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第23話 黒沢さんはエッチじゃない??

「ごめん……!」


私とセリナさんは、部屋に勝手に入り込んだことをオタク君に土下座で謝罪していた。

正確には、セリナさんは主体的にではなく私が無理やり土下座させていたのだが。


「ほら、セリナさんも謝って」


「か……勝手に部屋に入ったことは謝ります。

ですが先程、あなたが変態さんであることはよくわかりました。

女の子用のお洋服を持っていて、女の子用のマッサージ器具を持っていて、一部ハレンチな漫画本を持っている……。

もう私……あなたにサラ様を任せられません!」


セリナさんは、先程エッチな漫画と評していた、

『家出した女の子が僕の家に泊めてほしいと言うので、代わりに×××なことをしてもらいました』

という漫画を掲げて叫んだ。




……これは非常にまずい状況だった。


私、黒沢メイのやるべきこと。

それは、セリナさんに、真偽はともかくオタク君は変態じゃないと信じてもらうこと。

もしそれができなければ、私は、銀条院さんのために奔走した彼の苦労を無駄にしてしまうかもしれない。

もちろん、皆んなで海に行けないとなれば、銀条院さんのことだって悲しませてしまう。


……それだけは何としても避けなければならない。




状況もよくわからないままセリナさんに変態と責められて、なす術無く慌てふためくオタク君をフォローするため、私は勝負に出ることにした。


「セリナさん……ごめん。黙ってたのだけど、本当のことを言わせて」


彼女とオタク君は私に注目した。


「ほ、本当のこと……って何ですか?」


「……実はね、さっきのお洋服も、マッサージ器具も、その漫画も、全部〈私の物〉なの。

恥ずかしくて黙ってただけなのよ。

だからオタク君は何も変態じゃないの」


「え、えぇ……?」


一部嘘を付いた。

セリナさんは、にわかには信じられないという表情をしていた。


「き、急にそんなこと言われましても……。

色々おかしいですよ……。

だって、どうして黒沢様の所有物が、お友達の男子の部屋に置いてあるのですか……?!」


私は一呼吸置いてから、なるべく堂々とした態度でこう言った。




「実は付き合ってるのよ。私とオタク君――」




――――――




実は同居してるのよ、とはさすがに言えなかったので、付き合っていると言っておいた。


付き合っているのであれば、互いの物品が互いの部屋にあっても、違和感は少なくなる。


私はオタク君に目配せした。

彼は困っていたが、私の思惑を察してくれたようだ。




肝心のセリナさんはというと……


「えええ……!?

お、お二人、付き合ってたんですかぁ……!?」


びっくり仰天の様子だった。


「なるほど……。であれば、黒沢様の恥ずかしい物品を彼氏さんの部屋に隠してもらっていたのだと納得がいきます。

変態さんだったのは神藤様ではなく、黒沢様だったというわけですね……」


その言葉は唐突に私を突き刺したが、何とか耐えた。

……そういうことにしておこう。私は銀条院さんをエッチな目で見ていないのだから、セリナさんにいくら変態と思われても問題無い。




彼女は少し考えた末にこう言った。


「わかりました。私が神藤様のことを勘違いしていたようで、すみません……。

部屋の壁のエッチなタペストリーだけが少し気になりましたが……きっと、男の子の部屋にはあるのが普通なんですよね……?」


私とオタク君は、うんうんうんと大きく縦に頷いた。




「了解です。でしたら最後に1つだけ、私の引っかかる部分を確認させてください。これが確認できれば、皆様にサラ様をお任せしたいと思います」


「大丈夫よ。何でも言って!」




「お二人、今ここでイチャついてもらえませんか?」




――――――




……面倒なことになった。


「神藤様の黒沢様への愛が、確実なものかどうか確かめたいんです!」


セリナさんはまっすぐな目でそう言った。


「でも、人前でイチャイチャするのはちょっと……」


私がそう言うと、彼女は私とオタク君に向かって自らの意思で土下座した。


「お願いします!……やっていただければ、サラ様の外出許可を必ず取ってくると約束します!

私……生まれてこのかたずっとサラ様のお世話係だったもので、友達もいなければ彼氏もいません。

本当のところは……恋愛に憧れてるんです……!!

