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勿忘草  作者: 紫雨
第三章 -出逢い-
15/21

白-15- 君出逢日

 忘れてなんかやらない。

 でも彼を想って弱くもならない。

 想いを糧に、私は進むのだから。


 そう決めてから、もう2年が経った。






 あれから2年はあっという間に過ぎていって、私は町から少し離れた看護大学に無事合格をした。

 春は過ぎて、葉が緑に色づき始める頃。


 ――私はひとつの出会いをする。





 雨が、降り出した。

 それは突然のことで、道行く人々が皆、空を見上げた。

 初めは霧のような涼しいくらいの雨粒も、次第に激しさを増していく。

 私は鞄におさまっていた折りたたみ傘を慌てて開いた。持って来て良かった。


「うそーっ!降ってきたよどうしよ…っ」


 私の数メートル先で、荷物をたくさん抱えながら歩いていた一人の女性が立ち止まった。どうやら傘を持っていないらしい。

 見渡す限りには雨宿り出来そうな場所もない。

 私は小走りで彼女に近付いた。


「――あの、良かったら入りますか、傘。」

「…え、あっありがとう…!」


 一瞬驚いた様子を見せて、彼女はこちらへ目線をやった。



(――――わあ。)


 第一印象は、かわいいひと。ピンクのプリーツスカートがよく似合っていて。


 そしてどこか、…智洋に似ている目元。



(…思い出し、ちゃった)


 忘れていた訳ではないけれど、少なからず薄れてしまっていた記憶。それでもいいと思っていた。

 けれどやっぱり、溢れてくるのは温かい気持ち。

 変わらない、いつまで大切な人なのだと改めて思う。


 彼女をみると、なぜか彼を思い出してしまう。

 そして不思議と、優しい気持ちになれる。



「…どこに、行くんですか?」


 行き先が分からないと、これからどうすればいいかも考えることが出来なかったので、まずは尋ねた。


「えっと、ここの大学に行きたいんですけど、迷っちゃって」


 彼女が持っていた地図で指差したのは、私の目的地と同じだった。


「あ、私も今から行くんで、一緒に行きましょう。」

「わあ、本当ですか、助かります!」


 そう言って彼女は微笑んだ。

 とてもかわいらしく、魅せられる笑顔だった。





   *   *





「本当にありがとう。助かったわ!」

「いいえ。ここには何の用事?」

「あ、パパ…お父さんが、ここの理事長さんと知り合いで…見学、みたいな。あたしの通ってる大学と姉妹校らしくて」

「わあ、お父さんすごいね」


 理事長の知り合いってことは、きっと彼女の父親も良い身分なのだろう。

 私の言葉に照れたように笑って、恥ずかしそうに次を続けた。


「…あ、あのさ、あたししばらくこっちに居るの。また、会いたいな。あなたはここ学生よね?」


 照れながら言う彼女の言葉に、私は嬉しくなった。


「是非!よろしくね。私は、冬瑚。岩月冬瑚っていうの」

「――――――とうこ?」




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