた、ふふ、最近リズと手を繋ぐ事が多いな。


『トーマ、取り合えず話を聞こうか。エーヴェンさんも相手に心当たりがあるようだし』


俺はリズの手の感触を味わいながらわかったと返す。


「エーヴェンさん、私達は別に急いでいるわけでは無いんで取り合えず話だけでも聞きますよ」


悩むエーヴェンにリズが声をかける、エーヴェンはじゃあと話し出した。


「相手は多分ジーヴルの公爵エスターブ家だと思う、今ジーヴルには四つの公爵家があるんだけどハンプニー家はその中で特に国王の覚えがいいんだ、対外的な要件は大体ハンプニー家が頼まれるからね、先代までの国王に気に入られていたのがエスターブ家なんだけど今の国王に変わってあまり重用されなくて焦ってるんだと思う、これまでは嫌味を言う程度だったけど今回の森人の里への弔問で我慢出来なくなったんだろうね」


ジーヴルは森人にかなり気を使った付き合いをしているが今の国王はそれが顕著らしい、村を町に変える程だしな。


「それとエレミーとエスターブ家の長女が今の王子に輿入れする事は前から決まっていてね、今の王子はエレミーと一度会った事があるんだけどその時にエレミーを気に入ったようなんだ、だからエスターブ家はエレミーが邪魔なんだよ」


え?輿入れって公女が?クリスは公女が好きなんじゃないのか?前から決まっていた?一度会っただけで結婚?


俺が戸惑いながらエーヴェンとクリスの顔を見ているとリズから魔力が流れ込んでくる。


『トーマ変な事考えてるでしょ、貴族は自由に結婚出来ないし、クリスさんもそんな事は思ってないし考えてもいないはずだよ』


貴族の結婚は親が決めるってのは知識として知っていたけど心のどこかではそんなに厳しくないと思っていた、息子が冒険者になるくらいだからハンプニー家はかなり自由に思えたのもあるが、それを当たり前のように話すエーヴェンとリズにまた一つ価値歓の違いを突き付けられる。


本人達には当たり前なんだろうが、俺はこの話を聞くと公女の奴隷に対する認識も、クリスの高圧的な態度も少しは理解出来るような気がした。


ノブレスオブリージュ、高貴な者には特権と責任があるって考えはこの世界にもあるんだな、獅子の鬣のメンバーに聞くとエーヴェンも冒険者としてかなり評判がよく困ってる所を助けられて仲間になったメンバーもいるようだ、形は違うが自分に出来る事で上に立つ者の責任を果たしているんだな。


『リズ、俺はクリスさんの依頼を受けてみてもいいかなと思ってるよ、リズはどう思う?』


俺がリズに伝えるとリズがニヤッと笑う。


『公女の結婚の話を聞いて助けたくなった?やっぱりお人好しだよねトーマは、リーダーがそう言うなら私は別に構わないし皆もきっと了承するよ』


自分の感情に従っているだけなんだけどお人好しなのかな?俺の我が儘を聞いてくれる皆の方がお人好しだと思うけどな、それにテオも獅子の鬣のメンバーと大分仲良くなったしな、もう少し一緒にいてもいいだろう。


「エーヴェンさん、俺達は受けてもいいと思ってます、ただ、急いでいないとは言っても無期限で依頼を受ける事は出来ないので何か目処はありますか?」


ヒズールに行くのも興味があるからで俺達に明確な目的地は無いが、旅を続けて成長したらスゥニィを迎えに行かないといけないしな、スゥニィとのキスの続きも気になるし、レイナがリストルで言った旅で成長出来たら…の続きも気になるしな!


