決意と真っ直ぐな想い
「あ、ルー姉寝ちゃってる」
「これは帰りに運んであげないとな、モニカ組、帰りはゴーレムよろしく頼むよ」
「もちっ」
シェイナちゃんの歓迎会が始まって2時間もしない内にルーシーは久しぶりに取り入れた酒でお休み状態、これは明日ゴネるな。
それにしても街中でゴーレム使って運ぶとは……きっとけたたましい光景だろうなぁ。
「そういえばロウさん、ロクスさん達の稽古はどんなものでした?」
「粗削りだが伸びしろはあるな。 ただ、彼らの力を開花させるという意味ではジェイ氏を当てた店長の判断は正解といえるな」
「というと?」
「個の力を極めることを突き詰めすぎてな、他人への指導の仕方がつたないのだ。
彼なら励ますも発破をかけるも器用にこなせるだろう」
確かに、同じ武人だけどジェイさんはどこか周りと波長を合わせながら立ち振る舞ってる感があった。
ロウさんは故郷を脱して1人の状況で極限の鍛えをしてたからその差なのかな?
「そうですね。 ジェイさんなら乙女心も理解できるかも」
「ノエルよ、武闘祭以降から辛辣が過ぎないか?」
「だって試合とはいえ足掴んで投げられたんですもの、女性としては気にしますよぉ」
「そんなことが、ロウさん、競技とはいえ女性には優しく、ですよ」
シェイナちゃんの一言にロウさんは「むぅ、申し訳ない」と謝ってる。
なぜかこの娘のお願いや指摘を受けるとぐうの音も出なくなるのが不思議。
「あらら、ノエルに奥の手を授けた武人もシェイナちゃんの前じゃ形無しだわね」
「奥の手、ですか?」
「話すと長くなるからそれは今度として、次はシェイナちゃんの、サイラにいた頃の話を聞いてみたいかなぁ」
「アイザックさん達と過ごした日々のこと、ですか? それでしたら……」
私達ハート・ユナイティスとはまた毛色の違う意味で騒がしい便利屋での日常がどんなものだったか興味があって聞いてみたらシェイナちゃんはそこで過ごした日々について目を輝かせながら話した。
フィオラさんから経理について丁寧に優しくかつ丁寧にレクチャーしてもらったこと、ミスティとユーゼが対等の友達として接することができたこと。
セレスさんがヴェルクさんにちょっかい出してそれをウィルさんが叱るとことか、濃い話をたくさん聞かせてもらった。
「そっかぁ、シェイナちゃんちゃんと大切にされてたんだね。 よかった」
「ヴェルクさんが特に優しくて、夜明けからおさらいしてたら「無理はするなよ」ってお茶淹れてくれて、うれしかったです」
「へぇー、あのぶっきらぼうの権化が、なんか意外ね」
「エイミー、それ本人に聞かれたら「あぁんっ?」てすごまれるよ?」
「そしたらあたしも「あぁんっ?」てすごみ返すわよ」
私がマブといつも通りの他愛ない話してる横でシェイナちゃんが一瞬だけ遠い目をしながら上を見上げた。
「どしたの?」
「いえ、ミスティさんとユーゼさん、また会えるかなって……せっかく仲良くなれたから繋がり、大切にしたいんです」
「その時はルーシーにお願いしよっか。 転移使えばみんなのとこひとっ飛びだからそれなら寂しくないよね」
「ノエルさん……ありがとう。 私、みんながお仕事をスムーズに回せるように頑張りますね」
うぅ、なんて眩しい。 こんな純真ないい娘の顔を見るほどに自分が図太くなった経緯を思い出す。
警備の時の冤罪に術の開祖から無茶な試練、武闘際で男性に足首掴んで投げ飛ばされたりと、そりゃ確かにこれだけの経験をすれば若干気が強くもなるか……と時間も忘れていると店員の声で店じまいの時間が迫ってることに私達はようやく気づく
「ラストオーダーです、ご注文はありませんか?」
「む、もうこんな時間か。 店長」
「そうだな。 いい時間だからお開きとするか、それじゃモニカ君」
「あいよーっ」
人間サイズのゴーレムが酔っ払ったお姉さんをお姫様抱っこ……奇妙な光景だなぁ。
会計を終えた私達は全員で店長の自宅兼事務所へと戻った。
店長自身は気を遣うなと遠慮してたけどここがいくら治安の良いピオスの街とはいえ深夜、非戦闘員だけで帰らせるのは私とエイミー、ロウさんで断固としてノーを突きつけた。
「ほんと大丈夫たというのに」
「大丈夫、じゃないですよ? モニカはルーシー担いで戦えないし、シェイナちゃんに変な虫ついてきたら店長どうやって守るんですか?」
「ほんとほんと、身の安全ってのは意地やプライドじゃ保てないんだからね?」
「2人の言う通りだ。 それに固まっての行動はそれだけで身を守る効果を発揮する」
店長が「違いないな」と笑う横で物申したそうにゴーレムをプイプイと指差すモニカを見て肝心なことを思い出した。
「ところで店長、どうするんですルーシー」
「あぁ、しょうがないから今日は事務所で休ませることにするよ」
「シェイナちゃんの住まいも用意しなきゃね」
エイミーの意見にシェイナちゃんは「どうしてです?」小首を傾げながら自身の希望を述べた。
「図々しいかもですけど私、事務所で暮らしたいですっ」
「え、えぇーーっ!? ちょっと考え直して? 事務所よ? 店長ん家よ? おっさんと一緒よ?」
「エイミー君、なにもそこまで言わんでも、トホホ」
「けど、どうして事務所に? モニカは子供だから別だけど」
同じ目線に下げて聞いてみたらシェイナちゃんはさっきの酒場での話に繋げた。
「事務所に住めば、いつでも皆さんのお仕事の効率化に繋がるから……恩返ししたいんです。 私とお兄ちゃんを救ってくれたノエルさん達に」
「なるほどね。 熱意は伝わったわ、どうノエル?」
エイミー、絶対私がなんて言いたいか知ってて振ってるよね? まぁその通りだからいいかな、それが私の本音だし。
シェイナちゃんに歩み寄りながら私は自身の額を少女の額にペタッとくっつけながら想いを伝えた。
「素敵な考えだと思う。 その上で、いつか同じように困った人が現れたら君やお兄ちゃんがうれしかったことをしてあげる、それが最高の恩返しだと思うけど、どうかな?」
「……すぐにではなくとも私もノエルさんみたいに名も知らぬ人を想えるようになりたいです」
「なれるよ。 私がそうなろうと努力できてるから」
それだけ伝えて私達は店長一行と解散して自宅の帰路へ足を向けた。
帰り道、我がマブエイミーがある疑問を投げかけてくる。
「ノエル、さっき「私がそうなれたから」と言わなかったのって、フェイス君のこと?」
「あのままの私だったら盗みは悪いことと一緒くたにして2人を助けられなかった」
「あたしだってそうしてた。 べつにあんただけの問題じゃないわよ」
「ウソでもありがと」
きっと私達も組織も戦ってる相手は意外と共通してるのかもしれない。
理不尽という巨大な敵、それへの立ち向かい方でお互いあんな……もしそうだとしてもそれでも、毒をもって毒を制するのは違うと思うからまた無関係の人を巻き込むというのなら、私はヴィクタが言った言葉通り何度でも立ちはだかろうと誓った。




