第2話:王子の登場と衝撃の宣言
2話です。マリアンヌはエドワード王子の婚約者のはずが王子の隣には別の女性が……。一体どうなるのでしょうか
エドワード様の隣で、まるで嵐に怯える小鳥のように身を寄せているのは、同級生のクラリス様でした。
彼女はエドワード様の腕をぎゅっと掴み、わたくしを怯えたような目で見つめています。
(クラリス様もコルセットが苦しいのかしら? 殿下の腕をあんなに強く握りしめて……お顔も真っ青ですわ。お可哀想に……)
場違いな心配をしているわたくしの前で、エドワード様がこれ以上ないほど凛々しい声で話し始めました。
「皆、本日は私の卒業パーティを祝いに来てくれたこと、心より感謝する。本来であれば、このまま婚約者の紹介をしたいところだったが……、そのようなことができなくなったことを詫びさせてほしい」
会場がざわめきに包まれます。
わたくしも、扇の陰で首を傾げました。
(……あら? 婚約者の紹介をしない? ということは、わたくしの紹介は省いて、さっさと美味しいデザートタイムに移るということですの? さすがエドワード様、お優しい判断ですわ!)
そんな呑気なことを考えていた、次の瞬間。
「何故ならば……マリアンヌ・フォン・グラサージュ! 貴様との婚約を、今この時をもって破棄するからだ!」
……………んんっ!?
――えっ、ちょっ、えっっと……どういうことですの?
頭が……頭がまとまりませんわ……!
周囲の参加者は、驚くどころか「やっぱりか……」と言わんばかりの納得顔でわたくしを見ています。 対するエドワード様は、まるで悪を討つ正義のヒーローのような、輝かしいまでのドヤ顔。
(な、ななな、なぜ……!? と、とにかく……とにかく平静を保たなければ……。ここで取り乱しては、グラサージュ家の名に傷がつきますわ!)
実のところ、わたくしの膝は生まれたての小鹿のようにガクガクと震え、今にもその場にへたり込んでしまいそうでした。
けれど、幸か不幸か、重厚な生地を何層にも重ねたドレスが、その無様な震えを完璧に隠してくれています。
必死の思いで脳をフル回転させますが、悲しいかな、脳に送られるはずの酸素はコルセットによって無慈悲に遮断されています。
結果として――。わたくしは震えを押し殺そうと全身に力を込めたまま、スッと扇で顔の下半分を隠しました。
そして混乱で激しく吊り上がった眼光を、冷徹そのものの鋭さでエドワード様へ突き刺したのです。
「……殿下。理由を、お伺いしてもよろしいですか?」
おお、わたくし! 拍手ものですわ!
声が震えるのを防ごうと喉を限界まで絞った結果、地を這うような重厚で、めちゃくちゃドスの利いた低い声が出ましたわ!
すると、エドワード様は一瞬その気迫に怯んだように肩を揺らしましたが、すぐにわたくしを睨み返してきました。
「マリアンヌ、シラを切るつもりか? 貴様がここにいるクラリス嬢へ何をしたか、私はすべて分かっているのだぞ!」
……はい? クラリス様に?
わたくし、彼女には親切にしかしておりませんけれど……?
わたくしの困惑は虚しく、エドワード様から「断罪」という名の、とんでもない言いがかりがこれから幕を開けるのです。
さて、次回はマリアンヌがやったとされる悪行が紹介されます。
親切なことしかやっていないと言い張るマリアンヌですが、エドワード王子からどんな罪を言い渡されるのでしょうか?




