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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第7話:お屋敷への連行(?)と、王子の正体


「ユキ……。お前のような者は、初めてだ……」


そう呟いた直後、緊張の糸が切れたのか、金髪眼帯の青年はガクリと崩れ落ちるようにしてその場に気絶してしまった。


「えっ、ちょっと、大丈夫ですか!? 傷は全部治したはずなのに……」


『主よ、気にするな。魔獣との戦いで体力も精神も限界だったのだろう。それに、奴にかけられていた呪いの毒素を主の規格外の魔力で急激に浄化されたため、身体が休息を求めているのだ』


ランが鼻先で青年をツンツンと突きながら教えてくれた。なるほど、気絶するほどお疲れだったのね。前世のブラック企業時代の私を見ているようで、なんだか放っておけない。


「とにかく、ここに置いていくわけにはいかないよね。ラン、お屋敷まで運ぶの、手伝ってくれる?」


『主の頼みとあらば』


ランは再び少しだけ身体を大きくし、気絶した青年を背中にひょいと乗せた。

私たちは見つからないように気配を消しながら、こっそりと公爵邸の客室へと青年を運び込み、ベッドに寝かせたのだった。


◇◇◇


翌朝。

私はお父様とお母様がいる食堂へ向かい、昨夜の出来事を正直に話すことにした。


「お父様、お母様。実は昨日の夜、お庭の奥の森で倒れている人を助けて、客室に寝かせているんです……。事後報告になってしまってごめんなさい」


怒られるかな、と少し身構えた私に、二人は怒るどころか、すぐに私の身体をペタペタと触って心配し始めた。


「ユキ! 怪我はなかったかい!? 魔獣が出るような奥の森に行くなんて危ないじゃないか!」

「そうよ、ユキが無事で良かったわ。倒れていた人は、ユキが治してあげたのね?」


二人の無条件の優しさに胸が温かくなる。本当に、最高の両親だ。


「はい、傷は全部治しました。ただ、その人、自分のことを『悪魔の呪いを受けた身だ』って言っていたんです。左目に黒い眼帯をしていて、すごく綺麗な金髪の……」


私のその言葉を聞いた瞬間、お父様とお母様の顔からサッと血の気が引いた。

お父様の手からフォークがカランと落ち、お母様は両手で口を覆って絶句している。


「ユキ……今、なんと言った? 金髪で、左目に眼帯……『悪魔の呪い』だと……?」


「え、ええと、はい。何かまずい人だったでしょうか……?」


ダリオス様はガタッと椅子を蹴立てて立ち上がると、私の肩を掴んだ。


「ユキ、その方は今どこにいる!? 急ぎ案内してくれ!」


◇◇◇


お父様とお母様、そして私とランは、青年が眠る客室へと急いだ。

扉を開けると、ちょうど青年がベッドの上で身を起こし、警戒に満ちた目でこちらを睨みつけているところだった。


その青年を見た瞬間、お父様とお母様は、信じられないことにその場に深く平伏したのだ。


「これは……ギルバート第一王子殿下! 畏れ多くもアラカルト公爵邸へようこそおいでくださいました!」


「お、おうじ……様!?」


私は驚きのあまり声が裏返ってしまった。

まさか、夜の森で魔獣にボコボコにされていたあの人が、この国の第一王子だったなんて!


ギルバート殿下は、平伏する公爵夫妻を一瞥した後、私の姿を捉えてその美しい右目を細めた。


「面を上げよ、アラカルト公爵。……俺をここに運んだのは、そこの黒髪の少女か?」


「は、はい。我が愛娘のユキが、殿下を魔獣の襲撃からお救いしたと聞き及んでおります」


お父様が緊張した面持ちで答える。ギルバート殿下はベッドから静かに降り、私の一歩手前まで歩み寄ってきた。

近くで見ると、やっぱり信じられないほど顔が良い。


「ユキ……と言ったな。昨夜は手荒な真似をしてすまなかった」


「あ、いえ……。傷が治っているなら良かったです」


「……不思議な娘だ。俺の左目の呪いは、この国の高名な神官たちでさえ、抑えることしかできなかった。それを、お前はただ触れただけで、呪いの蝕む痛みを完全に消し去ってみせた」


殿下は左目の眼帯にそっと触れながら、私をじっと見つめる。

その眼差しは、昨夜の冷徹なものとは違い、どこか切実で、焦がれるような熱を帯びていた。


「俺は生まれつきこの呪いのせいで、周囲から『悪魔の申し子』と恐れられ、遠ざけられて生きてきた。……だが、お前は呪いを恐れず、俺の手を握り、助けたいと言ってくれた」


殿下の手が、そっと私の右手を包み込む。前世のブラック企業でカサカサだった私の手とは違う、剣を握る男の人の、少しゴツゴツとした、でもとても温かい手。


「ユキ。俺の心を、この呪いの呪縛を溶かしてくれたのは、お前が初めてだ」


「は、はひっ!?」


殿下のあまりにストレートな言葉に、私の心臓がドキンと跳ね上がる。

後ろを見ると、お父様が「殿下、我が娘にあまり近づきすぎないでいただきたい!」と顔を真っ赤にして割り込もうとしており、お母様は「まぁまぁ、お似合いじゃない?」と目を輝かせていた。


どうやら私は、とんでもない人を救ってしまったらしい――。



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