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王子の心を溶かすのは・・・?〜孤独だった元OL、異世界で最強聖女になって公爵家に溺愛され、呪われた不器用王子を無自覚に救っちゃいました〜  作者: S@Y@


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第25話:晩餐会の罠! 古代魔導書を一瞬でバグ修正(デバッグ)せよ


ガルザ帝国主催の歓迎晩餐会。

黒曜石の豪華な大広間には、きらびやかな衣装を纏った帝国の高官や宮廷魔導師たちがズラリと並んでいた。


「ユキ、本当にあのヴァルカンの首を撥ねなくて良かったのか? 宴が始まる前なら、事故に見せかけて処理するのも簡単だったのだが」


隣の席に座るギルバートが、極上のお肉を小さく切り分けながら、とんでもなく物騒なことを真顔で囁いてくる。


「ギルバート、ハネムーン中に国際問題を起こさないでってば! ほら、あのお肉あげるから落ち着いて?」


私がフォークで彼のお口にお肉を放り込むと、ギルバートは一瞬でとろけそうな幸せ顔になり、「ユキが食べさせてくれた肉、美味すぎる……」と静かにおとなしくなった。よし、猛獣使いのスキルが上がってきたぞ。


そんな私たちの微笑ましい(?)やり取りを遮るように、わざとらしい足音が近づいてきた。


「ハッ、相変わらず他国の王太子夫妻は随分と余裕のようですね」


現れたのは、昼間にギルバートの魔力で腰を抜かしたはずの筆頭魔導師ヴァルカンだった。彼の後ろには、意地の悪い笑みを浮かべた帝国魔導師たちがゾロゾロと控えている。どうやら、大勢の貴族たちの前で私に恥をかかせにきたらしい。


ヴァルカンの合図で、部下たちが物々しい鎖で縛られた「一冊の古びた巨大な魔導書」を大机の上にドスンと置いた。


「ユキ様。我が帝国は実力主義。言葉だけの『聖女』など、誰も敬いはしません。そこで提案なのですが……この帝国に伝わる最高難度の古代魔導書『ガルザの階梯』を、この場で解読してみてはいただけませんか?」


ヴァルカンがニヤニヤしながら、周囲に聞こえるような大声で言い放つ。広間の貴族たちの視線が一斉にこちらに集まった。


「この魔導書は、あまりに複雑怪奇な術式が数万行にわたって暗号化されており、我が帝国のエリート魔導師たちが百年かけても、全体のたった一割しか解析できていない代物です。これの次のページを開くことができれば、貴女の『真の聖女』としての力を認めて差し上げましょう。……まぁ、他国の小娘にできるはずもありませんがね!」


完全に舐めきった態度。後ろの魔導師たちも「百年解けない難問を振るなんて傑作だ」「今に泣き出すぞ」とクスクス笑っている。


ギルバートの瞳が再び激しい殺気で濁り、その指先が魔導書の鎖ごとヴァルカンを消し飛ばそうと動いた瞬間、私はすっとその手を制して立ち上がった。


「百年かけて一割、ですか。帝国の宮廷魔導師様たちって、随分と……いえ、なんでもありません。いいですよ、その魔導書、私がちょっと見てあげます」


私は机に近づき、古代魔導書にそっと手を触れた。


脳内に流れ込んでくるのは、気の遠くなるような文字列と、複雑に絡み合った魔術回路。

確かにこれは、素人が見たら頭が破裂するような難解さだ。……だけど、前世で毎晩のようにバグだらけのスパゲティコード(複雑怪奇なプログラム)を徹夜で修正させられていた元OLの私から見れば、ただの「設計ミスだらけの古いデータベース」だった。


(なによこれ、インデックス(索引)も貼られてないし、無駄なループ処理が多すぎる。おまけに、百年前の魔導師が仕込んだと思われる『バグ(呪詛術式)』が、全体のシステムをロックしてるじゃない)


私は懐から、昼間に完成させたばかりの自作の『異世界スマホ(魔導通話端末)』を取り出した。


「な、なんだその奇妙な板は……!?」


ヴァルカンが驚くのを無視して、私はスマホを魔導書にかざし、自分の中の規格外の魔力を流し込む。

スマホの画面を通じて、魔導書の内部データを一瞬で全スキャンし、私の頭の中で前世のExcel関数とマクロのロジックを高速展開ハッキングする!


(全データ一括ソート! 冗長なプログラムの削除リファクタリング! 呪詛バグのデバッグ開始――エンターキー、ッターン!!!)


ピキィィィィィィン!!!


魔導書から、これまでに見たこともないほどの神々しい純白の光が放たれた。

ガシャーーーン!! と魔導書を縛っていた頑丈な鎖が派手に弾け飛び、ページが猛烈な勢いでパラパラパラと勝手にめくれていく。


「な、何が起きているんだ……!?」


ヴァルカンたちが目を見開いて叫ぶ。

やがて、光が収まると――百年もの間、頑として開かなかった魔導書の最終ページがパカリと開き、そこから帝国全土の魔導流動塔を最適化する、完璧な『新型魔術ロジック』が空中に巨大なホログラムとして浮かび上がった。


「はい、全ページの解読と、ついでに魔導書のシステムバグの修正デバッグ完了です。ついでに、処理効率を前世のExcel並みに一万倍ほど高速化(マクロ化)しておきました。これでもう、いつでもキーワード一つで検索できますよ?」


私がスマホをポケットにしまいながら微笑むと、広間全体が、水を打ったように静まり返った。


「ば、莫大な……っ! 百年解けなかった古代の英知が……一瞬で、すべて解読された……!? 術式自体が、完璧に書き換えられているだと……っ!?」


ヴァルカンは完全に腰を抜かし、顔面蒼白のまま床にへたり込んだ。他の魔導師たちも、あまりの異次元のチートっぷりに、顎が外れそうな顔でガタガタと震えている。


「ふっ……。さすがは俺のユキだ。他国の無能どもを文字通り一瞬で圧倒する姿も、最高に美しくて愛おしい」


ギルバートが嬉しそうに私の腰を引き寄せ、呆然とする帝国貴族たちの前で、見せつけるように私の頬に熱いキスを落とした。


こうして、隣国の実力主義な魔導師たちを元OLのハッキングスキルで完全崩壊させた私は、ハネムーン初日にして、帝国中にその「無自覚チート王太子妃」の名を轟かせることになるのだった。


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