白-15- 君出逢日
忘れてなんかやらない。
でも彼を想って弱くもならない。
想いを糧に、私は進むのだから。
そう決めてから、もう2年が経った。
あれから2年はあっという間に過ぎていって、私は町から少し離れた看護大学に無事合格をした。
春は過ぎて、葉が緑に色づき始める頃。
――私はひとつの出会いをする。
雨が、降り出した。
それは突然のことで、道行く人々が皆、空を見上げた。
初めは霧のような涼しいくらいの雨粒も、次第に激しさを増していく。
私は鞄におさまっていた折りたたみ傘を慌てて開いた。持って来て良かった。
「うそーっ!降ってきたよどうしよ…っ」
私の数メートル先で、荷物をたくさん抱えながら歩いていた一人の女性が立ち止まった。どうやら傘を持っていないらしい。
見渡す限りには雨宿り出来そうな場所もない。
私は小走りで彼女に近付いた。
「――あの、良かったら入りますか、傘。」
「…え、あっありがとう…!」
一瞬驚いた様子を見せて、彼女はこちらへ目線をやった。
(――――わあ。)
第一印象は、かわいいひと。ピンクのプリーツスカートがよく似合っていて。
そしてどこか、…智洋に似ている目元。
(…思い出し、ちゃった)
忘れていた訳ではないけれど、少なからず薄れてしまっていた記憶。それでもいいと思っていた。
けれどやっぱり、溢れてくるのは温かい気持ち。
変わらない、いつまで大切な人なのだと改めて思う。
彼女をみると、なぜか彼を思い出してしまう。
そして不思議と、優しい気持ちになれる。
「…どこに、行くんですか?」
行き先が分からないと、これからどうすればいいかも考えることが出来なかったので、まずは尋ねた。
「えっと、ここの大学に行きたいんですけど、迷っちゃって」
彼女が持っていた地図で指差したのは、私の目的地と同じだった。
「あ、私も今から行くんで、一緒に行きましょう。」
「わあ、本当ですか、助かります!」
そう言って彼女は微笑んだ。
とてもかわいらしく、魅せられる笑顔だった。
* *
「本当にありがとう。助かったわ!」
「いいえ。ここには何の用事?」
「あ、パパ…お父さんが、ここの理事長さんと知り合いで…見学、みたいな。あたしの通ってる大学と姉妹校らしくて」
「わあ、お父さんすごいね」
理事長の知り合いってことは、きっと彼女の父親も良い身分なのだろう。
私の言葉に照れたように笑って、恥ずかしそうに次を続けた。
「…あ、あのさ、あたししばらくこっちに居るの。また、会いたいな。あなたはここ学生よね?」
照れながら言う彼女の言葉に、私は嬉しくなった。
「是非!よろしくね。私は、冬瑚。岩月冬瑚っていうの」
「――――――とうこ?」




