波動の変化
《サイド:御堂龍馬》
校舎を出てから自室がある寮に向かって歩く。
12棟ある男子寮のほぼ中心に僕が住んでる寮があるんだけどね。
幾つかの寮を通り過ぎながら、
通い慣れた寮に向かう途中で彼の姿に気づいたんだ。
視線の先に天城総魔がいる。
どうやら彼も寮に戻る途中のようだね。
歩みを進める彼を見つけたことで、
急いで駆け寄ることにしたんだ。
「おはよう。」
「…ああ、御堂か。」
声をかける僕に気付いた彼は、
足を止めて振り返ってくれた。
「こんな所で会うのは珍しいな。」
「ははっ。そうだね。」
むしろ初めてじゃないかな?
「色々あって、昨日は帰ってこれなかったから、僕は今から寮に帰るところなんだよ。」
「そうか。俺もさっき研究所を出たばかりで寮に帰るところだ。」
「へー。そうなんだ。」
彼と出会った理由は分かったけれど。
同時に昨日、彼に話した言葉を思い出すことになった。
彼の実験を見に行く…と言っていたことを、ね。
だけど、結局は仕事が追いつかなくて見に行く暇がなかったうえに、
真哉との試合で寮に戻ることさえ出来なかったんだ。
「実験はもう終わったのかい?」
「いや、まだしばらくかかるだろう。今日も午後から研究所に向かう予定だ。」
ふーん。
まだ終わってないのか。
「だったら、今日は見に行けるかな。」
「どうか知らないが、興味があるのなら好きにすればいい。それよりも…」
彼は僕を眺めながら別の話を持ち出した。
「昨日とは雰囲気が違うな。魔力の波動が微かに変わっている。新たな能力にでも目覚めたか?」
…っ!?
彼の言葉を聞いた瞬間に動揺してしまった。
…と言っても。
隠すつもりはないんだけどね。
そういうことじゃなくて、
何故か彼の言葉は僕の全てを見透かしているようなそんな気がしたからだ。
「昨日、真哉と試合をしたんだよ。」
「…なるほどな。」
説明するまでもなく納得したらしい。
「その波動は成長の証というわけか。」
どうだろう?
「成長したのかどうかは分からないけれど、少しは強くなれたかもしれないね。」
控えめに答える僕の言葉を聞いて、
彼はそっと微笑んでいた。
「再戦を楽しみにしておこう。」
話を終えた彼は寮に向かって歩きだした。
そんな彼の背中を見送ってから、
僕も歩きだすことにした。
彼との再戦。
それこそが僕の望みだ。
そして。
彼を越えることが今の僕の目標になっている。
その日の為に。
僕は今よりももっと。
強くならなければいけないんだ。




