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海中もくず  作者: 椎名 園学


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海中もくずは今日も冷たい㊽

「え、お姉ちゃん大丈夫?」

心配から無意識にそういってしまう。姉は急いで傷を隠した

「⋯バイトで怪我したの?」

沈黙が漂う空間で姉は何も言わず脱ぎかけの服を脱ぎ切る

「コンビ二で絆創膏とか買ってこようか?」

「うっさいなぁ!」

心配でかけた言葉が姉の癪に障り、姉は声を荒げる。それに驚きもくずは少しぴくついてしまう

「なんであんたがさらに金使うようなこと言うわけ?いっつも私だけ働いて、あんたはこっちのこと気にもしないでさぁ。こっちは必死で働いてるって言うのに、ウザい顔で「金沢行くから金くれ」って、あんた私を何だと思ってるの?」

姉の言葉に、返すことばが見当たらない。

「ねえ無視じゃなくて何だと思ってんのって聞いてんの?ねえ」

「⋯ごめんなさい⋯」

「謝れば良いと思って」

姉は力任せに風呂場の扉を開ける。一人洗面台の前に残されたもくずは、何もできずだた立ち尽くしていた。音がしないことに気づき姉が「早く寝て」という。

冷え切った布団でもくずは独り目を閉じた。


姉がバイトに行く音で目を覚ました。昨日なかなか寝付けなかったせいでいつもの時間に起きれず姉は朝ごはんを食べれていない。あれだけ怪我をしてもバイトにいくのか⋯。それなのに私は遊びに行っていいんだろう⋯⋯。台所にたまった食器を見るとそう思う

姉からもらったくしゃくしゃな2000円。きっとあれは買いたいものがある度、我慢してためた2000円だろう。そんなものを友達と遊びに行くという理由でなにもしていない私がもらって良いものなのだろうか。お金を渡したときの姉の顔が頭にこびりつく

溜まった皿を洗っても、散らかったものをかたずけても、罪悪感というのか良心の呵責と呼べばよいのかわからない何かがずっと、喉から胃にかけてを重く責め続ける。手当たり次第にできることをやり続けるが「今この瞬間も姉は働いている」ということが張り付く。

「今日やめとこうかな」

言ったとて、最近美緒といるとお金のことで気分が悪くなることがあるし楽しいとは限らない。

こういう自分のための遊びはバイトして自分の金からでも遅くはないだろう。

美緒のことだし連絡なく断ればかなり怒るだろうが、どうせすぐまた気を取り戻すだろう。

私と同じで友達のいない美緒は、私と違って一人で何かすることができないので、なんやかんややったとして美緒のほうから合わせるしかない。

自分でもよくないこと考えているのが分かった。けどだいぶ気が楽になってきた

綺麗になったちゃぶ台に教科書を広げる。時計の針の音が聞こえないほど集中し課題に取り掛かった

その日の夕方は雲一つない夕空で確かカラス集団で電信柱の上でわめいていた。

姉は朝早くからバイトに行ったので帰ってくるのも早く4時くらいには帰ってきた

「おかえり。これ」

「お願いします」と言った時不機嫌な顔をしたので普通らしく変え、2000円を丁寧に両手で持って姉に渡す

「金沢行くんじゃなかったの?」

「やっぱりやめた」

「⋯そ」

予想とは異なり姉は不機嫌な顔で受け取った


次の日の朝、いつも鳴る美緒からの呼び鈴がならなかった。多分怒ってるんだろ。

かなり久々の一人登校は、季節通りの寒い風が体を冷やす。昨日と今日で温度がだいぶ下がっていた。

そろそろ雪が降るかもしれない。多分美緒は雪降っただけで興奮するんだろうな。

昔読んだ本にカップルで雪合戦やかまくらを作る場面があった。

自分が勝手に怒らせといて仲直りじゃないけど、二人で雪合戦ならしてみたいな。

美緒は運動下手だからきっと私は手を抜いてやることになるだろう。それでもきっと美緒は私に当てれなくて「飽きた。かまくら作ろ~」というのだろう

一人での登校はいつもより長く感じた


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