お二人のイチャイチャが見たいんですぅ……!!」




セリナさんはセリナさんで、色々と複雑な事情を抱えているようだ。それに銀条院さんの外出の確約までしてくれた。私は彼女に負けて、

「わかった。やるよ……」

と言ってしまった。


「やった!ありがとうございます……!!」


セリナさんは嬉しそうだった。

オタク君は冷や汗をかいていた。




――――――




私とオタク君は、向かい合って互いを見つめ合っていた。

手をお互いの背中に回した。


「メイ……あいしてるよ……」

「ワ、ワタシもよ……」


お互い、顔を真っ赤にしていた。


「わぁぁ……。なんか、いいですね……♡」


セリナさんは目をハートにして、両手を胸の前で握っていた。




ここで彼女は、


「あ、そうだ!参考図書があるじゃないですか!」


と閃いたように言い出し、


『家出した女の子が僕の家に泊めてほしいと言うので、代わりに×××なことをしてもらいました』


のページをパラパラとめくり始めた。


「う、うわぁ……。やっぱりエッチですね……。

男女のイチャイチャというのはこれが普通なのでしょうか」


恋愛というものに疎いセリナさんは、間違った参考図書を読んでいることに気づいていない。




「あ、こんなのとかどうですかね!」




…………げぇ?!


私とオタク君は、セリナさんが提示したページを見てぎょっとしてしまった。




「〈スカートのたくし上げ〉ですって。

カップルって普段こんな風にイチャイチャするものなんですか?」




そんな訳がない。

……まあ、私もまともに恋愛経験が無いので正確な所はわからないのだが……

そんな訳がない、と信じている。


私もオタク君も脈が速い。そろそろ限界だった。


たくし上げは丁重にお断りしよう。そう思ったその時、隣で顔を真っ赤にしたオタク君を見て、

「あ……」

と思い出してしまった。




〈オタク君って、私とそういうことしたいの我慢してるのかな……〉


〈女の子が男の子の部屋に泊めてもらう時って、あれくらいしてあげるのが普通なのかな……〉


〈もし彼がすごく我慢しているのなら、ちょっとくらい何かしてあげても良いのかな……〉




オタク君がセリナさんに

「た、たくし上げとかはちょっとね〜」

などと伝えている。


……私は、彼に対する感謝や罪悪感、そして何も返せない後ろめたさが、心の中でぐちゃぐちゃに混ざってしまった。

そしてつい、彼らの会話を遮って言ってしまった。


「いいよ、やろうよ……。

別に普通でしょ……?」




――――――




オタク君は私に


「どうしちゃったの黒沢さん……??!」


と小声で反応してきたが、私は彼の耳元で


「特別……♡」


と囁いた。

彼はネジが吹っ飛んだようで、ピクッと震えた後に何も喋らなくなった。こいつを落とすのは容易い。


「カ、カップルってやっぱり、そんなエッチなことばっかりしてるんですね……??

なんか……イケないことみたいでドキドキです……!」


セリナさんも大興奮の様子だ。




「じゃ、見ててね……」


私はそう言って、自分のスカートをゆっくりと両手でたくし上げた。


水色のランジェリーが完全に見える位置で、生地を持ったまま手を止めた。

すると、オタク君は何かびっくりしたようにぎょっと目を見開いて、パンツに熱烈な視線を送ってきた。


さすがにその視線が痛すぎたので、


「は、恥ずかしい……」


と、私は前屈みになって呟いた。

直後、オタク君はゴホゴホと咳込んでドロっと鼻血を垂らし、その場にプルプルと跪いた。




……なんだろう。少し違和感があった。


いくらたくし上げが刺激的だったとはいえ、オタク君の反応が良すぎないか?

一応、ちょっと前には彼と一緒にお風呂に入ったこともあるわけだし、それを考えると少しリアクションが大袈裟のような……。




「あの〜、黒沢様……」


セリナさんが恐る恐る私に話しかけてきた。


「ん?どうかしたの?」


「えっと……。

おパンツ、大変なことになってますね……。

お漏らしですか……?」




――――――




「…………ああ……!!?!」


私は今更思い出した。

セリナさんがここを訪れる直前まで、私は電動マッサージ器具で自分を癒やしてあげていたのだ。


息を荒くして高まっていた所にインターホンが鳴ったので、急いで下着をずり上げて、その辺のスカートを履き、玄関まで走ったのだった。




もうお嫁に行けない……!

恥ずかしさで死にそうだ……。

私は急いでスカートを下ろし、下着をぎゅっと隠した。

パンツの状態とは対照的に、顔からは火が出そうだった。


私は顔を両手で隠しながら、オタク君に言った。


「ごめん……。

やっぱり私って、変態だよね……。

ごめんね。こんな変態、キモいよね?」


その直後、私は肩をガシッと掴まれた。

びっくりして顔を覆った手をどけると、目の前に鼻血を垂らしたオタク君が立っていた。




「そんなことない……。

黒沢さんはかわいいよ……!!

今のままで良い。変態の黒沢さんも素敵だよ……!!」




――――え……??


――――そ、そうなのかな……??




私は、彼のまっすぐな瞳から目を離せないでいた。

自分の心臓がうるさかった。

お腹の下がきゅんっと跳ねた。


――――あれ?……これってもしかして……


――――私、オタク君のこと……




隣でかすかに、声が聞こえた気がした。


「す、素敵…………。

これが、本物の愛なのですね…………♡」






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