旅をしていて俺には朧気ながらやりたい事が出来た、ラザに家を持ち、リズやレイナ、スゥニィ、テオとセオと一緒に暮らしてみたい、そしてその家を拠点にたまに旅に出たり出来たら最高だと思う。


スゥニィが暖炉の前で本を読み、リズがテオを追いかけ回す、レイナとセオが作ってくれた料理を皆で味わいながら町での一日の出来事を話す、そんな温かい空間を作ってみたい。


そして夜は…夜は…やっぱりテオと同じ部屋で寝るのかな…。


『トーマ聞いてる?』


俺がテオにも一人部屋が必要だなと考えているとリズの魔力が流れ込んできた。


慌てて三人の顔を見ると皆が俺を見ていた。


「エーヴェンさんすいません、たまにトーマはこんな感じで妄想して人の話を聞かない事があるんです、話は私が聞いたので大丈夫ですので」


リズと一緒に俺も謝る、自分から話を振って聞いてないという失態をおかした俺にエーヴェンは気にしてないよと手を上げる。


「トーマ君の魔法は独特で凄かったみたいだね、その妄想力があるからかな、レイナさんの魔法も直に見てびっくりさせられたよ、君達が金上級の話を断ったってのも本当のようだ」


エーヴェンの言葉にクリスが驚く。


「金上級ですか?金上級冒険者はジーヴルでは子爵相当の扱いですよ、それをトーマさんは断ったんですか?」


余程驚いたのかクリスが大声を出す、俺達には金上級なんて重荷なだけなんだけどな。


「リストルのギルド長がね、金下級に上げて一度依頼を受けさせて直ぐに上級にあげようかって話をスゥニィさんにしたらしいんだ、それをスゥニィさんから聞いたトーマ君達はまだまだ経験が足りないって断ったらしいよ、町長もリストルの悪夢を退けた立役者として発表しようとしたらしいけどそれも断ったんだってね」


エーヴェンは全部知っているようだ、個人情報の保護なんて価値観はリストルの町長もギルド長も持ってないだろうしな、クリスが俺達を信じられないものを見るような顔で見てくる。


「リストルの悪夢で活躍したって本当だったんですね、銀上級なので信じてなかったしスゥニィさんが凄かっただけだと思ってましたがゴーレムを簡単に倒した今は信じられます、ワイバーンも一人で倒したってのも本当みたいですね。そんな貴方達が護衛を受けてくれるならジーヴルでもきっと大丈夫でしょう、トーマさん、リズさん、よろしくお願いします」


どうやらリズがエーヴェンの話を聞いて受けてもいいと思ったようだ、リズから後で詳しく聞こう。


怪我の治療も終わって料理をしていたレイナが話しかけてくる。


「話は纏まりましたか?そろそろ出来上がるのでテーブルの用意をお願いします」


レイナの言葉に俺達はわかったと返事を返して準備をする、俺は土魔法で、エーヴェン達は馬車から組立式のテーブルと椅子を出して準備をする。


そしてリック達が戻ってきた。


「リーダー終わったぜ、東と南は殆ど処理もいらないくらい焼けてたからな、北と西だけだから大した労力じゃなかったよ、それに西の魔物は首を切り落とされた以外は特に外傷もないし良い素材が手に入ったから皆も満足だ」


リック達が素材を馬車に乗せたりした後は皆で食事だ、今回はエーヴェンが声をかけて夫人と公女も一緒の席で食事をする事になった、公爵家の夫人が馬車があるのにわざわざ冒険者と席を共にしていいのかな?公女はレイナやセオと一緒なのが嬉しそうだし構わないか。


配膳は俺とリズ、そしてクリスが志願して配膳を手伝ってくれた、昨日なら考えられない事だ。


「じゃあ皆に料理も行き届いたかな、兎の前足はもう少し俺達に付き合ってくれる事になったからよろしく頼む」


エーヴェンの声に周りから歓声が上がる、テオもリックと一緒に喜んでいるな、エーヴェンが夫人と公女にも説明をして、それから皆で食事を始める。


「今日はワイバーンのステーキがメインです、少しだけお代わりがあるので食べる人は声をかけて下さいね」


レイナの発言に今日一番の歓声が上がる、冒険者は分かりやすいな。


大勢での食事は夜が明けるまで続いた。







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